「家や学校にいたくない」“トー横キッズ”少女の死 オーバードーズ蔓延 #shorts
東京・歌舞伎町には10代の少年少女たちが集まる通称“トー横”と呼ばれる場所があります。その多くは家庭などに居場所がない子どもたちで、番組では今年1月にも現場を取材し、16歳の少女から悩みなどを聞いていました。しかし、その少女がその後、死亡していたことが分かりました。今、トー横で何が起きているのか現状を取材しました。
■トー横は“かけがえのない場所”
新宿・歌舞伎町にある“トー横”と呼ばれる広場。取材当時、夏休みの時期ということもあってか、広場には多くの子どもたちの姿が見られました。
“トー横”に来た少女(14):「家にいたくないから、学校に行っていないです、そもそも。ここだと素の自分でいられて、あまり浮かないから、ここがいやすいみたいな感じです」
家庭や学校に居場所がなく、この広場にやってくる子どもたちは、いわゆる“トー横キッズ”です。
広場には子どもだけでなく、大人の姿も見られました。
“トー横”に来た少女(16):「いただきます」
防犯ボランティア団体「オウルxyz」が運営している子ども食堂では、子どもたちを広場から少しでも切り離そうと、犯罪に巻き込まれない居場所を提供しています。
“トー横”に来た少女(16):「学校とか周りの人間関係に疲れて楽しくなくなっちゃった。とにかく自分の中で満たされたいという欲があって来ました」「(Q.“トー横”に出入りするようになって気持ちは)性格的には明るくなりました。話すようになりました、人と。昔はほんとに人と話さなくて、本とか携帯とか見てずっと1人でいる感じだったから、今はむしろ来て良かったなと思っちゃって」「(Q.広場はどういった存在?)心の支えですよね、生活の一部で自分の一部」
“トー横”に来た少女(18):「居場所かな」
“トー横”に来た少女(19):「自分をさらけ出せる場所」
“トー横”は危険と隣り合わせである反面、子どもたちにとって、かけがえのない場所となっています。
団体のメンバーは弁護士や医師、大学生などおよそ40人です。“トー横キッズ”への声掛けなどを通して、見守りや相談も行っています。
キッズ:「(Q.中2?中1?)中2。学校と家と彼氏のせいで人付き合いが怖くなった」「(Q.そろそろ帰らないで大丈夫?)荷物見ててって頼まれて、帰りたくても帰れないんですよ。友達があともう少しかかるって」
■ボランティア団体 親からの相談にも対応
「“トー横”キッズが増える時期には特徴がある」と、オウルxyzの代表は話します。
防犯ボランティア団体「オウルxyz」 槙野悠人代表:「(子どもたちにとって)夏休みは来やすい時期ではあるが、特徴的にあるのは長期休みが終わった瞬間。例えば9月の頭や春休みの終わりの4月ぐらいにがっと増えます。やはり学校に悩んでいる子が多いからなんでしょう」
政府も「夏休み明け前後に不安定になる子どもが増える傾向がある」として、SNSなどの相談窓口の活用を呼び掛けています。
“トー横”に来た少女(16):「1日中暑いし、夏はとくに疲れますね」「ワレワレはウチュウジンダ。しょうもねえ」
ただ、悩みを抱えているのは、子どもたちだけではないといいます。
槙野代表:「実際のキッズの親って放置をしているとかに限らず、普通の家庭のこともある。普通の家庭からキッズになると親も病んでしまう。(親たちは)どうしたらいいのか分からない。相談先も分からない。まずウチが相談に乗り、行政の公的な相談機関につなぐとか、その場で対応できることはその場で対応できるようにして、特に家出人についてはすぐにあたるようにしている」
オウルxyzでは、こういった親からの相談にも積極的に対応しています。
■オーバードーズをする背景 専門家が指摘
“トー横”では犯罪だけでなく、生死にかかわる問題も出てきています。
路上に散乱する無数のゴミの中に捨てられていたのは、薬の錠剤などの包装シートです。この日、見つかったのは1つだけでしたが、日によっては多く捨てられていることもあるといいます。
広場にぐったりとした様子で横たわる10代の子ども。近寄ってくる人は介抱することもなく、心配する様子も見られません。市販薬などの過剰摂取「オーバードーズ」をして倒れている状態です。
今、“トー横”で蔓延(まんえん)している問題の1つで、薬によって症状は異なりますが、脳の働きが鈍くなったり、物事を考えられなくなったりするなど、命の危険も伴う行為です。
オーバードーズをしてしまう背景について、薬物依存の治療に詳しい専門家は次のように指摘しました。
国立精神・神経医療研究センター 薬物依存症センター 松本俊彦センター長:「背景としてリアルな生活がとてもしんどい状況にある。オーバードーズしている瞬間だけ脳が働かなくなって、何も感じられない状態になるから、そこの瞬間だけ楽になる。苦しい日々の中で楽になる逃げ道が見つかってしまう。楽になりたくてオーバードーズを繰り返してしまうと理解すべき」
なかでもせき止めや風邪薬を使う人が多く、子どもたちは薬をジュースなどに溶かして飲んだり、アルコール飲料と一緒に飲んだりしているといいます。
松本センター長:「病院に苦しんでやってくる子たちは、大麻や覚醒剤といった違法薬物の子ではなく、もう今ほとんどが市販薬。10代の薬物乱用依存患者の約7割は市販薬」
■16歳少女の死 オーバードーズか
1月に、番組は10代の少女を取材していました。
トー横にいた少女(16):「あまり家族と仲良くないから家にいたくなくて、結構ここにずっといる。(父親に)嫌われていて、気持ち悪いとか言われちゃうから。お母さんとは仲良いんですけど、お父さんがあまり。だから、あまり帰りたくない」
こう語っていた少女が亡くなりました。オウルxyzによりますと、6月、埼玉県内で死亡したということです。
詳しい原因は分かっていませんが、亡くなった当日の連絡の中にはオーバードーズをしていた形跡があったといいます。その日、一緒にいたという友人は、次のように話しました。
亡くなった少女の友人(16):「その子は広場でも電車の中でも薬を飲んで常にふらふら。言葉もろくにしゃべれない、ろれつもあまり回っていないのが多かった。めちゃくちゃ言っていたんですよ。ほんとにやめたほうがいいよって、(私が)『やめなよ』と言って(友人は)『うん』と言っているときも飲んでいる。『うん』と言いながら飲んでいるから、どうしようもなくて。いくら止めようとしても止まらなくて子どもたちの力では」
■少女がオーバードーズ克服へ 家族と協力
子どもの力だけでは止めることができなかったオーバードーズ。「今もオーバードーズをしている」という子どもから話を聞きました。
オーバードーズをしている少女(18):「風邪薬です。風邪薬を80錠飲んで飲むと、いろいろ見えます、幻覚とか。これからの人生について自分が何をしていけばいいのかとか、現実逃避したいからパキっちゃう(オーバードーズをする)」
友達や家族に悩みを相談できず、薬を飲まないと寝られなくなっていたという少女は、インターネットでオーバードーズを知り、薬を大量に飲むようになってしまいました。
オーバードーズをしている少女(18):「80錠飲んでいたのは、死にたいと思ったときに飲みました。死ねなかったんですけどね。それは去年とかかな。それで(更生)施設に入って今は落ち着いたので、出てきたという感じ」
少女は、これまで10回も救急搬送されました。今は家族の協力のもと、オーバードーズから抜け出そうと努力しているといいます。
オーバードーズをしている少女(18):「数を減らしていて、80錠を40錠に、40錠を20錠みたいにしています。頻度は週1とか週2とかですかね。やっぱり体にも負担がかかってしまうので気を付けている。親も考えてくれて、どうしたらいいかとか。みんなで解決していければいいなと思っています」
(「グッド!モーニング」2023年9月11日放送分より)/a>
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