海のない奈良の山奥の村が「フグ養殖」に挑戦【現場から、】
海のない奈良県の山奥にある村で今、ある高級食材の養殖プロジェクトが進行中です。人口減少を食い止め、村に「福」来るとなるのでしょうか?
奈良県中部、天川村。自然あふれる山村で廃校となった小学校を活用したプロジェクトが密かに進んでいます。去年夏に訪ねてみると・・・
記者
「今は使われなくなった小学校の校舎にいます。教室に入ってみると、黒板も残されたままですが、その前にあるのは机ではなく、いけすです」
いけすの中で泳いでいたのは「トラフグ」です。天川村では3年前から、きれいな水をいかし、フグの養殖を始めていて、大学でフグについて研究していた男性を助っ人として呼び寄せ、事業化に向けて着々と準備してきました。
天川村 集落支援員 “フグ担当”下西勇輝さん
「天川村の水がフグの養殖に非常に適していた。ストレス感じるとエサも食べないし、成長もしないし、泳ぎも鈍くなったりするので、(水に)カルキが比較的はいっていないうちの村だからこそできた養殖」
村の水に塩を加えて育てていますが、しかし、なぜ、海のない奈良県の山奥の村で「フグ」なのか。背景には冬場の観光客の減少や、「過疎」と「高齢化」という村が抱える深刻な問題があるのです。
かつては林業で栄えた天川村ですが、主たる産業の衰退とともに、人口は66年前(1956年)のおよそ6000人をピークに年々流出し、今では1300人ほどまで減りました。そんな状況を少しでも変えたいと、観光需要も見込める新たな産業として「フグ養殖」に白羽の矢を立てたのです。
村の人もフグに期待をかけています。長年、生活用品を売る店を営むこの親子は、フグの調理師免許を取得していました。
今西岳人さん
「村でやるということもあって、応援してるという意味も込めて。村の閑散期に将来1人でもフグを食べに天川村に来てくれる人がいたらいいことですよね」
出荷が近いとの話を聞きつけ、この冬、再びフグの養殖場を訪れました。フグは平均およそ700グラムまで成長、高値で取引される目安の1キロ以上まであと一歩になっていました。目標とする3月の初出荷へ向けて、一足早く天川村の職員が試食します。
天川村 集落支援員 “フグ担当”下西勇輝さん
「身が締まっていて、うまみが強く感じられるような気がします。これからどれだけ(フグがエサを)食べて大きくなるのか。(フグへの)悪い影響を出さずに、死なせずに上手に出荷できればと思います」
新たな産業を生み出し、持続可能な村へ。山奥育ちのフグに未来が託されています。
(28日11:56)
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