陸自「射撃訓練」は号令で 待機中なぜ発砲できた? 元陸将「自衛隊始まって以来」【もっと知りたい!】(2023年6月16日)
陸上自衛隊の射撃場で、18歳の自衛官候補生の男が小銃を発射し、2人が死亡、1人が重傷を負った事件です。男は「教官を狙った」と話していて、当時の緊迫した状況が分かってきました。
■陸自 撃たれた3人の名前公表
カーテンで隠された車に乗る18歳の自衛官候補生の男。15日、容疑を殺人に切り替えて送検されました。
森下泰臣陸上幕僚長:「亡くなられた2名の隊員のご冥福をお祈りするとともに、負傷された隊員の一日も早い回復をお祈りする」
陸上自衛隊は、撃たれた3人の名前を公表しました。
亡くなったのは、菊松安親1等陸曹(52)。八代航佑3等陸曹(25)。また、左足の太ももを撃たれた原悠介3等陸曹(25)は、全治3カ月の重傷だということです。
■男は教官狙い…待機中に発砲か
「教官の菊松1曹を狙った」と供述しているという18歳の男。
まず、横にいた八代3曹の脇腹を撃ってから後ろに立っていた教官の菊松1曹の胸部に2発。その後、原3曹に一発と合わせて4発、発砲したということです。
3人は男を射撃場以外で直接指導する担当ではなく、接点は多くはなかったといいます。
森下陸上幕僚長:「3名については、射場に勤務していたということで、直接個々に対応・指導する立場ではなかったという認識です」
男はどのように犯行に及んだのでしょうか。当時の状況が分かってきました。
逮捕された男:「射撃の順番を待っている時に発砲した」
事件が起きた射撃場。6年前に撮影された映像には、射撃を行うすぐ後ろで数人が順番待ちをしているのが確認できます。
男はこの場所で銃を撃ったのでしょうか。
■元陸将「勝手に動くことは許されない」
事件が起きた「射撃訓練」は、どのように行われるのか。現役時代に陸将を務めた松村五郎氏に話を聞きました。
元東北方面総監 陸将 松村五郎氏:「一般の部隊でも、『号令』がないと動いてはいけないことになってる」
射撃訓練は、基本的にすべての行動が号令をきっかけに行われるため、個人が勝手に動くことは許されないといいます。
まず、射撃場に入ると「準備線」で「銃をとれ」「銃を点検しろ」の号令を受け銃の点検を行います。次に「弾薬受領」の号令で、弾薬置き場から弾倉と銃弾を別々に受け取ります。
松村氏:「バラの弾を数えて『間違いない』というのを確認し受領して、その後本人が弾倉に弾を詰める」
その後、「待機線につけ」の号令で事件があった「待機線」に向かい順番を待ちます。部隊によっては、ここで弾倉に弾を入れることもあるといいます。
そして、「射撃線につけ」の号令で射撃線に向かい、ここで初めて銃に弾を装填し、射撃を行うのです。
松村氏:「待機位置で撃ったということがあったとすれば、今までなかったこと。自衛隊が始まって以来」
■“発砲に5秒必要”統制下でなぜ?
「銃を撃つ所でない」場所で起きた発砲事件。
ミリタリーワークス 木村裕一代表:「僕らの訓練でやってることを考えると、ほぼ不可能です」
陸上自衛隊に17年間所属した木村氏は自身の経験上、「待機線で発砲することは困難」だといいます。
木村代表:「待機しているなかで警戒員が1人います。さらに、逆側には弾薬係がいるんですよね。これ2、3人いるはずなので、そのなかで1人だけ銃を持って、弾倉はめて装填(そうてん)してレバーを切り替えて引き金を引いて、本当に計画的にやったとしても5秒ぐらいかかるんです」
木村氏は5秒もあれば、異変を感じた周囲がすぐに取り押さえるといいます。
警戒員らは、なぜ銃に弾を装填する男を止めることができなかったのでしょうか。
第35普通科連隊 松下竜朗連隊長の式辞:「初心を忘れることなく、日々の教育訓練に打ち込み、自衛官候補生課程を立派に修了してくれることを切に願っている」
事件で使用された、89式小銃の貸与もされた入隊式で、夢の第一歩を踏み出したはずでしたが、わずか2カ月半で今回の事件が起きてしまいました。
松村氏:「自衛隊の中では非常に痛恨ではあるんですけど、対策としてはどういうことができるのか考えていかないといけない」
(「グッド!モーニング」2023年6月16日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
コメントを書く