幹部に部下の「生殺与奪権」…ビッグモーターいびつな企業風土 社外秘の文書入手【もっと知りたい!】(2023年7月21日)
ビッグモーターの保険金不正請求問題について、社員に配られる社外秘の経営計画書を入手しました。経営幹部に対して「部下への生殺与奪権を与える」という記述がありました。
■クレーム受け入れられず 修理代30万円要求も
車内に異常な振動音が響き、ハンドルが小刻みに揺れ続けます。
助手席の妻:「なんなんこれ、怖い~」
この場所は高速道路です。危険を感じ、アクセルを緩めると、ようやく揺れはなくなりました。
助手席の妻:「どういうこと。今のは?」
「ビッグモーターで中古車を買い、被害に遭った」と訴えるのは、関西に住むAさんです。
Aさん:「最初、バースト(タイヤの破裂)かなと。微振動から始まって、急にグワッと揺れる感じ」
Aさんが今年4月に購入した車は、2017年式のミニバンです。走行距離は11万キロ、価格は200万円でした。しかし、わずか2週間で車体とタイヤをつなぐサスペンションに異常が現れました。
Aさん:「そのまま目的地に行こうと思ったんですけど、息子が怖い怖いと言うので、ビッグモーターに電話して」
店舗にも行き、直接クレームを入れましたが、「異常は認められない」の一点張りだったといいます。
Aさん:「『壊れている所を見抜けないまま売ったんでしょ』と話をして、『ちゃんと整備している』となって。『おかしい、もう一回見てよ』って。それでまた返ってきて、同じことになって。何回やってもグルグル同じことになるやん。こっちが毎回怖い思いをしているのに、僕が運転するか、あなた(店長)が運転してもいいから、その道にもう一回行きますか?『ちょっと忙しいから無理です』『そんな危ないことできません』」
結局、クレームは受け入れられませんでした。それどころか、修理代として30万円を求められる始末でした。根負けしたAさんは、ビッグモーターとの交渉を諦め、別の整備会社で修理したといいます。
■いびつな企業風土「毎日口に出して言う言葉…」
「半ば組織的」とも指摘される、ビッグモーターの不正問題。保険システムの根幹を揺るがす事態に、損害保険会社は危機感を募らせています。
東京海上ホールディングスの永野毅会長は、「報道されていることが本当に事実だとすると、我々の想定を超えたことが起こっている」と話しました。
第三者委員会による調査報告書は「経営陣に盲従し、忖度(そんたく)するいびつな企業風土」と、これまでに従業員による不正の内部告発があったことに触れています。そのうえで、「特段の調査も行わないまま、結果的には、もみ消したと言わざるを得ない」と厳しく糾弾しています。
組織の方針などが記された「経営計画書」を入手しました。ここからも「いびつな企業風土」と指摘された社内の一端が見えてきました。
経営計画書は会社がすべての社員に配る冊子で、毎年のようにリニューアルされていたといいます。
経営計画書:「毎日口に出して言う言葉 幸せだなあ! 俺(私)はツいてる!」
背中をそり返し、直立不動で行われた朝礼。毎朝の日課も事細かに記されています。
ビッグモーター元社員:「経営計画書というものを毎朝、唱和するものがある。社長の名前が書いてあるので、社長の意思だと。間違いなく」
■経営の原点12カ条 食い違う理想と現実
すべての社員を対象に「ルールを破れば一発退場」となる禁止事項には、こんな表現もあります。
経営計画書:「ワンストライクアウト 保険金不正請求を実施・加担して会社に対して損害を及ぼす影響を与えた場合」
しかし、ビッグモーターは、実際はワンストライクでアウトとなるべき保険金不正を個人どころか、半ば組織ぐるみで行ってきたと指摘されています。理想と現実が大きく食い違う展開になっています。
調査報告書には「今回の不適切な保険金請求事案は、崇高な理念に真っ向から反する背信行為であり、顧客の信頼を裏切って、自社の収益獲得を優先したとの非難を免れ得ない」と記されています。
「経営の原点12カ条」には、次のように掲げられています。
その3.強烈な願望を心に抱く「目標達成のためには、潜在意識に透徹するほどの強く持続した願望を持つこと」
その8.燃える闘魂「経営にはいかなる格闘技にも勝る激しい闘争心が必要」
社員の更迭基準については、次のような記述が見られます。
経営計画書:「会社と社長の思想は受け入れないし、仕事の能力もない。早く辞めてください」「会社と社長の意思は受け入れないが仕事の能力はある。今、すぐ辞めてください」
■「生殺与奪権」厳格な社内恋愛ルールも
一方、採用基準の項目では、能力とは関係ない表現も見受けられます。
経営計画書:「この人なら車を買ってもいいと思える人」「清潔感があり、容姿端麗でお客様目線で物事を考えられる人」
さらに、人事については「経営方針の執行責任を持つ幹部には、目標達成に必要な生殺与奪権を与える」という表現が見られます。
「生殺与奪権」とは、生かすも殺すも幹部次第ということなのでしょうか。いつ権利が行使されるか分からない部下にとっては、上司の顔色をうかがうしかありません。
元社員:「結構、すごい内容が書いてあった。“他社で車を買い替えたら転職”とか」
「社員の自家用車は自社で購入する。購入希望者は店長と相談して、車種と値段を決め、社長が決済する」という表現もあり、社長の決済なしには車を買うこともできません。
元社員:「自社で買わないから、辞めた社員がいた。“辞めさせられた”という話。数十人は最低でもいる。自社で購入してもメリットがないので、皆買いたくない。そのあたりどうなのかというのはあった」
■「生殺与奪権」の真意は? 担当者に聞く
規定は、業務外の行動にも及んでいました。
経営計画書:「社内不倫を見つけたら公表、異動、減給、降格する。二度目は転職を勧告する」
未婚者同士の恋愛についても、厳格なルールがあります。
経営計画書:「社内恋愛は二度目まで!三度目は転職を勧告する」
さらに、結婚式についても「結婚式は売り出し日を外して、予定を組む」と規定されています。
結婚式に上司や同僚を招待した場合は、交通費を負担するのが社会の常識だとしたうえで、「この費用が負担できないのなら、式を挙げる資格はない」と記載されています。
「生殺与奪権」など刺激的な表現が並ぶ「経営計画書」の真意について、ビッグモーターは「会社と社員のベクトルを合わせる目的で記載した内容となります。表現が過激であるという外部からのご指摘もあり、表現の変更も含め、検討しております」としています。
(「グッド!モーニング」2023年7月21日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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