“入門者向けの山”で高齢者4人死亡 “80m暴風雨”で低体温症か 栃木・朝日岳【もっと知りたい!】(2023年10月9日)
初心者にも人気の栃木県・朝日岳の登山道で4人が死亡しました。死因はいずれも低体温症だということが分かりました。当時、現場で何が起きていたのでしょうか。
■登山の難易度が低い山で4人死亡
番組が入手した、遭難事故があった6日の朝日岳の尾根付近から撮影した映像です。
強い風の音とともに、高山植物が激しく揺れています。このおよそ1時間後に110番通報があり、4人が遺体で見つかりました。
3連休中日の8日、栃木県の「那須ロープウェイ山麓駅」には、多くの登山客の姿がありました。
登山客:「きょう登ってきました。前も登りました」「防寒シートとかダウンとか。当然雨具は持っていますし。そういうのはしっかり持って行こうかなって思いました」
栃木と福島の県境にそびえ立つ標高1896メートルの朝日岳。
山頂へ行くためには、ロープウェイを利用して茶臼岳を経由し向かう方法や、中腹にある駐車場から徒歩で向かう方法があります。
徒歩ルートの場合、山頂までの往復距離はおよそ5キロ、所要時間は3時間ほどです。
登山客:「初心者でもいけるようなルート。危ない所があるわけではないし」「きょうも、ちらほら高齢者の方が登られていたので、高齢者の方でも難しくない山かな」
去年10月の朝日岳登山道付近の様子です。山頂への道のりは比較的平坦な道が続き、天気が良く、視界も良好な状況がうかがえます。
入門者向けの山として知られ、登山の難易度が低いとされる朝日岳で、なぜ4人の死者が出る遭難事故が起きたのでしょうか?
■雨と強い風で…「登れる状態じゃない」
6日正午すぎの通報:「男女数名が動けなくなっている」
6日、通報を受けた警察は捜索に入りましたが、強い風に阻まれ、この日の捜索は打ち切りに。尾根の付近で捜索が行われた際、手持ちの風速計が一時風速80メートルを示したといいます。
7日、山頂に向かう登山道で4人の遺体が見つかりました。死因はいずれも低体温症でした。
実は朝日岳は、かなり強い風が吹くことで知られています。事故当日の風は特に強く、引き返す登山者が多かったといいます。
登山道入り口にある飲食店の店主:「雨が降ってて(風が)ひどかったですね。(登山者も)何人かはいたけど、行っても帰ってきちゃうとか、そういう感じで登れる状態じゃなかった」
朝日岳のすぐ隣の茶臼岳にある、「那須ロープウェイ山頂駅」で観測された6日の最高気温は4℃、午後3時すぎには風速30メートルを観測しました。
地元の山岳ガイドによりますと、事故当時、尾根付近では風速20メートル以上の風が吹いていたということです。
4人の遺体が見つかったのは、尾根の周辺です。避難小屋から朝日岳山頂へ向かう道の途中で男性1人と女性1人が発見され、そこから60メートルほど離れた場所でもう1人の女性が発見されました。さらに、朝日岳山頂に近い場所で男性1人が発見されました。
■低体温症は「疲労と間違いやすい」
朝日岳に100回以上登っている日光・那須山岳ガイド協会の松田良さんは「現場付近は強風をもろに受ける場所」だといいます。
松田さん:「朝日岳に行く道中がトラバースといって山の斜面を横切っていくルート。そういったところは風をもろに受けて、足場も悪いなか進んでいく形になるので、風が強いとバランス崩して前にも進めないですし、あたりすぎると低体温になって体が動かなくなることが考えられる。風速が1メートル増えると体感温度が1℃下がる。強い風が吹くとそれだけ危険度が増す」
4人の死因となった「低体温症」について医師は、「疲労と間違いやすく認知が難しいので注意が必要だ」と話します。
国際山岳医 大城和恵さん:「低体温症だと自分で気づくことが難しい。最初は体が震えたりするサインが出る人もいますが、そういう明確なサインが出ない人もいます。何か疲れたとかですね。様子を見ようとしているうちに意識がうすくなっていき、心停止を起こしてしまう」
今年は残暑が続いたことで、寒さに慣れていない人も多く「気温が下がり始めた今の時期は例年以上に注意が必要」だということです。
(「グッド!モーニング」2023年10月9日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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