値上げの秋 スーパー「アキダイ」社長危機 それでも“安く”…立ち向かう家族の支え【Jの追跡】(2023年10月14日)
「値上げの秋」は“激安”がウリのスーパー「アキダイ」をも直撃。社長の秋葉弘道さん(55)は仕入れ価格の上昇や、かさむ経費に頭を抱えていました。
そんな秋葉さんを支えるのは家族たち。総務担当の妹、採用担当の次女の2人が“経営者”である父をどうサポートしているのでしょうか。
値上げが始まる10月1日の「朝市」。秋葉社長は勝負に出ます。卵1パック88円!驚きの“激安”価格に秘められた名物社長の覚悟とは?
■加工食品など…4600品目以上が値上げ
関東に7店舗構えるスーパー「アキダイ」。年商およそ45億円。良いものを1円でも安くがモットーのスーパーです。
値上げ直前の先月下旬。社長の秋葉さんを訪ねると、普段テレビでは見せない厳しい表情を浮かべていました。
秋葉社長:「値上げの波が数年前に起きてからバックヤードがかなり山積みになっている」
値上げに備えた在庫を抱え、倉庫はいっぱいになっていました。しかし…。
秋葉社長:「ハム類、この辺は全般的に上がってきます。冷蔵庫のメンテナンス費とか電気代を考えると赤字で売っているのはなかなか厳しい状況ではある」
この10月からハムやソーセージなどの加工食品や大型のペットボトル飲料など4600品目以上の食品が値上げ。
それだけではありません。生鮮品も今年の猛暑や大雨などで価格が不安定なものもあります。
秋葉社長:「キャベツですね。これも実は1週間前は100円でした。それが上がってきました。その理由は高温で先に(市場に)出ちゃったんですよ。10月の前半から後半にかけてだいぶ高値が続きますね」
■ベストな状態で売るため…毎朝市場に足運ぶ
良いものを1円でも安く売りたいと、秋葉社長は毎朝、市場に足を運び仕入れをしています。この日、見つけたのが…。
秋葉社長:「うまっ!トマトの性質として、出始めより終わりの方がうまいんですよ。このトマトもそろそろ終盤だもんね」
果物並みに糖度が高いという群馬県のトマトです。味、価格ともにベストな状態で売るためにも、情報収集は欠かせません。
市場関係者:「トマトでいうならば、実がなっているその上に花がついている。何週間後に(市場に)出るんだろうかとか。その情報をお客さんに提供して極力タイムリーな状態でお店で売ってもらう」
次に目を付けたのは、こちらも“甘さ”がウリの北海道産のカボチャです。
秋葉社長:「いいよ、いくら?」
市場関係者:「ありがとうございます」
秋葉社長:「何ケース?」
市場関係者:「39」
秋葉社長:「オッケー」
今が買い時と判断。400個を即決でお買い上げしました。
秋葉社長:「(Q.今決めました?)物見て。物見ないとね」
■入社31年 創業当時から店を支える女性
一方、調味料やペットボトル飲料など、「食品」のさらなる値上げが始まります。
「食品コーナー」で品ぞろえから価格設定までを任されている女性がいました。入社31年、アキダイ創業当時から店を支えてきた下田清江食品部長(60)です。
下田食品部長:「(Q.10月からの値上げはどうですか?)お客さんが結構敏感なので、色んなところ見ていらっしゃって、ちょっとでも値上がりしていると一瞬(客足が)止まります」
価格設定に悩むだけでなく、お買い得商品をどう目立たせるか。毎日、位置変えも行います。
下田食品部長:「利益も薄い状態でやらないといけないし、食品は賞味期限が表示されているので、それ以内にさばかないといけないものあって日々大変です」
さらに、たまった買い物かごを外に出したり、客が並べばレジの応援にも駆け付けます。安さだけでなく、客が気持ち良く買い物するために、常に店全体へ気を配り、秋葉社長も全幅の信頼を置いています。
■販路を拡大…社長を支える家族
実は、値上げ以外にもスーパーアキダイは問題を抱えていました。
それに立ち向かっていたのは、秋葉社長を支える家族でした。
総務を担当しているのは秋葉社長の妹・野島智子さん(46)です。
野島智子さん:「有給休暇もちゃんと皆さんとってもらえるように。そこが本当に今悩みで」
値上がりの問題を抱えながらも、社長が1円でも“安く”を追求するあまり、従業員への負担が増しているのだといいます。
その軽減に向け、妹は尽力していました。
野島智子さん:「いい環境、整えていくしかないんですけど。給料面でも(上げたいのですが…)」
そして、実は秋葉社長、この値上げラッシュのなか、販路を拡大しようと今年7月に新店舗をオープンしました。さらに、11月にも新しい店を出す予定です。
ところが、思ったほど働き手が集まらず、人手不足に拍車が掛かっているといいます。
そんな状況を何とかしようと苦心しているのが、秋葉社長の次女で、採用担当の遠峰由加里さん(29)です。
遠峰由加里さん:「あの手この手でというか、(父は)今まで正社員としての求人を出したことがあんまりなかったみたいなので、結構貼り紙作って貼ってもらったりとか。色々やって、何とか集まってきている状況ではありますね」
秋葉社長の目が届かないところを家族がフォローしていました。
由加里さんは経営者としての父親をどう見ているのでしょうか?
遠峰由加里さん:「この間も、キュウリ1500円を100ケース買ってて。15万円じゃないですか。『間違えていない?』と聞いたら、『いや、いっぱい買っちゃった』って」
野島智子さん:「その辺、結構アバウトだよね?」
遠峰由加里さん:「うん。アバウトアバウト」
商売では豪快な一面もある一方、家族に対しては…。
遠峰由加里さん:「こんな感じですかね。孫だから可愛いというか。何でも買ってあげるよっていつも言われます」
3歳の孫娘が可愛くてしょうがない様子です。
秋葉社長:「僕の活力源なんですよ。子どもって育てる責任があるけど、孫は可愛がるっていう」
■毎週土曜にジム通い…ストレス発散?
9月最後の日。秋葉社長が向かったのは?
毎週土曜にはストレス発散を兼ねた体力づくりのためジムに通っています。
秋葉社長:「経営者だからこそ、いざという時に自分の体が一番大切ですね」
フィジカルトレーニングやボクシングなどおよそ2時間、汗を流します。
そこで思わずこんな本音が出ました。
秋葉社長:「値上げの馬鹿野郎!値上げに負けるな!値上げに勝つ」
■値上げの日に“激安”アピールし勝負に
さらなる値上げラッシュを前に、秋葉社長はある秘策を練っていました。
秋の値上げが始まる10月1日の朝市。ここで勝負をかけることにしたのです。
秋葉社長が値上げの10月1日にぶつけてきた秘策。それは、アキダイが力を注いできた週に1度、さらにお得な商品を並べる日曜恒例の朝市でした。
開店の1時間以上前から行列ができていました。
10月1日の値上げの日に、秋葉社長はあえて“激安”を徹底アピールする戦略で勝負に出たのでした。
目玉は10個入りの卵が88円!そして、社長が400個も仕入れた北海道産のカボチャです。
朝市のオープンを前に社長自らフル回転。
秋葉社長:「日曜は安く赤字覚悟で売るものもあるから。人件費を抑えないといけないし」
照明は開店ギリギリまでつけません。明るさも落としました。
秋葉社長:「これだけ明るければ十分でしょ。前はこれ以上明るくしていたんだけど、経費節約」
カボチャをカットするのは、5月に入社したばかりの黒田直樹さん(27)です。半分にカットした値段はなんと150円。そのカボチャの第1陣が店頭に到着しました。
黒田さん:「きょうでどれだけ売ることができるか」「(Q.目標は?)完売。400個できたらスゴイ」
開店前からフライングで手に取る客もいました。
秋葉社長:「カボチャきょう安いでしょ。絶対カボチャ、きょうですよ。これより安い日はこの後、絶対にない」
秋葉社長の“熱い”売り込みに、開店前からカボチャを緊急補充しました。
そして午前9時。朝市がスタートしました。
1パック88円のタマゴ。もちろん赤字覚悟です。
秋葉社長:「広告宣伝費使わない代わりにこれでやっていく。数分間で4万円の赤字。1週間の利益がこのタマゴで一瞬でマイナスになる感じですね」
目玉のカボチャもどんどん売れていきます。
そして昼すぎ。朝市が終了しました。果たして結果は?
黒田さん:「今のお昼の段階で、合計160個ほど売れてますので、ペース的にはいいのかなと」
完売とまではいきませんでしたが、来客数が2000人を超え、満足いく結果になりました。
値上げが続くなか、あえて「安さ」をアピールする逆転の発想。秋葉社長は決意を新たにしました。
秋葉社長:「値上げの波はどこでも同じ。このピンチ、考え方を変えればチャンス。同じことやってたら、もうからない。時代に合わせた売り方でやっと今成り立っている」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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