「コミュニティフリッジ」存続の危機 生活困窮者に直撃「また切り詰める生活を…」【Jの追跡】(2023年4月9日)
値上げの春。物価高騰の影響が特に深刻なのが、ひとり親世帯などの生活困窮者。そうした人たちをサポートするのが「コミュニティフリッジ」。公共冷蔵庫と呼ばれる新たな取り組みです。
しかし、先月、存続の危機に…。コミュニティフリッジの今を追跡しました。
■利用者「ありがたい」「心の余裕ができた」
埼玉県草加市にある、激安で人気のローカルスーパーに向かいました。
食品ロス削減のために賞味期限が近いなど、訳あり商品を多く取り扱っています。
この店一角にあるのが、市の商工会議所が運営するコミュニティフリッジ(公共冷蔵庫)です。
入り口は施錠されていて、登録者は専用のアプリで開けることが可能。
入ってみると、およそ3坪のスペースに、この日はお菓子やレトルト食品、生鮮野菜、冷凍食品や洗剤などの日用品が置かれていました。
支援を必要とする生活困窮者は、時間や人目を気にせず、24時間都合が良い時に無料で受け取ることができます。
先月から利用しているという女性は、次のように話します。
女性:「ありがたいですね。こういうのやっていただけると助かります」
子ども1人のシングルマザー:「今月『やばいな』『しんどいな』っていう時に、もらった食材があったとか。なんとか乗り切ったり」
この日も、多くの利用者がいました。
現在、児童扶養手当の受給者や多子世帯など450人以上が登録、物価高騰の影響からか、ここ4カ月で100人以上も増えたといいます。
この日、2人の子どもと一緒に来ていた女性は…。
子ども5人の母親(40代):「うち子どもが5人いるので、すごく助かってる。この上に3人子どもがいるので」
相次ぐ値上げは、育ち盛りの子どもがいる家庭を直撃。
子ども5人の母親:「いつもの食費の倍くらいになる。お米の減りが早いし、食べる量も増えてきてるので余計に」
この日は、値上げが続く卵、クッキーやこんにゃくなどを持ち帰りました。
こちらは、8歳から22歳まで、なんと子どもが7人という大家族の夫婦。夫はドライバー、妻はパートをして、収入が月40万円だといいます。
子ども7人の夫婦:「(Q.食費はどれくらいかかる?)10万は超えちゃう」「子どもたちのおやつが無理とか、削減するのを減らしてあげられるから」
この日は、子どもたちのためにと、ビスケット4箱を持ち帰りました。
週に1回利用しているという、3人の子どもを育てるシングルマザー。
子ども3人のシングルマザー(40代):「今までは、買い物に行っても必要最低限だけ買ってたんですけど、ここでもらえる分、子どもたちに『きょうは好きなの買っていいよ』とか。お菓子は、ぜいたく品みたいになってたのが、心の余裕ができた」
月15万円の収入でやりくりするために、ある節約術をしているといいます。
子ども3人のシングルマザー:「スーパーに行く時は、おなかいっぱいにして無駄なものは買わない。おなかすいてる時に買い物行くと色々欲しくなっちゃうし、買いたくなっちゃう」
この日は、玄米と留守番をしている子どものために、ビスケットとまんじゅうを持ち帰りました。
■近隣の地域にも…広がる“支援の輪”
置かれている食料品は、企業からの寄付などによるもの。その支援の輪は広がっています。
この日、持ち込まれたのは大量のパン。実はこのパンは、先月から食料品の寄付を始めた会員制大型スーパー「コストコ」の商品です。
コストコ新三郷倉庫店 佐藤健史副店長:「パンは、消費期限の前日に店頭から引き上げることになっている」
パンの消費期限は、およそ3日。消費期限が当日になったものを寄付しています。
さらに、取り組みを知った近所の住民からも。大量のわさび菜を持ち込んだのは、草加市内に住む吉川正泰さん。
吉川さん:「畑を借りて、家庭菜園をやっていまして」
近隣の地域にも、支援の輪が広がっています。
■スーパー閉店で“撤退”「少しでも早く再開」
しかし、先月、ある深刻な問題が…。行われていたのは、全品50%オフの閉店セールです。
実は、公共冷蔵庫が置かれているこのスーパーが、経営上の問題で閉店することに…。スーパーの一角を借りているコミュニティフリッジはどうなるのか?
運営している、草加市商工会議所は…。
草加商工会議所青年部 高橋一也専務理事:「スーパーの敷地の一角に置かせてもらっているので、スーパーと一緒に撤退となってしまう」
3月中に、この場所での運営は終了。ただ…。
高橋専務理事:「生活に密着していることですので、少しでも早く再開するのが、一番重要だと思っています」
■利用者の切実な事情「また切り詰める生活を」
「3月末で一時休止」という事態に…。
子ども1人のシングルマザー(20代):「あーめちゃめちゃ困りますね」
月に1回は利用するという50歳のシングルマザーには、切実な事情が…。
障がい児を持つシングルマザー(50代):「うちは障がい児がいるので。定職につけないですよね。(子どもが)体調崩しやすいので、定職は難しいということで。週に2回程度だったら働ける場所を探して、週に2回働いている」
11歳の子どもは障がいを持ち、定職につけない状態といい、収入は、障がい児福祉手当をいれても月10万円程度。ここの休止は、深刻な問題だといいます。
障がい児を持つシングルマザー:「お正月のおせち料理的なものをここでもらえたので、心が温まりました。また切り詰める生活をしなきゃいけないなと思います」
夫婦で5人の孫の面倒を見ているという武田清子さん(57)。一時休止を聞いて、駆け付けたといいます。
武田さん:「ここは、ここで無くなると。つらい部分もあるな」
実は以前、武田さんの自宅を取材。事情があって、長女の子ども2人、次女の子ども3人、2歳児から高校生までの5人の孫と暮らしています。
この大家族にも、物価高の影響が…。
武田さん:「食事は、一食でも6合とか7合とか炊くので。以前より大変ですよね。考えて、一食一品だけとか工夫しないと」
そして、高校2年生の息子と訪れていたのが、3人の子供を育てるシングルマザー、風間さん(42)。
風間さん:「ここが一回休業になるっていうので、それはまずいっていうので、きょう来たんですけど」
女手一つで、3人の子を育てる風間さんにとって、ここは“特別な場所”です。
風間さん:「ここに来ようって言うと、(長男が)一緒に来てくれる。親子の交流の場。ちょっとした楽しみ」
この日、持ち帰ったのは、クッキーと玄米、サケの切り身とレトルトカレーです。
■再開を願う利用者…「笑顔のために」
翌日、風間さんの自宅にお邪魔しました。
風間さんは、3年前に離婚。現在は、恥ずかしがり屋の小学2年生の長女と小学4年生の次男。そして、高校2年生の長男との4人暮らし。
保育園でパートとして働く風間さん。児童扶養手当などを入れても、月の収入は20万円以下です。
風間さん:「フルーツが買えないんです。なかなか高くて。バナナも値上がっちゃったので」
昼食の準備をしていると、春休み中の小学生の次男と長女がお手伝い。
この日のメニューは、下の子2人のために、コミュニティフリッジでもらったお米でオムライスを作りました。
風間さんと長男は、こちらももらったパスタとバジルソースを使ったジェノベーゼ。それと、焼いたサケの切り身。
大切な拠り所コミュニティフリッジの一時休止について風間さんは、次のように話します。
風間さん:「ちょっと食材をもらえるだけで、その分をちょっとずつためていけば、おもちゃを買ってあげられるので、すごい助かってる。子どもたちの笑顔のためにぜひ(再開してほしい)。私の笑顔のためか。子どもが笑っていると笑える」
3月末で一時休止となってしまったコミニュティフリッジ。現在、駅前や他のスーパーなど別の設置場所を探し、一日も早く再開する予定だといいます。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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