京都市 建物の高さ規制を大幅緩和へ 景観政策が大転換 子育て世代や企業の誘致図るため
京都市は29日、都市計画審議会を開き、建物の高さ規制を大幅に緩和する案を打ち出しました。京都の街並みを守ってきた景観政策が分岐点を迎えた背景には何があるのでしょうか。
京都市職員「今回の都市計画変更の内容についてご説明します」
29日行われた京都市の審議会。議論されたのは建物の高さ規制を大幅に緩和する案です。
千年の都、京都。昔ながらの景観を残す街並みが国の内外から観光客を惹きつけています。京都市はこうした景観を守るために、2007年に新景観政策を執り行いました。
「京都らしい」街並みを守るため、屋外の看板や点滅するネオンを禁止にしたほか、建物の高さは最も厳しいエリアで10メートル以下に制限しました。
この日新たに出された京都市の案では、京都市内の西側エリア、阪急沿線の高さ規制を緩和するほか、京都駅付近のエリアでも企業誘致を図る内容です。さらに、大きく変わるのがー
坂梨俊記者「こちら山科区です。ご覧のようにビルの高さは10階以下に現在、抑えられているんですが、制限が緩和されてタワーマンションなども建つようになるということです」
1階部分にテナントを設けるといった一定の条件を満たせば、山科区の一部のエリアで高さ規制を完全に撤廃。タワーマンションが建つ可能性もあるのです。
景観に大きな影響を与える、今回の見直し案ですが、京都市の狙いとはー
門川大作市長「結婚期、あるいは子どもが誕生された時に住宅を求めて出ていく傾向があります。景観政策は骨格をしっかりと守りながら、若い人が住みやすい、購入しやすい住居を創造していく」
京都は学生の街ということもあり、20歳前後の人口は増加している一方で、子どもや、その親世代はこの5年間で減少。その3割が京都市を離れる理由に「住宅の事情」を挙げているのです。財政難にあえぐ京都市にとって、納税を担う子育て世代の住む場所の確保は喫緊の課題です。
2014年から京都府の地価の調査に携わった専門家は、土地の価格が上がり続ける京都特有の事情を指摘します。
不動産鑑定士の森口匠さん「京都でセカンドハウス(別荘)的にマンションを買って、老後の生活を京都で楽しもうという需要が比較的ありましたね。京都府外からマンションを欲しいという需要がある。そうするとマンションの価格が上がるので、京都市民は手が出なくなる」
大阪へのアクセスも良い山科区に居住地を確保することで、平均的な年収のファミリー層を取り込めると、京都市は期待しています。
森口さん「比較的、山科区は京都市内の方では安い方なので高層マンションなども事業としてはやりやすい。京都市内(中心部)で買えない人たちが山科で買うということはある」
京都市民は―
「山科区だったらいいんじゃないですか。清水寺の横に建ったらあれですけど」
「交通がだいぶ便利になってきているし、仕方ないかなと。低い昔からの建物もあるみたいやし、うまいこと共存できたら」
反対する市民グループ「熟慮と検討をしていただきたい」
しかし、市民の中には反対する意見も根強く残っています。
反対する市民グループ「子どもから大人に成長する過程で、本当にここ京都に住んでよかったという町になるような都市計画、そういう大きなビジョンにのっとった形が大事だと思っています」
新たな景観政策はこの日の審議会で議決されれば、市長からの告示を経た後に建物の高さ規制が緩和されるということです。
歴史と文化が根付く京都の街並みは、時代の変化に応じて、どのような姿に変わっていくのでしょうか。
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