「実質的トップ」副社長は出席せず…ビッグモーター社長が辞任表明も“大株主”影響か(2023年7月25日)
中古車販売大手『ビッグモーター』の兼重宏行社長が25日、一連の不正発覚後、初めて記者会見を行いました。
兼重宏行社長:「経営トップとしての私の責任だと極めて重く受け止めており、責任を痛感し、深く反省しているところです。私は7月26日付で、代表取締役社長を辞任することと致しました。この度は誠に申し訳ございませんでした」
兼重社長は、経営トップの座から退くことを明かしましたが、組織ぐるみの不正は否定しました。
兼重宏行社長:「不正請求問題は、板金塗装部門単独で、他の経営陣は知らなった。これが事実だと思います。(Q.社長はいつから不正があったと認識)特別調査員会の報告書を受けて、本当耳を疑った。『こんなことまでやるんか』と。がくぜんとしましたね。(不正は)天地神明に誓って知らなかったと言えます」
報告書で指摘された不正のなかで、社長が厳しく非難したのは、ゴルフボールによる手口です。
兼重宏行社長:「本当、衝撃的で、これはもう一線を越えてるなと。ゴルフボールを靴下に入れて振り回して、ひょう害者の損傷範囲を広げて、水増し請求する。もう本当に、これ許せません。ゴルフボールで傷をつける。ゴルフを愛する人に対する冒涜(ぼうとく)」
ゴルフボールによる不正を行った、元工場長に話を聞くことができました。
元工場長:「軍手にゴルフボールですね。靴下に入れたことはない。(Q.靴下にゴルフボールを入れてたたいたことは)ないですね。一度も」「社長から『社員が悪い』って発言が強かったと思うが、副社長が根本的な悪の根源だとは思いますので。まず内部側の人間からすると、社長の謝罪でなく、副社長の謝罪が聞きたかったです」
元工場長らが違和感を覚えたのは、社長の息子である、兼重宏一副社長が出席していなかった点です。報告書では、副社長が降格処分を頻発することで、従業員らを過度に委縮させ、経営陣の意向に盲従させていたと指摘しています。
元工場長らの話によると、車1台あたりの修理費用の利益を『@(アット)』と呼び、厳しいノルマを積極的に課していたのは、2018年ごろから経営を取り仕切る副社長だったといいます。
現役社員:「実質的なトップは副社長だったのかなと。@がどうこうとか、過剰な目標設定とか、副社長が実質的に指示したというのが、正直あるので。現場への圧力をかけていたので、そこをどう考えているのか。そういった部分を聞きたかった」
兼重宏行社長:「(Q.息子の副社長は)創業当初から、人事に関しては抜てき人事です。その仕事をやってもらって『ちょっとまだ十分な力がないね』という場合は、すぐに降格します。ちょっと一歩下がって、また全体を見て、人間は成長する。ちょっと行き過ぎがあったのかも分かりませんけども、悪意を持ってやることは一切ありません」
陣内司管理本部部長:「(Q.行き過ぎていないという理解か)本人の方からは、深く反省の言葉を預かっています。(Q.どんな反省の言葉か)今回、お客様のためと思い体制を整えていた時に、ついカッとなって、強い言葉で降格という処分を行ったことに対し、あの時にこういうふうな形で言うんじゃなかったと、強く反省を示していた」
今回、副社長は父親と共に辞任することになりました。現役社員らは会見をどう見たのか。
現役社員:「現場からすると、社長は本当に知らなかったのではないかと感じている。現場に出てこない社長は全く何も知らない状態で、あの場に立たされていますので、記者会見で」
元工場長:「(Q.社長自身が不正を知らなかった可能性は)知らないというか、社長の下に報告があがってなかったことが多い」
さらに25日、新たに浮上したのが…。ビッグモーターが“店舗周辺の街路樹に除草剤を使っていたのではないか”という疑惑です。
兼重宏行社長:「(Q.店舗前の街路樹に、除草剤がまかれていたのではとの報道について)環境整備で」
群馬県にある、ビッグモーターの店舗の前。5年前の写真を確認すると、歩道上に街路樹が生えていますが、今はなくなっています。去年8月に枯れていることが分かり、土を調べてみると、除草剤が検出。県が警察に被害届を出す事態となりました。今のところ、疑わしい人物などの情報はありませんが、倒木の恐れがあり、17本が伐採・撤去されています。
埼玉県の店舗の前でも。2015年に青々としていた植え込みは、段々と薄くなっていき、去年11月には全てなくなっていました。
ビッグモーターの幹部が店舗を見回りする『環境整備点検』。チェックシートには「店舗前の歩道10メートルと展示場、敷地内には雑草が無く掃き清められているか」という項目があります。元社員は『環境整備点検』に向けて除草剤を使っていたと、明らかにしました。
元社員:「自分たちの店舗・店長を守るためには、日頃から雑草処理をしておかないと『環境整備』がアウトになったり(店長が)降格したりする。除草剤を買ってまくのが一番早いと」
兼重宏行社長:「点検項目で、お客様が目にするところは奇麗にしようとしている。当然、草が生えて見栄えが悪ければ奇麗にする。その一環…ぐらいしか考えられない」
石橋光国取締役:「ちょっと誤解があると思う。敷地内の話と混同していると思う。その辺だけ間違えないでいただければ」
会見では、損保会社の関与についても質問が及びました。
兼重宏行社長:「(Q.損保から出向を受け入れているが、不正情報は共有していたか)そのあたりは、私は分かりませんけど、しっかり仕事ができているか、そういう人材として受け入れているので、それは一切ないと思います」
損保ジャパンは2011年以降、板金部門などに37人を出向させていました。他の損保大手も、それぞれ3人を出向させています。元工場長によると、板金・塗装部門への出向者は、毎週の会議に出席し、情報を共有していたといいます。
元工場長:「不正についての会話はしないですね。そこではもう数字の話だけで。(Q.こんな高い数字をクリアできるかというのは)よく考えれば、通常ではあり得ないとは思うので、出向者の方たちも分かっていたと思うんですけど。会社には報告とかしてなかったのかなと」
兼重宏行社長:「(Q.損保側の責任は)今回起こったのは生産現場で、分からないところでやっている。損保さんも私も全く認識していないので(損保側が不正に)関与するってことは一切ないと思います」
損保ジャパンは「不正請求を認識できなかった」として、社外メンバーによる調査委員会を設置し調べると発表しています。
不正はなぜ起きたのか。兼重社長の見解です。
兼重宏行社長:「私の職務怠慢。これが大半だと。もっと現場に入って、状況確認をしておけば良かったなと。本当まさに経営責任を痛切に感じております」
兼重社長が一代で築き上げたビッグモーターは、株式を公開していません。親子が経営の一線から退いた後も、大株主として影響力を持ち続けることになります。
兼重宏行社長:「(Q.社長、株の返還しないんですか。それだけ答えてください)すみません」
■“危機管理の甘さ”が招いた不正
会見について、企業のリスク管理に詳しく、行政機関のアドバイザーも務めたことがある、日本リスクマネジメント協会・白井邦芳さんに聞きました。
白井邦芳さん:「“知らなかった”という発言があったが、この状態に気付けなかったのは、経営者としての資質に欠けている。“企業の危機管理”において必要なことは『リスクの抽出』『リスクの早期発見』『リスクの予防管理』全てできていなかった。一般の経営者からしたら、あきれてしまうような会見だった」
現役社員が「過剰なノルマ設定など、実質的なトップだ」と証言する、兼重宏一副社長は記者会見に姿を現しませんでした。
白井邦芳さん:「仮に副社長が出席したら、質問が集中し、新たな火種を産むことになる可能性があったため、危機管理上、出席させなかったのではないか」
今回、社長と副社長が辞任を表明しましたが、ビッグモーターの親会社は『ビッグアセット』という資産管理会社で、ビッグモーターの全ての株式を保有しています。この会社は、社長と副社長の会社です。兼重親子は、ビッグモーターの社長・副社長を辞任しますが、実質的に“オーナー”ということに変わりはありません。
会社法では、株主にその会社の役員選任、または解任する“議決権”が与えられています。つまり、兼重社長は、やろうと思えば、ビッグモーターの人事に介入できるということになります。兼重社長は会見で、今後経営に関与しないと表明していますが、ビッグモーターへの“影響力”は残る可能性があります。
白井邦芳さん:「“経営陣は身内のまま”で、組織の構図が根本的に変わっていないため、支配的な影響力が残るだろう。仮に兼重氏が人事権に関与してきた場合、新社長が拒絶するのは難しいのではないか」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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