【首都進軍停止で流血回避】プリコジン氏“武装蜂起“反乱収拾の実情◆日曜スクープ◆(2023年6月25日)
■プリゴジン氏“部隊引き揚げ命令”なぜ進軍停止
民間軍事会社「ワグネル」のトップ、プリゴジン氏による武装蜂起は、約24時間で幕を閉じた。一時はワグネルの部隊が首都モスクワに迫り、ロシア軍と戦闘になるなど危機的な状況に陥った。プリゴジン氏は23日夜に武装蜂起し、モスクワへとワグネルの部隊を進めていたが、24日20時22分、自身のテレグラムに「ロシア人の血が流れることに対する責任を自覚し、部隊を方向転換させている」と武装蜂起の中止を発表した。
■緊張緩和で合意“ルカシェンコ氏が仲介”事態打開の条件は
ロシアの隣国ベラルーシのルカシェンコ大統領は、ワグネルのプリゴジン氏と緊張緩和で合意したことをプーチン大統領に伝えたと発表した。ベラルーシの国営メディアは24日、プーチン大統領の合意の下で、ルカシェンコ大統領が武装蜂起したワグネルのプリゴジン氏と電話会談したと発表した。交渉の結果、プリゴジン氏はロシア国内でのワグネルの進軍を停止し、緊張緩和の措置を講じる提案を受け入れたとされている。合意条件には、▽モスクワを目指していたワグネルの部隊を拠点に戻す、▽プリゴジン氏はベラルーシに出国、▽ワグネルの戦闘員が訴追されないことを保証などが盛り込まれた。
■南部の軍事施設制圧“プリゴジン氏”国防幹部との面会要求
プリゴジン氏による武装蜂起は22時間で終焉を迎えたが、非常に緊迫した状況を招いた。23日の夜から24日未明にかけ、約2万5000人のワグネル戦闘員がウクライナ側から隣接するロシア南部のロストフ州に侵入した。24日午前にはプリゴジン氏やワグネルの兵士が州都のロストフナドヌーにある南部軍管区司令部に入る映像が公開された。プリゴジン氏は「ワグネル部隊がロストフを封鎖し、ショイグ国防相とゲラシモフ総司令官がここまで会いに来ない限りこのまま首都モスクワへ進軍する」と宣言し、部隊を北上させた。
■ワグネル部隊“司令部制圧に手際良さ”計画性の有無は
ロストフ州の州都ロストフナドヌーは、ワグネル部隊により極めて手際よく、制圧された。プリゴジン氏やワグネルの兵士はこちらの中心部にある南部軍管区司令部を占領し、半径2キロ圏内を封鎖した。飛行場を含む軍事施設をはじめ、警察署、行政庁舎などをワグネルが制圧した。ワグネル部隊は侵入し、一気にロストフナドヌーを外部から遮断し、拠点化した。
■兵站重要拠点“ロストフ州制圧”元米要人の指摘
プリゴジン氏が制圧したロシア南部のロストフ州は、ロシア軍のウクライナ侵攻にとって、重要地域とされている。元米国家安全保障会議のビンドマン氏は、「ロストフに南部軍管区の司令部とウクライナ戦争の作戦本部がある。ロシアにとって最も重要な兵站拠点のひとつでもある。ワグネルは莫大な備蓄を手に入れることができる」と、地域の重要性を指摘している。
■プリゴジン氏“死ぬ覚悟”ワグネル進軍で首都に緊張感
ワグネルの部隊は北上を続け、ボロネジ州を24日午後に通過した。ロシア軍のヘリコプターがワグネルの車列を攻撃し、石油貯蔵施設が炎上したという情報も指摘されている。この段階で、ワグネルとロシア軍が戦闘に突入することになる。プリゴジン氏は、「私たちを滅ぼすことはできない。兵士2万5000人全員が死ぬ準備ができている」と、戦闘に対する決死の覚悟を示した。
ロシア軍との戦闘になっても、ワグネルの進軍は衰えず、首都モスクワに迫っていった。モスクワ州では、ロシア軍は、州境に土嚢を設置し、道路に溝を掘るなどワグネルの進軍に備えた。ロシア軍の95%以上がウクライナ東部に駐屯しているため、モスクワ市は警察部隊と装備が十分ではない徴兵部隊で防衛されており、脆弱な部隊が防衛にあたっているとの報道から、首都モスクワは緊張感に包まれた。
■プリゴジン氏“侵攻の大義名分を否定”軍幹部を批判
プリゴジン氏は23日、ロシアが侵攻に踏み切った正当性と根拠について、「いかれたウクライナが我々を攻撃しようとして、NATOと一緒になって我々を攻撃しようとしているだとか、そんなでたらめをまき散らしていた」と述べ、当初、侵攻の理由に挙げられたウクライナやNATOによるロシアへの攻撃があるとする政府の主張を真っ向から否定した。プリゴジン氏は、「ショイグ国防相が元帥になるために始めた、ロシア国防省は国民をだまし、プーチン大統領をもだました」と厳しく指弾した。
■プーチン大統領「ワグネルが裏切り」緊急演説で非難
ロシアの民間軍事会社「ワグネル」が24日朝、ロシア南西部のロシア軍拠点に入り、ロシア軍幹部を倒すと表明したのを受け、プーチン大統領は同日午前、首都モスクワで緊急テレビ演説を行い、「我々が直面しているのは裏切りだ。行き過ぎた野心と個人的利害が反逆につながった。裏切りの道を選んだ者、武装反乱を準備した者は全て罰を受け法と国民の前で責任を負う」と厳しく非難した。プリゴジン氏はプーチン大統領の緊急演説を受け、「母国への裏切りについて大統領は非常に間違っている。我々は母国の愛国者だ。我々は戦ってきたし今も戦っている」と反論し、ロシア国民のために行った武装蜂起であると主張した。一方ウクライナのゼレンスキー大統領は、「悪の道を選ぶものは皆自らを滅ぼす。ロシアの弱さは明白だ」と主張した。
■ウクライナ軍“大規模反転攻勢”ロシア防御に苦戦も前進
ウクライナ軍による大規模反転攻勢が開始されて3週間が経過した。ウクライナ軍は、ザポリージャ・ドネツク州境、ザポリージャ西部で激しい戦闘を展開している。ウクライナ軍のシェルシェン報道官は、「ウクライナ軍はドネツク州とザポリージャ州の州境で、最大1キロ前進した」と発表した。元米軍特殊部隊員のファーラー氏は、「ウクライナ軍がロシア軍の3つの拠点を砲撃、また、ロシア軍の電子戦システム3基、砲兵システム18基を砲撃で破壊した」と分析した。
ザポリージャ西部は重層的に防御陣地が張り巡らされており、ウクライナ軍による防衛線突破が焦点となる。ウクライナのマリャル国防次官は「ウクライナ軍がウクライナ南部で攻勢作戦を継続し、部分的な成功を収め、獲得した陣地を固めている」と徐々に前進していることを主張した。
ゼレンスキー大統領は21日、ウクライナ軍の反転攻勢が「望んでいたよりも遅い」と英BBCのインタビューで明らかにした。また、ゼレンスキー大統領は、「反攻をハリウッド映画のように、考えすぐに結果を期待する人がいるがそういうものではない」と発言した。ロシア軍が前線に大量の地雷を仕掛けており、除去の対応が遅れている事情をはじめ、ロシア軍のヘリコプター攻撃により、ウクライナ軍の戦車が破壊されていることが、前進を遅らせている主要な要因と指摘されている。
ウクライナが反転攻勢の速度を上げなければならないという圧力は感じていないとして、「一部の人は、これ(戦争)をハリウッド映画のように思い、今すぐの結果を期待しているが、これは映画ではない」と述べた。米シンクタンク・戦争研究所の情報を基礎に戦況を詳報・解説する。
★ゲスト:渡部悦和(元陸上自衛隊東部方面総監)、駒木明義(朝日新聞論説委員)
★アンカー:木内登英(野村総研エグゼクティブ・エコノミスト)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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