【報ステ】急増“入居権詐欺”手口と背景…専門家「必要ないと答えても引っかかる」(2023年11月8日)
カンボジアを拠点に特殊詐欺グループの“かけ子”とみられる日本人の男25人を乗せたチャーター機が午後9時50分ごろ、羽田空港に到着しました。機内で全員、詐欺と詐欺未遂の疑いで逮捕されたとみられます。
◆特殊詐欺グループの拠点があったカンボジアの首都・プノンペンから藤富空記者の報告です。
彼らは現地でどういった生活を送っていたのでしょうか。
藤富空記者:現地警察によりますと、日本人グループは、こちらのアパートに今年に入ってから暮らしていたということです。この周辺は、中心部から少し離れた場所で、人通りもそこまで多くはありません。当然、30人近い日本人が暮らしていたら目立つはずですが、地元の人に聞きますと「日本人が住んでいたとは知らなかった」ということです。ほとんど出歩く姿も見かけず、何かアパートから物音が聞こえたり、うるさくする様子もなかったといいます。
周辺には、飲食店も少なく、おそらく自炊や弁当のデリバリーで済ませていたとみられます。弁当を配達していたという日本料理店では、1日2回、昼食用と夕飯用に大量の弁当が用意されていたということで、日本人グループは、ほとんど自由に出歩ける状態ではなかった可能性もあります。
史上最大規模の一斉送還となった今回の事件。シニア層をターゲットにした『入居権詐欺』。
自治体の消費生活センターにも、70代女性から相談事例が寄せられていました。“大手企業の社員”を名乗る男から電話があり、このようなやり取りがあったといいます。
大手企業の社員役:「近々、市内に老人ホームができます。あなたには優先的に入居できる権利があります」
70代女性:「不要です」
大手企業の社員役:「老人ホームに入居できず困っている他の方に権利を譲りたいので、あなたの名義を貸してほしい」
70代女性:「いいですよ」
このあと“弁護士”を名乗る男から電話があります。
弁護士役:「あなたが行ったことは『名義貸し』という犯罪行為になる。権利は、あなたが買ったことになっているので、入居するためのお金300万円を払ってもらわないといけない」
この70代女性は、相談したので、だまされることはなかったということです。
“施設の職員”役や“行政”役など、さまざまな人物を登場させる場合もあり、電話の相手を混乱させることを狙う、いわゆる『劇場型犯罪』が急増しているといいます。今回は、『入居権』でしたが、ほかにも『CO2の排出権』『金の採掘権』など、相手をだますための“商品”は多岐にわたります。
特殊詐欺の損害賠償請求などの被害支援に関わっている尾崎毅弁護士によりますと、「『入居権詐欺』は非常に巧妙な手口。最初の質問に『必要ない』『いらない』と答えても、その返答に合わせた“第2、第3の矢”、色んなパターンを想定して電話をかけてくる。絶対に詐欺に引っかからないと思っている人も引っかかってしまう。詐欺グループの主犯格は、検挙を逃れて、新たなグループを作り、犯行を繰り返すなかで、詐欺の手法やマニュアルは間違いなく巧妙化している」としています。
◆特殊詐欺グループの捜査本部が設置される予定の大宮署前に秋本大輔記者がいます。
今後の捜査は、どのように展開していくのでしょうか。
秋本大輔記者:今回、逮捕されたのは、電話をかける“かけ子”のグループですが、カンボジアに拠点があった理由について、特殊詐欺の取り締まりが国内で強化されていくなか、日本の警察による追及をかわすために、拠点を移していたとみられています。
カンボジアでは『高収入・短期の仕事があります』などの募集があり、いざ、現地に到着すると、パスポートなどを取り上げられる被害が複数報告されています。今回の25人は、半数以上が20代で、今年3月以降に現地に入国したとみられますが、同じような応募や紹介があったのかどうかも含めて、警察は調べていきます。25人以外に、同じグループの3人が現在も逃走を続けていて、タイに逃げたとみられています。このうちの1人が主犯格とみられていて、警察が行方を追っています。
最後に、組織性についてですが、“かけ子”グループ以外にも、日本で現金を受け取る役、それらに指示を出す役がほかにいる大規模な組織とみられています。警察は、その裏に暴力団がいる可能性もあるとみて、今後、組織の実態解明を進めていきます。
尾崎弁護士は「基本的に入居契約を結ばないと権利は発生しないので、電話で『入居権』という言葉が出ること自体がおかしい」と話していました。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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