【SDGs】気候変動に左右されない「食」の安定確保(2023年9月23日)

【SDGs】気候変動に左右されない「食」の安定確保(2023年9月23日)

【SDGs】気候変動に左右されない「食」の安定確保(2023年9月23日)

世界各地で起こる異常気象。

その影響で“食”の生産現場にも様々な被害が出ています。安定した食糧の生産は持続可能なのか?

今回、テレビ朝日「未来をここから」プロジェクトの一環で番組では3つの新しい“食”の生産現場を取材しました。
テーマは「気候変動に具体的な対策を」

■オランダ 「水上 × 酪農」■

最初に紹介するのは、国土の4/1以上が海抜0メートル地帯のオランダ。
ここでは水害の影響を受けにくい新たな生産施設が4年前から運用されています。
そこで作られているものとは…

オランダ第二の都市「ロッテルダム」。
海運交通で栄えるこの町も海抜ゼロメートル地帯のため水害の影響を受けやすい地域の一つです。 

人が多く集まる場所からも近い港にはユニークな施設が浮かびます。
中にいるのは酪農用の牛です。
これは世界初の水上酪農場「フローティングファーム」。
早速、中を案内してもらいました

(「フローティング・ファーム」ミンケさん)
「これがうちの牛です。ご覧のように船酔いしていません。うちの牛たちの調子はすごくいいです」

この施設は3階建て。
一番上のフロアでは40頭の乳牛を飼育し、真ん中では、牛乳やヨーグルトなどの乳製品を生産、一番下では、チーズの熟成を行っています。

作った商品は近くの店舗でも販売しています。

なぜ「陸上」ではなく、「水上」なのでしょうか?

(「フローティング・ファーム」ミンケさん)
「気候変動の結果、海面が上昇しています。(オランダは)もしかしたら国土の一部が海になってしまうかもしれない。でも水上なら、海面が上がっても、下がっても、関係ありません、いつでも食料を生産することができます」

周りには、太陽光パネルを設置し、この施設で必要な電力を賄っているため非常時でも乳製品を都市へ供給することができます。
将来的には、酪農だけでなく水上で農業も計画中です。

(「フローティング・ファーム」ミンケさん)
「我々は水上農場の許可申請をしている段階です。植物は、農薬も必要ないし、除草剤も必要ない、とてもサスティナブルな方法です」

■福島 「工場 × 農場」■

同じように環境に左右されずに食料の生産をしている場所が日本にもあります。福島県田村市。
東日本大震災の影響も受けたというこの地域にあえて建設したというこの建物。
そこで作られているものとは…

(桝田沙也香アナウンサー)
「田んぼが広がり自然豊かな場所ですね。その目の前に巨大な鉄骨の建物があります。」

山奥に突然姿を見せた建物。
屋根には、太陽光パネルもついています。
この中に一体何が?

(桝田沙也香アナウンサー)
「近未来的な空間が広がっています。ここだけまるで別世界ですね、かっこいいです」

この工場最大の特徴は…

(桝田沙也香アナウンサー)
「今ロボットが棚の方に入っていきました、今ロボットが降りてきます、結構下まで降りてきます。」
「歩いていても全く人がいないですよね、この空間」

(A-Plus小川基マネージャー)
「ここは完全閉鎖型植物工場、完全自動化の栽培施設を兼ね備えた植物工場になります」

実はこちらの工場、独自の水耕栽培方式を採用し現在、毎日1トンのレタスを生産・出荷しています。
農作物の植え替え作業から洗浄まですべて最新鋭のロボットが行っているのです。

「地球沸騰化」とも言われる近年。
世界各地の異常気象で農作物の生産に影響が出ています。
日本でも生産される農作物の70品目以上に温暖化の影響が出ていることが明らかになっています。

(A-Plus沼上透代表取締役)
「近年は気候変動によって天候不順、豪雨が発生して農作物が全滅してしまうことも少なくありません、この工場であれば天候に左右されることがないため、通年で安定的に供給することができます」

さらに、ほぼ無人の環境で育てた野菜は、菌の数が少ないため、鮮度が長持ちするなど様々な食品ロス問題への解決にもなります。こちらの工場で作られたレタスを食べてみると…

(桝田沙也香アナウンサー)
「みずみずしくてシャキシャキしています」

今後も進化し続ける「持続可能な近未来の農業」の展望は?

(A-Plus沼上透代表取締役)
「世界に展開していって、土地の狭い国ですとか環境の厳しい国とかも展開していって持続可能な農業を実現していきたい」

■神戸 「団地 × 養殖」■

環境に左右されない食料生産の施設は漁業の分野でも始まっています。兵庫県・神戸市。
海から離れた場所にもかかわらず、ここではある実験的な取り組みが始まっています。

(仁科健吾アナウンサー)
「ここから見渡すと大規模な団地が広がっています」

1974年に入居が始まった神戸市垂水区の「新多聞団地」。2500戸以上、91棟の住宅が建ち並ぶ「マンモス団地」の一角、かつて診療所兼住宅だった建物には…

(仁科健吾アナウンサー)
「なんですかこれは?」
(UR都市機構 西日本支社 石川朋一さん)
「これは“陸上養殖”をやっていまして、この中にエビが1万匹泳いでいます」

かつて診療所だった建物で行われていたのは「エビの養殖」です。

この団地で成長したバナメイエビは8月に初めて出荷しましたが、台風6号が沖縄を襲い、物流がストップ。市場にエビが届かず、品薄となっていたのです。

(UR都市機構 西日本支社 石川朋一さん)
「市場の方から『こういった形で台風の時とか品薄になっている時にエビが来てくれると、とても嬉しいです』というお話を聞いております」
Q(団地での養殖は)環境に左右されない
「そうですね」

もともとは少子高齢化が進む中、UR都市機構が空き家などを有効活用した地域活性化の実験として去年から団地で養殖を始めたのがきっかけでした。
施設は見た目こそ「昭和の団地」ですが、中身は「最新の技術」です。

(UR都市機構 西日本支社 石川朋一さん)
「水を一切外に出さないというのも特長の一つになっています」

外部から水を補充し、汚れた水を排出する一般的な陸上養殖とは異なり、ここで使われているのは水槽の中の海水を完全にリサイクルする「完全閉鎖循環方式」と呼ばれるシステムです。
水を排出しないので場所を選びません。

またエサや水質の管理は滋賀県の会社が遠隔で行っているため養殖場は基本的には無人です。
一方でエサの補充や脱皮した抜け殻の除去といった作業を地域の住民に委託することで雇用の創出にも一役買っています。

バナメイエビ1000匹とヒラメ、カワハギ100匹ずつ3つの水槽で始まった団地での養殖。団地育ちのヒラメの一夜干しを団地でいただきました。

(仁科健吾アナウンサー)
「ものすごく甘いです、“団地産団地消”」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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