盛り土の土地前所有者“責任は今の所有者” 静岡・熱海土石流災害【現場から、】
シリーズ「現場から、」。静岡県熱海市で起きた土石流災害からまもなく8か月。「なぜ熱海で起きたのか?」土石流で崩れた盛り土をめぐり、被災地が投げかけ続けた疑問に前の土地所有者が答えました。
去年7月、熱海市伊豆山を襲った土石流災害。災害関連死を含め27人が犠牲となり、1人が見つかっていません。土石流の起点にあった盛り土が、被害を甚大化したとされています。
テレビカメラの前で初めて取材に応じた男性。2011年まで盛り土の土地を所有していました。なぜ、熱海だったのか・・・
前土地所有者の男性
「いいとこだね、海がよく見えて高台で。やっぱりロマンがありますよね、この土地は。だから買ったんですね」
前の土地所有者は、宅地造成のために盛り土の土地を含む35万坪を10億円で購入。1坪わずか3000円、破格の値段でした。
前土地所有者の男性
「不動産業者から見れば、ドル箱でしょ。坪3000円(の土地)が道をつけて、平らにしただけで15万とかになる。世界の熱海です」
観光地・熱海を舞台に利益を求め続けた開発。盛り土から土砂が川に流れ出すなど土砂崩壊の危険性に行政は再三、指導を行いました。
前土地所有者の男性
「(Q.現場が違法状態というのは知っていた?)正しい報告があれば知っていたでしょう。だけど今、自分の記憶の中ではあまりそういう記憶がないので、(部下が)報告をしてこなかったのかもしれないし、(報告に)来たとすれば『言っていました』としか答えようがない」
男性は、工事の届け出はしたものの造成は専門業者に任せたとして、盛り土への関与を否定しました。
前の土地所有者らを刑事告訴している遺族は・・・
被害者の会 瀬下雄忠代表
「たまたまこんなことが起きて、俺は運が悪いなと思っているような、自己憐憫みたいなそういうコメントにしか聞こえなかった」
その後、盛り土は危険な状態のまま2011年にいまの所有者に売却されました。
前土地所有者の男性
「(Q.現場を是正する責任があるのは?)新所有者でしょ。当然として。10年間、何をやっていたの」
しかし、静岡県の難波副知事は、土地が売買されても条例上、盛り土工事の責任はいまだに前の所有者にあると指摘します。
静岡県 難波喬司副知事
「前所有者が届け出をして、完了届は出ていないので、ここはまだ完了扱いになっていません。今、誰がここの部分について(防災対策などの)工事の実施の責任を持っているかというと前所有者になります」
発災からまもなく8か月。責任の所在や土石流の原因ははっきりしない中、皮肉にも観光地・熱海の魅力が盛り土造成の呼び水となった可能性が浮かび上がりました。
(24日11:45)
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