「原発」「渇水」「砲撃」…ウクライナ・ダム決壊による懸念(2023年6月10日)

「原発」「渇水」「砲撃」…ウクライナ・ダム決壊による懸念(2023年6月10日)

「原発」「渇水」「砲撃」…ウクライナ・ダム決壊による懸念(2023年6月10日)

これがウクライナの大規模反転攻勢でしょうか。

(ロシア プーチン大統領・9日)
「ウクライナ軍の反転攻勢は確実に始まっていると言える」「敵はどの方面への攻勢でも成功を収めていない」

ドイツ製戦車がザポリージャに投入されたとの情報も…。

(防衛研究所 兵頭慎治研究幹事)
「ドイツから提供された主力戦車を用いて、ロシア軍のですね、防衛ラインの突破を試みようとしたという動きであります」

各地でウクライナ軍の大規模反転攻勢が始まったと見られる中で起きたダム決壊…。

サタデーステーションではダムの決壊によって起こる3つの懸念に注目しました。

1つ目の懸念はダムからおよそ120キロ上流の場所にあるザポリージャ原発です。

(ザポリージャ州知事・7日)
「状況は安定しています、原発から半径2.5キロのエリアにおける放射線レベルは正常です」

しかしザポリージャ原発はカホフカダムの貯水池から冷却水を取っているため、決壊により貯水量が下がると冷却水が確保できなくなる恐れがあります。

ウクライナの原子力の専門家は…

(ウクライナ国家原子力規制監督局元役員 オルガ・コシャルナさん)
「IAEAが報告しているように水は数か月分あります、ザポリージャ原発には福島の事故後に購入した移動式ポンプが準備されています」「冷却プールへ水を補充する別の方法もあります」

ただちに深刻な状況になることはないと話す一方で、冷却プールが破壊されるようなことがあった場合こんな最悪のシナリオも考えられると指摘します。

(ウクライナ国家原子力規制監督局元役員 オルガ・コシャルナさん)
「その場合は、間違いなく冷却用の水が足りなくなります」「数カ月ではなく数日レベルです」「一つの原子炉がメルトダウンした場合、ザポリージャ州、ドンバス地方、ロシアのクラスノダール地方に放射性の雲が移動します。クラスノダール地方では300年間農業ができなくなるといいます」

2つ目の懸念は「水不足」です。

原発から50キロ上流のザポリージャ市では、ダムのせき止めが失われたことでこんな現象が…。

(ザポリージャ在住 マクシム・クラフチュクさん)
「いまドニプロ川の川岸にいます、水位がどれだけ下がったのかみてください!あの木が生い茂っているあたりまで水があったんです。生態系にも大きなダメージです」

動画を撮影したポイントを地図で見てみると…普段は“川の中”

水力発電所の貯水池は川底がみえはじめ、この状態が長引くと電力供給に影響が出かねない状況です。

(ザポリージャ在住 マクシム・クラフチュクさん)
「桟橋もご覧のとおり、船をつけることができないので運送が滞っています」「水位は下がり続けています。ここから50キロのところには原発もあり、この先どうなるのか分かりません」

ドニプロペトロウシク州のクリビー・リフ地区では

(クリビー・リフ地区長官)
「危機的な状況です、クリビー・リフ地区では飲み水の7割をカホフカ貯水池から取っています」

農業を営むこちらの家では水道からは水が出ません。

(住民)
「川から汲み上げようと思いましたが、水がなくてできせんでした)」

今は井戸水を使いながら、雨を期待していると話します。

一方、決壊した「カホフカダム」を含むヘルソン州。
ロシアのタス通信によりますと、洪水の影響でヘルソン州17の町などおよそ2万2300戸が水没。取り残されていた人や動物たちが、今もボートで救助され続けています。

(避難してきた住民)
「私は両親とボートに乗り、出発してきました」
「たくさん亡くなっている人がいました」

こうした混乱の中起こる、3つめの懸念が…「砲撃」です。

ダムから直線で60キロほど下流にあるヘルソン市にも洪水の被害は及んでいます。去年からウクライナで支援活動を行っている日本人の中條さん。

(ボランティア団体「ウスミシュカ」 中條秀人さん)
「いまから支援物資を住み続けている方々、高齢者とかに届けに行きます」

ダム決壊後、ヘルソン市長からの依頼を受けすぐボランティアに入りました。ボートで毎日10往復以上していますが…

(ボランティア団体「ウスミシュカ」 中條秀人さん)
「本当砲撃が多いので、ボランティアの方が被災してしまった。私近くにいたんですけど本当怒りと悲しさで…」

こちらのヘルソン市で撮影されたとみられる映像では、ジャーナリストや救助隊らの近くに着弾する様子がとらえられていました。ウクライナ内務省によると、洪水から避難中の砲撃では11人が負傷しています。こうした影響について―。

(ボランティア団体「ウスミシュカ」 中條秀人さん)
「砲撃がはげしくなったら軍の規制とかいろんなことが重なって(ボランティアが)計画通りにいかなくなる」

誰が何のためにダムを決壊させたのでしょうか。

ウクライナ・ロシア双方が責任を押し付けあう中、自然崩壊したとの見方も…。ウクライナ保安局は、ロシア側によりダム破壊が行われたとする兵士の音声を公開しました。

(ロシア兵とされる音声/ウクライナ保安局のSNSから)
「あいつらじゃない、俺たちがやったんだ」「計画通りにはいかなかったが、それ以上の成果を上げた」

専門家は、情報戦のある中、見極めは難しいと指摘。一方で、ノルウェーの研究所は、ダムで爆発があったという揺れを観測していました。

ロシア占領下にあったダムには、去年秋ごろにロシア軍によって爆薬が仕掛けられていたといいます。

(防衛研究所 兵頭慎治研究幹事)
「この事前に仕掛けたあの爆薬が爆発してですね、ダムが、決壊して、その川の下流域にです予期せぬ影響が出た、その可能性もあるんではないかという風に思います」

サタデーステーション 6月10日OA
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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