京都川下り 転覆船に“無線なし” 通報まで30分以上…電波悪く「正確に聞き取れず」(2023年3月30日)

京都川下り 転覆船に“無線なし” 通報まで30分以上…電波悪く「正確に聞き取れず」(2023年3月30日)

京都川下り 転覆船に“無線なし” 通報まで30分以上…電波悪く「正確に聞き取れず」(2023年3月30日)

 京都の保津川下りで船が転覆した事故。後続の船から撮影した事故直後の映像を入手しました。また、撮影者の証言から、「救命胴衣」と「無線」が機能していなかった可能性が浮上しています。

■目撃者の証言「あぜんとして立っていた」

 番組が入手した、事故直後の現場の映像。事故があった船の後ろを航行していた船から撮影されました。映像をよく見ると、川岸に黒い服を着た人が立っているのが分かります。

 別の船から撮影した人:「あぜんとして立っていた。微動だにしていなかった。多分、頭の中、真っ白ですよね」

 そう話す撮影者の女性の前には、その後も信じられない光景が…。

 別の船から撮影した人:「一人の方は救命具がなくて、顔の部分だけ浮いていた。『救命胴衣の使い方を教えてもらってなかった』と怒っていた」

 事故直後の現場で何が起きていたのか。女性の証言から、船の運航組合のずさんな管理体制が浮かび上がってきました。

■作動せず…手動式の救命胴衣「説明なし」

 28日、京都府亀岡市の保津川下りで起きた転覆事故。船は「大高瀬」と呼ばれる、川幅が狭く流れが速い難所で、岩にぶつかって転覆。乗っていた全員が川に投げ出されました。

 救助された乗客は、次のように話します。

 救出された乗客:「亡くなられた方もおられる。死ぬかなと思いました」「(Q.水に落ちた時、自力で岸に上がった?)流れに身を任せて、自然に浅瀬に着くのを待った」

 船に乗っていたのは、子ども3人を含む25人の観光客と、船員4人の合わせて29人です。

 乗客は全員救助されましたが、船頭の田中三郎さん(51)が死亡。40歳の船員が、いまだ行方不明となっています。

 保津川遊船企業組合:「この度は、大変ご迷惑をおかけしました。心よりおわび申し上げます」

 29日、船を管理する保津川遊船企業組合が会見を開いて謝罪。その一方で、「安全対策はしっかり行っていた」ことを強調しました。

 保津川遊船企業組合 豊田知八代表理事:「(Q.救命胴衣は皆、装着していた?)はい」「(Q.客に救命胴衣の使い方の説明は?)はい、説明します。すべての船頭が救命胴衣を渡す時、装着方法を実演で説明する。船頭も客も装着」

 ところが、番組が取材を進めると、組合の説明とは異なる実態が浮かび上がってきました。

 別の船から目撃した人:「救命具は、イメージとしてはウエストポーチみたいなもの。ベルトが緩かったら、きつくしないといけないが、やり方が分からず、たるんだ状態の人も私の乗っていた船にいた。なので、そんな状態で着けていて、途中で脱げちゃったとか。救命具が川に浮いていて、2個くらい見た。開いていない状態で浮いていた」

 事故があった船のすぐ後ろを航行する船に乗っていた女性。現場で目撃したのは、水面を漂う複数の救命胴衣でした。さらに…。

 別の船から目撃した人:「一人の方は、救命具がなくて顔の部分だけ浮いていた。『救命胴衣の使い方を教えてもらってなかった』と怒っていた。娘さんは、『引っ張ても全然出ない』『作動しない』と。私も乗った時に、説明なかった」

 船頭や客が装着していた救命胴衣はベルト型で、ひもを引っ張ると中の空気が膨張する手動タイプと、水を感知すると、自動で膨張するタイプがあります。

 ところが、手動タイプの使用方法の説明がなかったうえに、川に落ちた際には使えなかったというのです。これについて、組合側は…。

 豊田代表理事:「(Q.救命胴衣の使い方の説明は?)それはちょっと…説明がなかったという話がありましたか?そうですね、そういうことは、私たちでは必ずしているということになってますから。もし、そういうことがあるのであれば、これは至急、どこの誰がということを調べなければならないと思っています」

 さらに、救命胴衣の機能性についても質問すると…。

 豊田代表理事:「(Q.(手動で)引っ張るタイプの安全性は?)救命具は問題ない商品を購入させて頂いている。ただ、ちょっと問題ある懸念であれば、手動が急に落ちたタイミングで引っ張れるのかというのは懸念していた」

 そのため、組合は水を感知すると膨張する自動型への切り替えを進めていたといいます。

 豊田代表理事:「同じベルト式スタイルなんですけど、引くもの(手動)と自動膨張、2通りあります。それが船の中で混在していた。船頭はいまだに手動です」

■通報まで30分超…電波悪く「正確に聞き取れず」

 事故を起こした船と組合が連絡がうまく取れず、消防に通報するまで、30分以上かかっていたことも明らかになりました。

 別の船から目撃した人:「圏外だったんですね、そこの場所が。どの携帯会社も圏外。そしたら『僕ら無線を持っていなくて』と、船頭さんが言うんですよ。『ないの?』みたいな感じで、思わず言ってしまったし、何でないの?みたいな。じゃあ、どうやって連絡取るの?」

 その後、事故を起こした船の2つ後ろを航行していた船が、無線を積んでいたため、何とか組合に連絡しました。ところが…。

 豊田代表理事:「正確な情報を聞き取れなかった。どういった状態かの確認に手間取った」

 現場は山に囲まれていて、空から撮影していたカメラマンでさえも、連絡に苦戦するほど通信環境が悪い場所でした。

 国交省が2013年に策定したガイドラインには、「すべての船に携帯無線機を設置する」ことが規定されています。

 10年経っても、なぜ設置されなかったのでしょうか。

 豊田代表理事:「なかなか有効な無線機がない。保津峡の山の奥で使える無線機がないことが一つあって。すべてに通らなきゃ意味が(ない)、すべての場所で届かなければ、難しかったという判断があって。そこが問題だったと思ってます」

 これまで有効な連絡手段を10年間も見つけられなかったという組合側。結果的に、通報が30分以上遅れることとなりました。

 豊田代表理事:「現状の把握をしっかりして、そこから連絡する体制が遅れていたことに関しては、反省すべきところだと思っています」

 警察は事故の原因を調べるとともに、30日も行方不明になっている船員を捜索する方針です。

(「グッド!モーニング」2023年3月30日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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