子ども“放置は虐待”条例案に専門家「憲法違反の疑い」共働き夫婦「何もできない」(2023年10月6日)
埼玉県の県議会で、子どもだけでの外出や留守番を禁止する条例の改正案が提出されました。
自民党県議団が提出した条例改正案には「児童を住居、その他の場所に残したまま外出すること、その他の放置をしてはならない」とあります。
小学校1~3年生の子どもだけでの登下校、子どもだけで公園で遊ぶこと、子どもだけでおつかいに出かけることも違反となります。高校生のきょうだいが一緒にいたとしても許されません。子どもを置いて、ゴミ捨て出ることも違反となるケースがあるかもしれません。
つまり、安全を確保できる、すぐに駆け付けられる、この2点が確保できない状況は、短時間であっても放置にあたるというのです。
条例案提出者の一人に聞きました。
自民党県議団・田村琢実団長:「(Q.僕も親が共働きで、留守番していたが、それも虐待になる)もちろん、そう考えています。日本の場合、それが虐待だという認識が希薄ですよね。だからこそ、こうやって法規範で整備をさせていただいて、認識を高めていただくことが重要」
子どもが放課後を過ごす学童保育の待機児童数が全国で東京に次いで2位の埼玉。やむにやまれず、子どもに留守番をさせている家庭も多いです。
自民党県議団・田村琢実団長:「子どもを守るために、親が頑張らないといけない部分も増えるかもしれないが、子どもを放置していいという状況が非常に危険だということを再認識いただいて、自分の家庭を見直していただいて」
子どもが自宅や車内に放置されるなどして、死亡事故が相次いだことを受けての改正案だといいます。
子育て世代は、この話題で持ち切りです。
小学校低学年の親:「2年生からは子どもたちだけで学童に行くようになるので、それを虐待と言われると心苦しい」
小学校低学年の親:「留守番は、例えばきょうだいの習い事の送迎は行きたがらなくなる。1年生の子も『YouTubeを見て待っている』となると、何分かはいいやと留守番させている。それを悪く言われると納得できない。(私たちも)虐待してるねって言ってます、みんな」
小学校低学年の親:「登下校に変質者が出たという学校からのメールが、頻度が高い。大人がいるとうれしいなとは思うけど、それが全部親の負担になるときつい」
条例案は、違反を見つけたら通報する義務も課しています。
さいたま市に住む山中さん親子です。息子の悠太郎くん(7)が、なかなか友達の家から帰って来ないため、母親が迎えに行っていました。うちに帰ると、留守番していた姉弟2人がお出迎え。夫婦共働きの山中さんの家では、よくあることですが、これも虐待になるのでしょうか。
3人の子を育てる山中真菜さん:「(Q.普段どんなときに留守番をさせることがあるかい)男女が違うきょうだいで、習い事もそれぞれ時間もやっていることも違うので、お姉ちゃんが迎えに行っているときは弟に待っててもらう。これが虐待と言われたら、もう何もできない。仕事もやめないととも思うし。きょうだいも3人いるので。かなり厳しい」
議会で条例案に異論を唱えた議員は、こう話します。
辻こうじ県議会議員:「誰も幸せにならない条例。机の上で考えて、子どもたちや保護者に無理やり当てはめるという、かなり無理のある条例案のように思います」
子どもが一人で通学することもあるという学習塾。
よしだ教室・吉田雅人先生「何、考えてんのって感じです。どういう風にやったら子どもたちが、子どもらしく生きられるのかという方に頭を向けてほしい」
塾に通う児童:「(Q.公園で遊ぶとき保護者といましょうというルールになる)それはちょっといいけど、ずっと見られても困る。やりすぎ。そこまで、ずっとお母さんとお父さんがいられるわけじゃないから、忙しいから」
条例案は、13日に採決される見通しで、可決されれば、来年4月から施行されます。
※今回の条例の改正案について、子ども家庭庁で審議委員を務め、子どもの安全対策や教育が専門の日本女子大学学術研究員・清永奈穂さんは「いまの日本では現実的ではない」と指摘しています。
「保護者への時間的、金銭的な負担が増えていくので、学校の送迎バスや放課後クラブなどの拡充、ベビーシッターなどを利用する際の金銭的補助といったものが必要になってくる」といいます。また「ひとり親など、さまざまな家族の形が念頭にない」と話します。
憲法学者の名古屋市立大学大学院・小林直三教授は、この条例について「条例の文言上、広範に外出等を制限するのは過度な制限であり、憲法違反の疑いがある」といいます。また、現状においては「十分な待機児童対策が現実化していないなか、かえって養護する者のストレス等によって虐待が増加することも十分に考えられる。目的と手段との合理的関連性さえ疑わしい」と指摘しています。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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