“水素で蒸留”スコッチウイスキー 広まるカギは消費者の理解 「脱炭素」目指すも設備維持に費用「商品を買ってくれる消費者や政府の支援必要」|TBS NEWS DIG
産業革命発祥の地イギリスでは、地球温暖化を防ぐために脱炭素の動きが加速しています。名産・スコッチウイスキーの製造現場でも科学燃料・化石燃焼だけでなく水素エネルギーを使う取り組みが進められています。
イギリス・ロンドン。街のシンボルともいえるのが2階建てバス「ダブルデッカー」です。
記者
「ロンドン中心部を走るあちらの2階建てバス。実は水素で走っているんです」
おととし、ロンドン交通局が導入したこの「水素バス」。従来の石油由来のディーゼル燃料ではなく、水素のみで走ります。営業所ではバスに水素を充填する作業が行われていました。
バス整備士
「水素が入っていっています」
この水素と、空気中の酸素を化学反応させて発電し、モーターを回して走らせます。排出するのは水だけで、二酸化炭素も有害な排気ガスも発生しません。
記者
「私たちが普段乗っているバスよりもエンジン音がしないので、静かなように感じますね」
現在、ロンドンを走る水素バスは8700台中20台のみですが、電気で走るバスも含めると1200台にのぼります。
ロンドン交通局 バス事業担当 トム・カニングトンさん
「ロンドンの赤い二階建てバスが“緑色に変わる”ことはロンドンだけでなく、イギリスが温暖化という世界的な問題に取り組んでいることを示す重要なシンボルです」
一方、こちらはスコットランドにあるウイスキーの蒸留所。「最高級のシングルモルトウイスキー」の製造を目指し、10年前に建設されました。
こだわりは、“伝統的な大麦の品種を自分たちの農場で育て、原料とすること”です。
アービキー蒸留所 共同経営者 ジョン・スターリングさん
「この大麦はタインと呼ばれる伝統品種です。(種子を保存する)シードバンクからタイン大麦を再生し、特別に利用しています」
ウイスキーの蒸留には、まず大麦のでんぷんを糖に変える必要がありますが、その際に必要なのが水を加熱するための熱源。また、発酵させた「もろみ」を銅製の釜に入れて2度、蒸留する際にも大量のエネルギーが必要です。
アービキー蒸留所 共同経営者 ジョン・スターリングさん
「蒸留の熱源は蒸気によって作られます。以前は石油を使っていましたが、持続可能でありたいので、グリーン水素に切り替えようとしています」
蒸留のために必要となる“水素”。これを作るために農場に建てられたのが…
記者
「こちらのウイスキーの蒸留所では、あの巨大な風車を使って、水素エネルギーを生み出すというのです」
水素を作るために必要な電力は風車を回すことによって作られます。その電力で、水を電気分解し、水素を作ります。水素は長期間、大量に貯蔵することが可能なため、風力のような不安定なエネルギーを蓄えることに向いています。
また、およそ8平方キロメートルの農場ではウイスキーのほか、ウォッカやジンの材料となるジャガイモやエンドウ豆なども生産。生産工程で可能な限り温室効果ガスの排出量を削減しています。
この蒸留所は先進的な計画が評価され、おととし、イギリス政府から300万ポンド(約5億4500万円)の助成金を獲得。必要な設備を建設中で、早ければ年内にも稼働させる予定です。ただ、課題は設備の導入や維持に費用がかかることです。
アービキー蒸留所 共同経営者 ジョン・スターリングさん
「私たちが他の蒸留所の模範になればと思っています。ただ、事業の継続には商品を買ってくれる消費者やイノベーションを可能にする政府の支援が必要です」
スコッチウイスキーの業界団体は、“2040年までに業界全体で温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標”を掲げています。水素で作るスコッチウイスキー。広まるカギとなるのは消費者の理解のようです。
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