【報ステ】「あえて“南部から攻撃”情報・心理戦の一環」ウクライナ“反転攻勢”か?(2023年5月1日)

【報ステ】「あえて“南部から攻撃”情報・心理戦の一環」ウクライナ“反転攻勢”か?(2023年5月1日)

【報ステ】「あえて“南部から攻撃”情報・心理戦の一環」ウクライナ“反転攻勢”か?(2023年5月1日)

ウクライナのゼレンスキー大統領は30日、隊員らを前に演説し、大規模な反撃が近いことを示唆しました。
ウクライナ・ゼレンスキー大統領:「親愛なる兵士の皆さん、まもなく最も重要な戦いが始まる。ロシアに自由が奪われた私たちの領土と人々を解放しなければならない」

先月28日、国防相は「準備はほぼ完了した。あとは命令を待つだけ」と述べています。すでに、欧米が供与を約束した主力戦車などの98%がウクライナに引き渡されています。これをもとに、ウクライナ軍は数カ月かけて、部隊の編制を行ってきました。

国境警備隊の中に新たに編成された『鋼の国境 突撃旅団』。反転攻勢の中核を担う部隊の1つとみられます。ウクライナの奪還目標が、激戦が続く東部地域かというと、そうではないとの見方が強まってきました。

ロシアが一方的に併合したクリミア半島で先月29日、ロシア軍の黒海艦隊が使う石油貯蔵庫が激しい炎に包まれました。飛来した“無人機”による攻撃で、石油タンク10基以上が破壊されたといわれています。

公式には、ウクライナ側は攻撃を認めていませんが、先週、ロシア軍が中部の都市に行ったミサイル攻撃への“天罰だ”と言及しています。

一方、ウクライナ軍の報道官は、こんな話もしています。
ウクライナ軍南部作戦司令部・フメニュク報道官:「ロシア軍の兵站が弱体化されたことは、ウクライナ軍による大規模な反転攻勢の準備の一環です」
これは、クリミア半島の石油タンク炎上が“反転攻勢への布石”だったという意味です。

ロシア軍にとってクリミアの基地は、ウクライナ南部で戦い続けるための“兵糧拠点”です。ここがダメージを受ければ、南部全体の補給機能を低下させることにつながります。すでにウクライナ軍が、ヘルソン州のドニプロ川を渡ったという情報もあり、一連の動きは、南部攻勢に向けた“足場づくり”ではないかといわれています。

ウクライナ南部のザポリージャ州。ロシアが実効支配する地域の最前線をとらえた衛星画像。ロシア軍が3重に敷いた防衛ラインが白い点線で示されています。
ミドルベリー国際大学院・フォード研究員:「1列目の溝と、次の“竜の歯”、別名“悪魔の歯”で、装甲車両を足止めします。ロシア軍は、後ろの防衛塹壕から攻撃を仕掛けるでしょう」

“竜の歯”とは、戦車や装甲車の侵入を阻む立体障害物のこと。これが30キロにわたって張りめぐらされていることが、衛星画像から判明しました。

戦車戦を意識した塹壕などの強化は、クリミア半島や東部でも確認されていて、欧米戦車の突破力にロシアが神経を尖らせていることが見て取れます。

ウクライナ・ゼレンスキー大統領:「我々は必ず“反転攻勢”に出て、占領地を解放します。一切の迷いなくやります。これは、私たちがこの戦争の“主導権”を取るための戦いなのです」

◆防衛省防衛研究所の兵頭慎治さんに聞きます。

(Q.クリミア半島は、2014年にロシアが一方的に併合しました。ロシアからすると、そこを攻撃されたのは、ダメージが大きいのではないでしょうか)
ダメージが大きいと思います。ロシアにとって、クリミア半島というのは短期間で併合できた、プーチン大統領にとって成功例で、政治的な象徴である場所であると同時にクリミア半島全体が、ウクライナ南部で戦っているロシア軍の最大の軍事的補給拠点となっています。ここで、こういう攻撃が続くとなると、プーチン大統領にとっては、ダメージが大きいと思います。

(Q.今回の攻撃について、ウクライナ軍報道官は「今回の火災は、大規模な攻撃への布石となる」と述べ、ゼレンスキー大統領は「重要な戦闘が間もなく始まる」と発言。これらをどう読み解きますか)
南部で、本格的な奪還の動きをやろうとすれば、クリミア半島の攻撃は必要になってきます。ただ、あえて「大規模な攻撃をやります」と言う必要があるのかというと、情報戦・心理戦の一環と見ることも可能だと思います。ロシア側の対応をかく乱するために、あえて、南部から攻撃を始めるという素振りを見せながら、場合によっては陽動作戦のような動きとして利用される可能性があるのかなと思います。

(Q.実際には、どんな作戦が始まって、どう行われていくと思いますか)
ロシア東部・南部の支配地域を大規模に奪還しようと思えば、ロシアの軍事所点であるメリトポリを、ザポリージャ辺りから進軍していって、アゾフ海まで到達して分断する。そうすると、クリミア半島からの補給線、そして東側のロシア国内からの補給線を分断できます。また、その後、ロシア軍が東部から南部、南部から東部へ転戦することも難しくなってきます。ただ、ここは、すでにロシア側が守りを固めています。兵力も集中させていますので、真正面から突破していくのが難しければ、ほかの地域から手をつけていくという可能性もあるのではないかと思います。

最近だと、ヘルソン州のドニプロ川を越えて、一部のウクライナ軍が、ロシアの支配地域の中で、軍事的拠点を築いているという見方もあります。ロシア軍の守りが手薄なこの辺りから進軍をして、奪還の動きを強める可能性もあります。ただ、これも陽動作戦の可能性があって、ここから攻める素振りを見せながら、ロシア軍をここに引き付けて、メリトポリの守りを手薄にしていくという可能性もあるので、まだ、どこから始まるのか。情報戦・心理戦の段階にあると思います。

(Q.東部での激闘を伝えてきましたが、東部よりも南部を重視しているという可能性が高いのでしょうか)
そうですね。ロシア側もかなり長い時間をかけて東部で戦闘を続けてきましたが、戦況が膠着状態に陥っています。だから、可能性としては、南部の奪還をウクライナ側は進めていきたいのではないかと思います。

(Q.クリミア半島の領土奪還。そこまで進軍して領土奪還を目指すということはありますか)
欧米諸国からの武器のレベル、現在、ウクライナが保有する兵力からすると難しいと思います。それよりも補給拠点であるクリミア全体を攻撃しながら、軍事的機能を低めて、ウクライナ南部で戦闘するロシア軍の勢いを削いでいく。その可能性が高いと思います。いずれにしても、いつ、どこで、どんな形でウクライナ側が反転攻勢を始めるのか、注目していきたいと思います。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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