ガザで支援活動 日本人が語る“危機的状況” 食糧難…医療現場も混乱「救える命が…」(2023年11月1日)

ガザで支援活動 日本人が語る“危機的状況” 食糧難…医療現場も混乱「救える命が…」(2023年11月1日)

ガザで支援活動 日本人が語る“危機的状況” 食糧難…医療現場も混乱「救える命が…」(2023年11月1日)

 イスラエル軍とハマスによる激しい戦闘が続くガザ地区で今、深刻な問題となっているのが医療だ。国連の機関でガザの医療支援に携わる日本人を取材。現状を聞いた。

■市民巻き込んだ戦闘へ…さらなる懸念高まる

 イスラエル軍は、ガザ地区北部での市街戦と見られる映像を公開。ハマスの拠点を攻撃し、テロリスト数十人を殺害したと発表した。

 一方のハマス側も映像を公開。ロケットランチャーを持った戦闘員が地下トンネルから出てきて、ガザ地区に侵入したイスラエル軍を攻撃する様子が捉えられていた。

 地上作戦を強化し、ガザの市街地に進軍したとされるイスラエル軍。市民を巻き込んだ戦闘へのさらなる懸念が高まっている。

 そんななか、番組はガザ地区の今を取材した。

■ガザ地区の燃料不足が…食料難に拍車

 「非常に考えられない、厳しい。人道支援の危機で、地獄のような状態」と語るのは、国連パレスチナ難民救済事業機関=UNRWAの清田明宏保健局長だ。

 清田氏は、2010年からガザの医療支援に携わってきた。現在は、本部がある隣国ヨルダンから、ガザの病院や避難所への支援を行っている。

 現地のパレスチナ人職員からは、厳しい現状を耳にするという。

 清田保健局長:「もともと厳しい状態の上に、また人口が倍増した。だからにっちもさっちもいかない。(現地の)うちの同僚と話したところ、もともと5人ぐらいしか住んでない家に、いろんな人が北から避難して、南の家に大体今69人いると言ってました」

 イスラエル軍がガザ北部に住む110万人に対し南部への退避通告を出した結果、多くの住民が移動し、南部は飽和状態となっているという。

 UNRWAでは、そんな人たちに食料や避難所、医療支援などを行っているが、特に深刻だというのが…。

 清田保健局長:「今、避難所で聞く話は、みんなとにかく『おなかが空いた』と。『アイム・ハングリー』というのを非常に聞くんですね。今までの戦争で避難所を回ったときに『アイム・ハングリー』というのをあんまり聞いたことないんですよ。非常に厳しい状態のなかで、人々が困っているというのが今の状況」

■食糧難…医療現場も混乱を極める

 さらに、ガザ地区の燃料不足が食料難に拍車をかけているという。

 清田保健局長:「パンを作る工場がきちんと稼働しているか。爆撃にあっていないかとか、いろんな要素がある。小麦粉があれば、ご飯が食べられるという状況ではない」

 原料があっても燃料がないため、調理ができない事態になっているという。厳しい食料事情のなか、ガザ地区にある国連の倉庫から、食料を持ち去る市民も出てきている。

 清田保健局長:「非常に悲しい現実。220万人(ガザのおよその人口)を対象にしていますので、多くの食料が要る。今のガザの状況を考えると(略奪行為は)決して許されることではないが、避難所に行くとみんな『おなかが空いた』。戦争以上の悲惨な状況になりますので、そこをなんとか秩序を守ってほしい」

 さらに、医療現場も混乱を極めているという。

 清田保健局長:「今回の戦争で燃料が不足していて、病院のジェネレーターが動かない。あるいは、病院の電気は全部つかない。『手術室だけでもなんとか』といった感じ。国連が主導になって、いろんな医薬品を病院に送ってるのだが、ある病院に行った時には、手術室から人が出てきて、その医薬品を取って手術室に戻って行ったと。つまり、その手術室自体が自転車操業で非常に厳しい状態。『救える命』が救えていないのではないかと危惧している」

■UNRWAの職員…「ニュースだと、もう64人亡くなっている」

 世界中から寄付などを募り、1950年からパレスチナ人への支援を続けてきたUNRWAだが、今、ガザでは“前例のない”出来事が起きていると言う。

 清田保健局長:「きのうの夜のニュースだと、(UNRWAの職員が)もう64人亡くなっていると。(その中の)1人は産婦人科の先生なんですね。ガザのクリニックで働いていて。非常に素晴らしい方だなあと思っていた。その方が家族と一緒に(空爆で)亡くなられた。非常にショックを受けました、みんなで。生きていること自体が非常に大変で、職員の安全を確保しながら、人々の命をつないでいくということを今やっています」

■市民が避難する病院は今…

 終わりの見えないイスラエルとハマスの衝突のなかで、焦点となっている病院がある。それがガザ地区最大規模の「アル・シファ病院」だ。

 病院のホームページによると、パレスチナ自治政府が運営する病院で、外科、内科、産婦人科で3つの診療科があり、病床数は1500床以上あるとのこと。

 ニューヨーク・タイムズによると、現在、この病院には6万人以上が避難しているという。

 ただ、ここを含めたガザ地区の病院について、イスラエル軍のハガリ報道官は先月27日の会見で、「ハマスは病院を指令拠点に使い、罪のないガザ市民を人間の盾にしている」と主張した。

■指令拠点…?ハマスは否定

 そして、ハガリ報道官は病院の構造をCGで描いたものを使用して、世界中に公表した。

 「ハマスが病院をテロのインフラとして利用していることを示す情報を明らかにする」と話すハガリ報道官。そして、モニターをアル・シファ病院の航空写真に切り替える。

 ハガリ報道官:「赤い建物はハマスが使っている建物で、病院の様々な場所で指揮統制を行っている。それはレントゲン室でも…」

 画面はCGに切り替わり、病院の地下に張り巡らされたトンネルや作戦の指揮所まであると視覚的に表現し、世界に訴えたのだ。

 ハガリ報道官:「ハマスは病院から戦争を仕掛けている」

 ハマス側は、上記の内容を否定している。

■避難している市民「一番安全な場所だからここに」

 イスラエル軍は先月29日、ガザ地区の病院の地下の指令本部を破壊するとして、病院にいる一般市民に対し退避勧告を行った。

 しかしパレスチナ赤新月社は、「ガザ地区のすべての病院には、治療が必要な子どもや避難している人がいる」として退避を拒否した。

 現在、アル・シファ病院に避難している市民は「この病院は一番安全な場所だからここに来た。攻撃で死んでも殉教者になるだけだ」と言い、別の市民は「他に行く場所があるのか。死ぬのならここで死にたい」と話している。

(「大下容子ワイド!スクランブル」2023年11月1日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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