危険な空き家を“さかさま発想”でサウナに シャッター街を再生する異色の不動産店(2023年7月30日)

危険な空き家を“さかさま発想”でサウナに シャッター街を再生する異色の不動産店(2023年7月30日)

危険な空き家を“さかさま発想”でサウナに シャッター街を再生する異色の不動産店(2023年7月30日)

まもなく本格的な台風シーズンを迎えますが、老朽化で倒壊のおそれがある危険な空き家に、懸念が広がっています。
増え続ける空き家を減らす秘策。
それは“さかさま”にすることです

■10年放置なぜ?空き家の中に驚きの実態

放置されてきた“空き家”、そこには…
「これが、いわゆる白骨化遺体ですね」
長い年月を経た、痕跡が残されていました。大阪府東大阪市の築50年になる、3階建ての飲食店を兼ねた住宅。空き家を再活用する調査に同行しました。ここには以前、70代の男性が独りで住んでいたものの、病に倒れ、そのまま入院。以来10年間、空き家になっていたと言います。
(めりーほーむ 川村隼太代表取締役)「テレビもだいぶ“貫禄あり”って感じですもんね。昔の箱型のテレビですね。缶詰とかも年季入ってます。賞味期限は…2006年2月8日」
川村さんは5年間で200戸もの空き家を再生。住宅だけではなく、店舗としても新たな命を吹き込んできました。
(川村隼太代表取締役)「生活感、そのまんまですね」
住居スペースに残された、生活の痕。
(川村隼太代表取締役)「これは…血圧計ですね」
「これがいわゆる白骨化遺体ですね!」
「たぶんハトかスズメの死骸ですね。空き家が長いと動物たちが逃げ込んでくるんですよ。えさがあるわけではないので息絶えてしまう」
台所には、2台の冷蔵庫。
(川村隼太代表取締役)「覚悟してくださいね…いきますよ。」
家財道具ばかりか、仏壇までが残された室内。なぜ10年間放置されていたのでしょうか?
(父親の“空き家”を相続した Aさん)「売りに出すことは考えはしたんですけれども、中のものを綺麗にしてからでないと買い手はつかないかなと。それをやるにも費用がかかりますので積極的になれずにこのままきた」
折からの相続で、家の処分に悩んできたAさん。これに対し…
(川村隼太代表取締役)「住んでる方っていうのは、色んな人生があって、この状態で施設に入ったりとか、そのまま亡くなってしまう方もいるが、こういう状態で荷物が沢山あっても荷物は撤去してしまえばいいですし、不動産自体はちゃんと磨いて再利用、再度リフォームしてあげれば全然使えますので」
時に、倒壊や火災も発生し、全国的に大きな問題になっている“空き家”。活用の目処が立たず放置されている空き家は、全国におよそ349万戸。
その数は、20年で2倍近くに増えています。15年後には、住宅のおよそ1/3が空き家になるという試算もあり、政府は先月、管理が行き届かない空き家に対して、固定資産税を増額する方針を固めました。

■“さかさま”にしたら空き家が減る!?

増え続ける空き家に、解決策はあるのか?その糸口にもなり得る“新たな試み”が始まっていました。
「おっ100円?おめでとう!!すごーい」
たくさんの子どもたちで賑わっているのは、名古屋市内の駄菓子屋さん。レトロなアーケード街の一角にあります。築、およそ80年。40年前までは、スナックとして営業していました。オーナーはグラフィックデザイナーを本業とする、あいざわけいこさん。開業のきっかけは、新型コロナだったと言います。
(みんなで駄菓子屋(仮) あいざわけいこさん)「いつコロナが収束するかも分からないという状態で、子どもたちが外で遊べないようになっていたと。子どもが集まれる場所を大人が作ってあげないとこれはまずいと思って」
しかし、物件探しは難航。そんな時に協力を得たのが、不動産仲介の常識を覆す取り組みでした。
(みんなで駄菓子屋(仮) あいざわけいこさん)「『さかさま不動産』が出しているサイトがあるんですけど、まずそこに自分の想いを載せてもらって、それを読んで持ち主の人が『そういう使い方をされるんだったら是非どうぞ』という流れだったんです」
通常、不動産仲介は、大家さんが“貸したい物件を提示”して、借り主を募ります。しかし『さかさま不動産』は、“借りたい人の想い”をネットで公開して、“貸したい”という大家さんを募る仕組み。つまり…“さかさま”不動産なのです。仕掛け人は、この人。
(On-Co さかさま不動産 水谷岳史代表)「借りたい人が、“こんなことやりたい”ということを(大家に)伝える。それをした方が不動産を介した不動産のマッチングじゃなくて、人の物語とか、想いを介した(空き家の)マッチングができる」
発想の発端には、こんな調査があったと言います
(水谷岳史代表)「空き地などに関する所有者アンケートというのがあって、広く一般に(空き家などの情報を)提供しても良い人は全体の15%しかいなかったんですよ」
国交省がとったアンケートによると、所有者のおよそ74%が、“貸したり売ったりしたい”と思っているにも関わらず、“広く情報を出したい”と思う人は、わずか15%に過ぎません。
(水谷岳史代表)「(所有者は)情報サイトに載せることにネガティブじゃないかなと思うんですよね。それがこの数字に現れていますし(さかさま不動産では)大家さんって自分の情報を出さないで借り主を探すことができるんですね」
大家さんが、情報を出すリスクなしに借り手を探せる、“空き家対策”には うってつけの仕組み。マッチングはこれまで21件。仲介手数料がないこともあってか、全国から200人を超える“借りたい人の想い”が寄せられています。

■秘策“さかさま”で築100年が大変身

『さかさま不動産』では、空き家となっていた、築100年の古民家を、サウナにする仲介も行っていました。
(空き家になった祖母の家を貸す 河野晋さん)「土壁もそのまんまだし、窓も全部そのままだし…」
大家である河野さんは、傘の製造・販売をしていた祖母の家を『サウナを作りたい』という想いに共感して提供。それまで、マンションに建て替えるなどの打診はあったものの、納得できずにいたと言います。
(河野晋さん)「まさに理想通りに使って頂いて、再び違う形で人が集うようになるっていうのはすごく僕にとっても嬉しいことですね。古い建物を持っている人に対しては、新しい解決への道につながり、非常に助けになると思います」

■空き家を減らす秘策 “さかさま”効果は

さかさま不動産の取り組みは、意外な効果も上げていました。
(新大門商店街振興組合 加納栄志理事長)「ここにもお店ありましたし、ここもシャッター閉まってますけどお肉屋さん…ちょっとずつ無くなっていきという感じ」
あいざわさんが駄菓子屋を開業した大門地区は、かつて、多くの遊郭が立ち並んだ、一大歓楽街。しかし今では、250軒ほどあった店舗も50軒足らず…シャッター商店街となったのです。
こうしたなか、あいざわさんがきっかけとなって、さかさま不動産を介した、紅茶専門店もオープン。地域住民らとタッグを組んで、今年1月、イベントを開催。2日間で数千人が訪れたと言います。
(新大門商店街振興組合 加納栄志理事長)「さかさま不動産が上手に(借り主を)マッチングして下さっていて積極的に(街を)盛り上げていきたいと思って下さる方たちが来てくれている、そういう意味では僕らにとってはとても嬉しいことですね」
(On-Co さかさま不動産 水谷岳史代表)「(さかさま不動産は)地域側から選ばれるんですね。 (借り主が)地域に来ることによって、その地域が良くなるとか、その家が良くなるとかという想いがあって『一緒に面白いことをやろうよ』っていう人たちがつながりやすい。色んなアクションが起きてるなっていうのがさかさま不動産をやっていて思うことですね」

7月30日『サンデーステーション』より
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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