“脱炭素”と日本 再生可能エネルギー取り組みの遅れ【風をよむ】サンデーモーニング|TBS NEWS DIG
各地で被害をもたらしている気候変動。解決に必要なのが「脱炭素」ですが、日本はいま、世界からその取り組みが問われています。
■花が咲かない
標高約1000メートル、菜の花で有名な長野県・中山高原。ところが…
記者「本来であれば、一面に広がっているはずの菜の花畑ですが、今年は全く咲いていません」
例年、ゴールデンウィークの時期は一面、菜の花が咲き乱れるはずが、今年は花はおろか、茎や葉も見当たりません。
原因の一つとされるのは2022年夏、この高原を襲った異常高温。その影響で夏に発芽する菜の花の芽が出ず、育たなかったからです。
■大雨被害相次ぐ
異常気象がいまや日常となったかのような日本列島。ゴールデンウィーク明けの5月8日も…
西日本を記録的豪雨が襲い、兵庫県伊丹市では川の堤防が決壊し、大量の水や土砂が住宅街に…
記者「川の近くに止めてあった車まで土砂が流れ込んでいます」
車は土砂に埋もれ、天井部分がかろうじて見える状態。市内では川の周辺800世帯以上に一時、避難指示が出されました。
住民「ドアを開けようと思ったら水が入ってくるから開けられへん。ここ(玄関)でバイクと自転車が倒れていた」
また岡山県では大雨で橋を支える橋脚が傾き、路面に亀裂ができて、道路は通行止めとなりました。
こうした極端な気象は、ここ最近、日本だけでなく、世界各地で続いています。
■世界でも極端な気象
5月7日、中国南部、広東省で吹き荒れた凄まじい暴風雨。店頭にあったバイクは倒され、椅子やテーブルも吹き飛ばされます。
タイでは、まだ4月にもかかわらず、観測史上最高に並ぶ44.6度を記録。
またアフリカのコンゴ民主共和国では、5月5日に発生した大雨による洪水で、約400人が死亡。隣国のルワンダやウガンダでも大雨によって、あわせて130人以上が亡くなっています。
■急務「脱炭素」めぐる動きは…
こうした状況を前に、もはや待ったなしともいえる気候変動対策。温室効果ガスの排出抑制、「脱炭素」は一刻を争う急務です。
この現状に専門家は…
東京大学未来ビジョン研究センター 江守正多教授
「世界の温室効果ガスの排出量が、まだ減少に転じていない。どんどん減って、実質ゼロまで減って、ようやく温暖化は止まる。化石燃料に依存した世界のエネルギーシステムを再生可能エネルギーなどのエネルギー源に置き換えていくことが、急速に進まなくてはいけない」
■日本の再生可能エネルギーは
しかし世界的に見れば、再生可能エネルギーの普及は順調とはいえません。その最たる例が、実は日本なのです。
5月、イギリスのシンクタンクは、日本は2022年、1キロワット時の電気を作る際に排出される二酸化炭素の量が、G7で最も多いとの分析を公表。
日本は再生可能エネルギーの比率が低く、導入目標も国際的に遅れていると、厳しく指摘したのです。
実際、振り返ってみれば--
2011年、未曾有の被害をもたらした東日本大震災。この時、日本は深刻なエネルギー不足に陥り、国を挙げて「節電」に取り組む一方、再生可能エネルギーの導入にも努めました。
あれから12年が経ち、発電電力量に占める化石燃料の割合は、76%とG7で最も高く、「脱炭素後進国」とさえ呼べそうな状況にあります。
■再エネを生かせているのか
さらに4月、中部電力、北陸電力のそれぞれの子会社は太陽光や風力発電で作った電気の受け入れを止める「出力制御」を行いました。
電気が必要以上に作られると、バランスが崩れ大規模停電につながる恐れがあるからですが、再生可能エネルギー拡大が求められる中、再エネを無駄にしているという問題も起きているのです。
しかし、再エネの導入は、“脱炭素”に向けて、もはや喫緊の課題。それに遅れを取っているのが日本の現状なのです。そうした中、私たちのエネルギーへの向き合い方も問われています。
■「エネルギー消費」本当に必要な量とは
江守正多教授
「国として見たときの(日本の)エネルギー消費の絶対量っていうのは大きい。必要な快適さを超えたエネルギーと資源の消費をして、CO2を出しているんじゃないかということは多分ある。エネルギー消費を減らすためにやれることは沢山あって、過剰に消費しないということも最終的には重要になってくる」
5月19日に迫ったG7広島サミット。気候変動問題も議題として話し合われる予定です。
そこで日本はどういった姿勢を見せるのでしょうか。
(「サンデーモーニング」2023年5月14日放送より)
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