救難信号なく「相当切羽詰まった状況に」漂流物からみえる“緊急事態”陸自ヘリ消失(2023年4月7日)
6日に消息を絶った陸上自衛隊第8飛行隊の多用途ヘリコプター『UH60JA』。陸海空が24時間態勢で捜索していますが、行方が分からない10人の手掛かりは見つかっていません。
宮古島海上保安部・山添岳大警備救難課長:「夜間日没後、視界が悪いなか、目視だけでは見落とすので、レーダーやサーチライト、赤外線カメラ等あらゆる手段を用いて捜索にあたっている」
ヘリが消息を経ったのは、宮古島分屯基地を離陸から10分後。宮古島を北上した後、南西方向に旋回し、伊良部島の北側にさしかかったところで、レーダーから忽然(こつぜん)と消えました。その2分前には、空港の管制室へ交信があったことが確認されましたが、緊急性を伺わせる内容ではなかったといいます。
それからの2分間に何がおきたのか。当該ヘリとみられる機体を目撃した人は“ある違和感”を感じたといいます。
当該ヘリとみられる機体の目撃者:「訓練でよく見る高さより、少し低めだった。色も緑と茶色と分かるような低さで飛んでいた。大丈夫かなと思っていた。低めに飛んでいるから、特殊な訓練でもしているのかなと。珍しいなとは思った」
住民が目撃したのは午後3時50分ごろ。消息を絶つ5~6分前、ヘリは普段とは違う“低空飛行”をしていたというのです。
これまでの捜索で、未使用の救命ボートや、“くの字”に折れ曲がった、スライド式のドアとみられるものなどが見つかっています。救命ボートは、このヘリに搭載されていたもので間違いないことが分かりました。
漂流物の写真を見た、元陸上自衛隊東部方面総監・磯部晃一氏はこう話します。
磯部氏:「救命浮舟(ボート)が、そのままの状態だったのが一番驚いた。通常、不時着水すると、救命浮舟を展開して乗組員は乗る。それがこの状態ということは、かなり対応のいとまがなかったのではないか。(Q.(“ドア”がぐにゃりと曲がっている。結構な衝撃があったのか)この曲がり具合だと、ある程度の衝撃があったのではないか。不時着水で、オートローテーションという自由降下でおりて、スピードを落として軟着陸する降り方をするが、それをしていれば、機体にそれほど大きな損傷は出ないのかなと」
通常、ヘリから緊急脱出が行われた際は『救難信号』を発しますが、今回、それも確認されていません。
磯部氏:「緊急事態が上空で発生した場合には、機長がすぐに管制塔に緊急事態発生の通報をする。もしされていないなら、相当、切羽詰まった状況になったのではないか」
当時、天候は落ち着いていたため、機体に何らかの不具合が起きたか、または何らかのミスが原因として考えられます。
このヘリはアメリカ軍の主力ヘリ『ブラックホーク』を基に、自衛隊仕様に設計されているものです。エンジンが2基搭載されているため、片方のエンジンにトラブルが起きても飛行が可能。高い安定性がこのヘリの特徴でもあります。しかも、先週、定期的に行われている整備を終え、その後に行われた飛行でも問題は見られなかったといいます。
自民党・小野寺元防衛大臣:「発見された部品を見ると、かなり急激に衝突を海面にした事案であったという認識は、共通だったと思います。あれほどバラバラになるような激突は、あまり想定されませんので、なぜそういうことが起きたかは、救助が終わった後に解明してほしい」
現時点で人為的ミスを示すような痕跡や情報は何も出てきていません。防衛省は、事故調査委員会を立ち上げ、原因の特定を進めています。
【高まる中国の脅威 今も…】
今回、ヘリが消息を絶った海域は、中国の動きが非常に活発になっている場所でもあります。尖閣諸島の周辺海域で日本の領海内に侵入した中国海警局の船の数を見てみます。2012年9月には、日本政府が尖閣諸島を国有化。時を同じくして2012年の夏ごろから、急激に領海に侵入する数が増えていき、先月も20隻と多い状態が続いています。なかでも、先月30日から今月2日にかけて、80時間以上にわたって侵入することもありました。
ヘリに搭乗していた坂本雄一師団長も中国の脅威に触れていました。そもそも第8師団とは、熊本に司令部があり、熊本・宮崎・鹿児島の3県の防衛警備や災害派遣任務にあたっています。ただ、有事の際には南西諸島まで展開するということです。通常の警備区域を超えて展開できるようにしたのが2018年。“機動師団”として全国で初めて組織改編を行いました。
“機動師団”は、高い機動力と警戒監視能力を備えていて、航空機などでの輸送に適した戦闘車などの装備を保有しているということです。簡単にいうと、機動力を持って、有事の際に駆け付けやすくなるということになります。
組織改編の理由について、防衛省防衛研究所の高橋杉雄さんは「中国の軍事力の近代化や高圧的で一方的な行動が頻繁に行われるなか、南西諸島の防衛を強化するため」としています。さらに「中国やロシアなど、軍事的な威嚇をためらわずに行う国々に対して、自衛隊は強い危機感を持っている」と話しています。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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