【独自】「全速力で境界線を越え」ツアー同行者が目撃した瞬間…米兵が北朝鮮“越境”(2023年7月19日)
韓国と北朝鮮の軍事境界線がある板門店(パンムンジョム)で18日午後3時前、見学ツアーに参加していた、アメリカ軍所属のトラビス・キング2等兵(23)が突然、軍事境界線を越えました。その一部始終を目撃した方に話を聞くことができました。
ツアーに参加していた女性:「あそこには45分ほどいたと思います。最初に聞こえたのは『あいつを止めろ!』アメリカ兵の叫び声です。男性はあっという間に走り去りました」
南北を隔てる軍事境界線。朝鮮戦争の休戦協定によって制定されたもので、今月27日は、この線が引かれてまる70年になります。これまでも、北朝鮮の兵士がここから脱北するケースは何度か起きています。ですが、今回は全く別ものです。板門店で韓国側から北朝鮮に越境。しかもそれがアメリカ軍兵士という、初の事例です。
アメリカ、オースティン国防長官:「米兵の1人がツアー中に、自らの意思で、許可なく軍事境界線を越え、現在北朝鮮にて拘束中のようです」
ホワイトハウス、ジャンピエール報道官:「国防総省、国務省、国連とも連携して、情報の確認と事態解決に取り組んでいます」
キング2等兵は1年半ほど、韓国で任務に就いていたといいます。その直前、レスリーさんが撮った写真。ツアー客と一緒に映っているこの人物が、キング2等兵だといいます。2メートルほど離れたところには、ツアーに付きそう兵士の姿も確認できます。
ツアーに参加していた女性:「(Q.DMZ(非武装地帯)に到着前、男性を見た覚えは)物静かで、特に気になる様子もありませんでした。土産物店で帽子を買ったようで『DMZ』と書かれた黒い帽子をかぶっていました。(Q.他のツアー客との交流は)何も」
直後に目撃したのは、全速力で駆け抜けるキング2等兵の背中でした。
ツアーに参加していた女性:「記念撮影したり、ツアー客と談笑していると、あの男性が北朝鮮側に向かって猛スピードで走っていきました。何かの冗談か、動画の撮影かと。『なんてバカなことを』とあぜんとしました。男性は止まることなく走り続けていて、アメリカ兵の一人が『捕まえろ!』と叫びました。韓国兵とアメリカ兵がすぐに追いかけましたが、男性の方が速く、境界線にも近くて、誰も止められませんでした」
アメリカメディアの取材に応じた別の参加者からは「彼は大声で笑いながら建物の間に走っていった」という証言も出ています。
ツアーに参加していた女性:「(Q.他のツアー客の反応は)悲鳴を上げて、建物まで全力で走りました。バスまで戻って、すぐにその場から離れました。みんな驚いて信じられないといった様子でした」
キング2等兵は去年10月、暴行の容疑で現行犯で逮捕されました。警察がパトカーの後部座席に乗せたところ、暴言を吐きながらパトカーのドアを蹴って壊したということです。その後、公共のものを壊したとして起訴されています。さらに、同じ時期に、ソウルのクラブで人を数回殴ったとして起訴されています。
2つの暴行事件と器物破損。アメリカメディアによると、キング2等兵は47日間収監され、今月10日に釈放されたばかり。本国に強制送還され、懲戒処分が待っているはずでした。それが、18日に護送された仁川空港で突然失踪。その後、板門店ツアーに参加し、隙を見て北朝鮮側に入ったとみられます。
「懲戒処分が嫌で、北朝鮮に亡命したかったのかもしれない」と推察するメディアは多いですが、反米社会主義国家でアメリカ人が生きていくことは容易ではありません。
越境とはこうも簡単にできるものなのでしょうか。過去に行われた板門店ツアーの様子を見ると、軍事境界線まであと数メートルという場所で記念撮影はできますが、それ以上先に行くことのないよう、警備兵が目を光らせています。
越境できる機会といえば、軍事停戦委員会本会議場の中を見学している時ぐらいです。軍事境界線はこの建物の中にも通っていますが、北朝鮮側に入っても止められたりはしません。ただ、部屋の奥には北朝鮮側へ続くドアがあり、北朝鮮兵士が立ちふさがっています。
軍事境界線ツアーを手掛けるツアー会社によると、服装にも厳しい規定があるといいます。
“軍事境界線ツアー”を実施するベルトラアジア担当、余語晴香さん:「靴などもサンダルは入場ができない。ブランドのロゴが入っているものも、着ていると服装規定に違反で入場ができない。半ズボン不可。長い丈のくるぶしまで隠れるもののみ可能。女性の場合、スカートであれば、ひざ丈まであれば可能」
北朝鮮に拘束されたキング2等兵が、今後どのような処遇を受けるかはまったく分かりません。アメリカ国防総省は「事件解決のため、北朝鮮の担当者と連絡を取り合っている」と説明しています。ただ、今の米朝関係の悪さは過去最悪レベルです。交渉は一筋縄ではいかないかもしれません。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
コメントを書く