「地理的状況違い一律は難しい」川下り船“法律の対象外”安全確保は?保津川転覆事故(2023年3月29日)

「地理的状況違い一律は難しい」川下り船“法律の対象外”安全確保は?保津川転覆事故(2023年3月29日)

「地理的状況違い一律は難しい」川下り船“法律の対象外”安全確保は?保津川転覆事故(2023年3月29日)

京都の保津川で、川下りの船が転覆した事故当時の状況が徐々に分かってきました。

転覆した船の10分後に出発した後続の船の乗客が撮影した映像を見ると、陸橋をくぐって、しばらく進むと、岸辺に立ち尽くす人の姿が現れます。
後続の船の乗客:「人が救命道具、黄色い物を身に着けて立っていた。ちょっとまた進んだら、何も身に着けてない人とか、ずぶ濡れの人たちがいっぱいいて、『助けてください』という声で、座礁したのかと初めて気づいた。そのとき山と山の間で圏外だった。誰も連絡がつかない状態になり、船頭さんたちが無線を本当は持っているみたいなんですけど『僕らは、きょう持ってないんで』と言って」

さらに後続の船が来るまで20分ほど。その船は無線を積んでいたので、そこで、ようやく通報ができたといいます。

29日の会見では、当該の船に無線はなかったことが明らかにされました。また、通信環境が悪く、会社が事故を把握するまでも時間を要したといいます。
保津川遊船企業組合・豊田知八代表理事:「(Q.事故発生から30分以上経っての通報。どう受け止めているか)現状の把握をしっかりして、そこから連絡するという体制が遅れていたことに対しては、反省すべきだと思っています」

保津川遊船企業組合・井本 哲也運航管理理事:「(Q.国交省のガイドラインでは“電波がつながらない場合は携帯会社等に相談”とありますが)一応、相談はさせていただいております。(Q.できることは、すべてやっていた)そうですね。また新しく電波が立ちそうなのでとか、そういう形で、話が前に進まない部分はありました」

その場に居合わせた人は、救命胴衣についての混乱の声を聞いていました。
後続の船の乗客:「救助された方を励ますために声かけたりしてたのですが、『使い方を教わってなかった』『ひもを引っ張っても、ちゃんと作動しなかった』そういう声が結構あった。(Q.乗船時に救命胴衣の説明は)それが私たちも『着けろ』とは言われたのですけど、どうやって使うかは何も聞いてなかった。背中側に着けている人もいれば、前側に着けている人もいれば、だらんと垂れた状態だったり」

保津川遊船企業組合・豊田知八代表理事:「(Q.救命胴衣の使い方、乗船者には説明がなかったという人も)私たちでは、必ず説明しているということになってますから。もし、そういうことがあるなら、至急、どこの誰がかを調べないといけない」

そもそも転覆の原因とされる“空舵”とは、どのような状況をさすのでしょうか。
保津川遊船企業組合・豊田知八代表理事:「“舵”とは、水をかく、水を抱えて船の方向を変えること。水をかけなかった空振りみたいなものです。空舵してはいけない。舵持ちの鉄則です。空舵した場合、体勢をすぐ戻して、もう一回動かさないといけない。瞬時に修正しなきゃいけない」

長野県の天竜川で川下り船を運営する会社に、空舵とは、どういうものなのか見せてもらいました。
天龍ライン遊舟・半崎信弘社長:「波で船の前の方が沈むと、櫂が上に上がっちゃう。波のところこぐ。波が沈んだところをかけば、空をかく。(Q.本来、抵抗があるものがないから)そうですね、空を切っちゃう」

今回の事故で、船頭の田中三郎さん(51)が死亡。40歳男性の行方が現在も分かっていません。

保津川遊船企業組合・豊田知八代表理事:「(Q.実際に船員や乗客が川に落ちた後の対応マニュアルや訓練はしていた)消防の訓練をするということをやっていたんですが、いろいろな消防の計画のなかで、できていないことが続いていました。大体8年ぐらい前までは、毎年、救助訓練をしていたんですけど、そこからやるときに、急に緊急が入ったりとか、いろいろあって、できないことが続いたところで、少し途切れてしまった。そしてコロナ禍になって、やってなかった。ちゃんとチェックをして、確実にしているのかという確認とか、船の今の状態をちゃんと把握して、もし、できていないのであれば指摘をして、直させるまでできていないので、それをしなければダメと思っています」

29日は、運輸安全委員会の調査官も現地を視察。30日も、午前7時から同じ体制で捜索が続けられる予定です。

◆船の安全管理はどうなっているのでしょうか。

船の種類によって、法律の建付けが違います。観光船や屋形船には『海上運送法』という法律で、安全管理規程の作成や安全統括管理者を決めて、国土交通省に届け出することが義務付けられています。違反した場合は、罰則です。

川下り船など、人が漕いで進む櫓櫂船(ろかいせん)は、こうした法律の対象外です。船の状態に問題がないか、定期的に点検を義務付ける『船舶安全法』という法律はあります。

国土交通省は、2011年、5人が亡くなった天竜川の川下り事故を受けて、事業者に対して安全対策のガイドラインを作成。このガイドラインにのっとって、事業者ごとに安全管理体制を具体的に作っています。

例えば、保津川遊船企業組合では、運行管理・航路管理などで各担当者を選定。船頭の基準を決めて、「経歴15年以上」または「経歴10年以上でも、技能は15年以上と同等以上」の人を必ず1人乗せるなどとなっています。違反しても罰則はありませんが、29日の会見によりますと、「年に1回、近畿運輸局のヒアリングを受けて、問題があればチェックを受ける」ということです。

海難事故に詳しい東海大学海洋学部の山田吉彦教授は「川の状態は毎年変わり、地理的状況なども違うため、法律で一律に罰則を作るのは難しい。水難事故の原因は、人為的ミスが多いため、重要なのは、事業者による人材教育の徹底」と話します。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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