金品受領問題めぐる関西電力の元役員ら3人 検察審査会2回目の審査で「起訴に至らない」と議決
多額の金品受領問題などで、検察が不起訴にした関西電力の元役員ら3人について、検察審査会が2回目の審査で「起訴に至らない」と議決し、刑事責任は問われなくなりました。(取材・報告=阿部頼我記者)
市民感覚を取り入れる目的で導入された検察審査会制度ですが、理想と現実には大きなずれがある結果となりました。
関西電力をめぐっては2019年に八木誠前会長(73)らが原子力発電所がある福井県高浜町の元助役から多額の金品を受け取っていたことが発覚しましたが、大阪地検特捜部は旧経営陣9人全員を嫌疑不十分で不起訴にしました。
これに対し、市民団体から申し立てを受けた検察審査会は2つの容疑について起訴すべきかどうか、審査していました。
一つは森詳介元会長と八木誠前会長・岩根茂樹元社長の3人が、金品を受領した元副社長の追加納税の負担分を会社に肩代わりさせた業務上横領の疑い。
もう一つが電気料金の値上げを理由にいったんカットした役員18人分の報酬の補填を決め、会社に損害を与えた特別背任の疑いです。
今日の議決で検察審査会は「関西電力の隠ぺい体質や一部の幹部だけで高額な報酬の支払いを決定できてしまう手続きの透明性の欠如を許せない」という市民感覚に理解を示しました。
しかし、「説明責任については、関西電力が旧経営陣らを相手に現在起こしている民事裁判の場で明らかにするべきで、刑事責任を問うことは難しい」として、「起訴には至らない」と結論づけました。
現在の検察審査会は司法の判断に市民感覚を取り入れるため、一般市民を審査のメンバーに選ぶなど2009年に制度が改革され、審査が行われるのは2回までです。
今回の問題では、検察審査会が1度目の審査で「起訴すべき」と判断していましたが、2度目の審査では、審査会のメンバーが入れ替わり「起訴には至らない」と判断が覆りました。一連の問題の捜査は終結することになります。
今回の判断に対し、森元会長らの弁護団は「市民感情に基づく判断ではなく、証拠に基づく適正な判断だったと思う」とコメントしています。
強制起訴制度が始まって14年が経ちますが、過去に強制起訴に至ったのはJR福知山線の脱線事故や明石市の歩道橋事故など、わずか10件でそのハードルは極めて高いことがわかります。
関電の隠ぺい体質や不正の存在を指摘しながらも、最終的に“起訴すべき”と判断することができなかった。今回の議決はその難しさを象徴するような事例であると感じました。
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