医師が直接現場で治療 「ドクターカー」密着 医療技術だけでなく“道選び”も重要に【Jの追跡】(2023年7月15日)

医師が直接現場で治療 「ドクターカー」密着 医療技術だけでなく“道選び”も重要に【Jの追跡】(2023年7月15日)

医師が直接現場で治療 「ドクターカー」密着 医療技術だけでなく“道選び”も重要に【Jの追跡】(2023年7月15日)

さいたま赤十字病院にある「ドクターカー」。消防からの依頼により医師が直接現場に急行し、病院に搬送する前から治療することができます。その現場は、患者の命を左右する緊迫したものに…。

交通事故で吹き飛ばされたバイク運転手、くも膜下出血、アナフィラキシーショック…。ありとあらゆる緊急事態に対応するドクターカー。地域の命を守る最前線に密着します。

■医師が直接現場に 搬送する前から治療可能

さいたま市にある、さいたま赤十字病院。24時間365日、絶え間なく患者を受け入れているのが「高度救命救急センター」です。

ここに配備されているのが、ドクターカーです。一般のSUV車に赤色灯とサイレンを付けたもので、緊急走行も可能となっています。

ドクターカーの担当医師はおよそ20人。医療器材や医薬品などは毎朝チェックします。

市川遊理医師(30):「これは点滴の針ですね」
八坂剛一医師(51):「この針とか点滴が一番消耗するので、毎回活動で使って減っていくので毎朝確認をして、出動ごとに補充している」

通常、救急車に乗っている救急救命士は医師の指示に従い、救命処置はできるものの、できる医療行為は限られています。

医師が直接現場に急行することで、病院に搬送する前から治療ができるようにと生まれたのがドクターカーなのです。

■衝突事故 バイクの運転手約5メートル飛ばされる

早速、ドクターカーの要請がありました。

バイクと車の衝突事故が起きた緊迫の現場。果たして患者の容体は?

この日のドクターカーの担当医師が現場に駆け付けます。見えてきたのは緑のバイク。事故の衝撃の大きさがうかがえます。接触した軽自動車もライトが破損していました。

20代のバイクの運転手が、5メートルほど吹き飛ばされたといいます。

古谷慎太郎医師(35):「こちらの手、痛みないですか?血圧測らせて下さい。ごめんなさい、押しますよ」

かろうじて意識がある様子です。

古谷医師:「どうです、痛くない?」
男性:「痛くないです」
古谷医師:「とりあえず骨折疑いかな」

手首や足の骨折の疑いがあるため、近くの病院に搬送します。

患者にかかりつけ医があったり、他の病院が近かったり、状況によって搬送場所も臨機応変に変えていきます。

■路上で80代男性倒れる 額と鼻から出血

ドクターカーの出動要請がありました。路上で男性が倒れていて、70代から80代で頭から出血しているということです。意識もないという情報です。

ドクターカーは患者が直接ドクターカーを要請することはできません。119番を受けた消防が、救急車を向かわせると同時に、医師の早急な治療が必要と判断した場合、要請します。

そのため、現場は常に1分1秒を争う緊迫した状況。いかに早く患者に接触できるかが、命を左右するのです。

市川医師:「向こう(救急車)はこれから(国道)463入ってきます。(国道)463号入る前に、どこか止まりますかね」

ドライバー:「旋回して」

市川医師:「そうですね」

どこでどのように救急車と合流すれば、早く病院に向かえるのか。車の向きまで計算して救急車と合流します。

医師に装着したカメラを見てみると、救急車に収容されていたのは80代の男性。突然、路上で倒れ、気付いた人が通報したといいます。

男性は額と鼻から出血していました。

市川医師:「 FAST(超音波検査)は?」
八坂医師:「一応FASTまでしておこうか」

病院に搬送しながら、呼吸や意識レベル、見えない出血はないかなどを確認します。

市川医師:「ドクターカーです。患者さん接触して、A(気道)B(呼吸)C(循環)は安定してます。D(意識)に関しては、発語は出てきたんですけど、名前とかは言えない状況で」

その後、患者は病院に到着。ドクターカーが出動したことでおよそ10分早く診ることができました。

転倒した際に頭を打ち、外傷性のくも膜下出血を引き起こしたとみられています。しかし、転倒の原因は分かっていません。

成田岳医師(31):「普段生活していて、ふらつきとかめまいとかありました?」

男性:「ない」

成田医師:「ないですか」

男性は意識を回復しつつありましたが、数日入院することになりました。

■1秒でも早く現場に…「道選び」が重要

さいたま赤十字病院では2016年からドクターカーの運用を開始。今では年間でおよそ1500件。一日平均で4件ほどの出動要請が入ります。

1秒でも早く現場に到着するために、必要なのは医療技術だけではありません。

リーダーの高度救急救命センター部長・八坂剛一医師(51)は、ドクターカーを担当して6年です。

八坂医師:「ドクターカーは病院と違って、交通事故の現場に自ら行ったり、緊急走行で車を運転しながら現場に向かっていくこともあって、安全管理とかできないと一人前のドクターカーのクルーとは言えない」

なかでも、八坂医師が重要視するのが「道選び」です。

八坂医師:「ドクターカーで一番使いやすい道の特徴は何がある?」

張賢司医師(30):「折り返しをしたい地点でできない場合があるので、中央分離帯がない道路のほうが使いやすい」

目的地への行き方だけでなく、道路の特徴も把握しておかなければなりません。

次世代のドクターカーの医師を育てるのも、八坂医師の役目だといいます。

■70代男性“アナフィラキシーショック”

日々、要請が絶えないドクターカー。要請は、けがなどの外傷だけではありません。

坪井基浩医師(39):「アナフィラキシー疑いです。71歳の男性です。現在症状は呼吸苦。それから皮膚症状です」

急性のアレルギー反応を見せる「アナフィラキシー」。現場に到着すると、患者には発熱とのどの痛みもあるといいます。

看護師:「咽頭(いんとう)痛?」

坪井医師:「そうですね。咽頭痛がありそうなんで、N95(マスク)でいきます」

急病の患者は、何が原因でどんな病気か分からないことも少なくありません。万全の態勢で治療に臨みます。

坪井医師:「今、どこがつらいですか?」

男性:「全身つらい」

坪井医師:「全身がだるい感じですか」

男性はあんずでジャムを作っている最中に気分が悪くなったといいます。

坪井医師:「アナフィラキシーショックですかね、可能性としては」

男性:「(救急に)電話しているうちに気を失いかけた」

男性の血圧は40台に。正常値を大きく下回っています。応急処置として治療薬を投与。そして状況を病院と共有します。

坪井医師:「患者と現場で接触しました。アナフィラキシーショックの状態で、全身の掻痒(そうよう)感(かゆみ)と、あとは顔面を中心とした腫れぼったさと、咽頭違和感が出現したという状況です」

10分後、病院に到着。連絡があったため、準備は万端。本格的な治療が始まりました。すると、40台まで下がっていた血圧も上昇しました。

南和医師:「原因は明らかにあんずのジャムを作っている時に、本人がかゆくなって、顔がむくんで、頭の意識も遠のいていったというので、それじゃないかな。それに準じた治療したら、すご症状が良くなったので」

男性はその後、入院しましたが、翌日には症状が回復。退院していったといいます。

■現場との“連携”で命を救う

ドクターカーの現場とリアルタイムで情報を共有することで、病院側も万全の態勢で待ち受けることができ、搬送後、直ちに処置が可能となるのです。

その現場を目の当たりにすることになりました。

刃物で重傷を負ったという60代の女性。車内で確認した状況を病院に連絡します。

医師:「とりあえずショックはなくて落ち着いていますが、1カ所(傷)が深そうで活動性出血が続いています。10分くらいで(到着)ですかね」

現場から細かい情報の報告を受け、わずか10分で準備を完了。病院到着後、すぐに検査、手術を行うことができました。

手術は救急科の外傷外科医や消化器外科など、様々な専門医が集結。現場との連携によってどんな治療が必要かを迅速に判断できたのです。

手術は2時間に及びましたが、患者はなんとか一命をとりとめました。

八坂医師:「実はドクターカーだけで行っても助からないんです。結局、手術だったり最終的な治療は病院でしか行えないんです。病院側で待っているスタッフがレベル高くないと結果的に助からない。だから、出ていくドクターも病院内で構える外傷の専門の医者の人たちのレベルアップも大事」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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