【解説】欧米が掴む「プーチン大統領の侵略図」 ロシアの狙いは“プーチン大統領の頭の中にしかない”

【解説】欧米が掴む「プーチン大統領の侵略図」 ロシアの狙いは“プーチン大統領の頭の中にしかない”

【解説】欧米が掴む「プーチン大統領の侵略図」 ロシアの狙いは“プーチン大統領の頭の中にしかない”

■イギリス国防省が掴む「プーチン大統領の侵略図」とは?

井上貴博キャスター:
刻一刻と状況が変わっているのですが、これまでの動きを振り返ります。

▼2月23日ウクライナの首都・キエフのロシア大使館のロシア人外交官らが退避ロシアとの国境に近いウクライナ東部の親ロシア派支配地域の幹部がプーチン大統領に軍事支援要請

▼2月24日ウクライナのゼレンスキー大統領が「国土や自由が奪われるようであれば防衛する」として全土で非常事態宣言国連安保理での緊急会合が開かれるも、ロシアは拒否権を持つ常任理事国であることから、一致した対応が極めて困難

そして、2月17日の時点でイギリス国防省がTwitterに、「これからロシアはウクライナをどう侵略しようとしているのか」というルートを示した画像をあげていました。

ウクライナから見て東側にロシアがあり、北にはベラルーシがあります。南にはロシアが実効支配しているクリミア半島もあります。

まず第一段階として▼ロシアとの国境沿いにある、ウクライナ東部の親ロシア派閥支配地域といったところから攻め入る▼首都キエフにもロシアだけでなく、合同軍事演習を行ったベラルーシからも一斉に攻めてくる▼クリミア半島からも攻め入る

第二段階として、中へ中へ入っていく、ということが侵攻の“軸”としてあるのではないかというのが、イギリス側が掴んでいる情報だということです。

ホラン千秋キャスター:
どこまで行くのかは分かりませんが、ロシアを止める手立てというのはあるのでしょうか?

TBS外信部(元モスクワ支局長)豊島歩デスク:
今のところ、有効な手立てというのが思いつかない状況なのだろうと思いますけれども。さきほど、アメリカのバイデン大統領がウクライナのゼレンスキー大統領と会談をした、ということです。その中で軍事行動を止める具体的な対策が出るのかな、と思って聞いていたんですけれども、今のところ該当する箇所は出てきていません。アメリカは静観する構えではないかという状態です。今は刻一刻と動いていますから、これ以上侵攻が拡大することも考えられますし。今のところ、止める手立てはないといった状況だと思っています。

ホランキャスター:では、イギリス国防省が示したウクライナ侵攻の予想は、今後現実になり得る、ということですか?

豊島デスク:
欧米各国はロシアの軍事侵攻の作戦というのは、色々シミュレートをしていまして、首都のキエフを狙う、東部を狙う、南を狙う、という3か所については欧米各国は一致しています。かつ、現状のロシアの攻撃のやり方を見ると、この3か所を狙っているようです。しかも、発生が同時多発的に起きているということが非常に特徴的です。ロシアの関係者に取材をしましたけれども、こうしたロシアの軍事行動というのは、「きのうきょう、1週間、あるいは1か月、といったスパンで出来るものではない。作れるものではない」と言っていますので、かなり前々から想定されたものだったと思っています。

井上キャスター:
ロシア国民の受け止めについてもお話を聞きたいのですが。2014年のクリミア半島への侵攻の際も、国内のプーチン大統領の支持率は上がりました。今回も同じようなことになり得るのでしょうか?

豊島デスク:
ある程度支持率が上がるということをプーチン大統領も狙っているわけですし、世論調査会社自体がロシア政府の息がかかっているということもありますので、多少バイアスがかかっているということを考えると、世論調査では少しでも支持率は上昇するのだろう、とは思っています。ただ、2014年にクリミアを併合した時のように、大幅に上がるかどうかというのは、ちょっと見てみないと分からないところがあります。というのも、あの時よりも、若い人の間にインターネットを使って色々な情報を精査するという動きが出ています。今回のロシアの動きに関しても、特にモスクワなどの都市部をはじめとするリベラルな地域では、プーチン政権のやり方に「賛成だ」という人たちばかりではない。世論調査では多少上がるとは思いますけれども、どれくらいまで上がるかと。クリミア侵攻の当時は8割くらい上がったと記憶していますけれども、そういったことになるのかどうかという所だと思います。

■「ウクライナを守るため」の軍事侵攻?ロシアの狙いは“プーチン大統領の頭の中”

井上キャスター:
ここからは国際社会の考えとは異なる、ロシア側の思惑という観点で見ていきます。

▼2021年7月国内での紛争が留まらない、ということもあり、プーチン大統領の「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性」論文が発表されています。ここでは、ロシア人とウクライナ人は「一緒なんだ」ということをアピールしたかった。ロシア人とウクライナ人は一つの民族で、私たちロシア人は「ウクライナ人を守るため」に行動したいのだ、ということです。ですが、ウクライナ側としては、やっぱりNATO=欧米の方に入りたいのだ、という動きが加速していきました。

▼2021年12月ウクライナの動きを止めたい、ということで、プーチン大統領と国防省幹部らとの会合が行われました。そこで「欧米が敵対的な行動を続けるなら、我々はそれに対し軍事的措置を取る」と、軍事行動を示唆していました。

▼2022年1月アメリカ側としては、「ロシアの求めに応じない考え」を書面で伝えました。こうなってくると、外交カードがなくなってくる、外交面での“手詰まり”という所が見えてきます。

▼2022年2月10日~ウクライナ国境周辺などでベラルーシと手を組みまして合同軍事演習を行いました。これも、ロシアの考え方としては、「正当性がある」「ウクライナを守るため」なのだとしています。

▼2022年2月22日ウクライナ東部地域の「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」の2つの独立国家を承認しました。この点についても「私たちは平和維持活動をしているのだ」というのが、ロシア側の考え方ということになるわけです。

ホランキャスター:
ロシアの最終的な狙い・目的はどのような所にあると思いますか?

獨協大学経済学部森永卓郎教授:
ロシアはもう「アメリカの出方次第だ」と思っていると思うんですね。アメリカのやり方っていうのは、NATO軍としてロシアと軍事衝突するというやり方が1つあって。もう1つはロシアの要求している、「NATOの東への拡大を辞めます」というのを今後文書で入れる。でもこれ、2つとも私はアメリカが取る可能性は小さいのではないかなと気がしていて。最終的にアメリカが「ウクライナを見捨てる」っていうのが、今の段階では一番可能性が高い。だから実質的にプーチン大統領の思い通りになる可能性が高いのではないかという気がしています。

豊島デスク:
さきほど入った情報によりますと、アメリカ側がウクライナのゼレンスキー大統領の現政権の転覆を狙っているのではないか、という見方が出ています。ロシアも「NATOを拡大しないでくれ」「ウクライナを入れないでくれ」と欧米と話をしてきたわけで、欧米もそれに対する話をしてきたのですが。1つ考えておかないといけないのは、ロシアは欧米の論理では動いていないのではないか、というのことです。2021年のプーチン大統領の論文ですけれども、「1つの民族」という考え方をしています。ドネツクとルガンスクの2つの人民共和国を承認した際の演説では、大変長かったのですが、大半の時間を使って「ロシアとウクライナの歴史的な一体性」をずっと訴えました。ですので、大国としてのプライドというのを非常に前面に押し出す政策をこれまでも取ってきましたし、ロシア人の中にはそういう考え方があります。それは欧米には分かりにくい所なんですが、その考えを頭に入れながら今回の軍事行動も考えなくてはいけません。プーチン大統領が「どこで止めるのか」というのも、これはロシアの関係者の間では定説というか、合言葉のようになっていますが、“プーチン大統領の頭の中にしかない”という言い方を皆するんですね。そういったところのロシア人的な考え方、スラブ民族の考え方というのをよく見ていく必要があると思っています。
(24日20:11)

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