【ノーカット】「ウクライナが納得するまで支援」駐日フランス大使が語った 欧州の立場とアジア安保(2023年3月3日)

【ノーカット】「ウクライナが納得するまで支援」駐日フランス大使が語った 欧州の立場とアジア安保(2023年3月3日)

【ノーカット】「ウクライナが納得するまで支援」駐日フランス大使が語った 欧州の立場とアジア安保(2023年3月3日)

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻から1年となるのを前に、テレビ朝日は先月20日、フィリップ・セトン駐日フランス大使に単独インタビュー。
侵攻を終わらせるためにはどうしたら良いのか。国際社会におけるフランスの立場を聞いた。
また、5月のG7広島サミットに向けて日本に期待すること、アジアの安全保障や日仏の防衛協力にも話が及んだ約30分のインタビューを全編公開する。

(取材:テレビ朝日外報部 所田裕樹)

■ロシアによるウクライナ侵攻開始から1年 「支援継続が必要」

Q.2月24日でロシアがウクライナ侵攻を開始してから1年。侵攻を終わらせるためにはどうしたら良いのか?

理論上は侵攻を終わらせるのは単純なことです。ロシアが攻撃を止め、軍隊を撤退させれば良いだけの話です。
不幸なことに私たちはその段階にいないので、ウクライナの領土の一体性と主権を守るために支援し続ける必要があります。そして、その支援はウクライナが納得する和平交渉の条件が整うまで続けるべきです。

■フランスの外交戦略は?「ミンスク合意をよみがえらせようと…」

Q.フランスはロシアとウクライナの和平交渉に深く関わってきた。ミンスク合意の仲介役としても関わっている。ウクライナ危機におけるフランスの戦略は?

フランスはドイツとともに2015年からミンスク合意の履行を支援するために深く関わってきました。この仕事は難しいものでしたが、2022年1月になって、関係国間の対話を再開できました。その上、ロシアの国連代表は「ミンスク合意がウクライナでの問題解決で唯一認められた国際的な枠組みだ」とまで言いました。

しかし、その数日後にロシアのプーチン大統領はドネツクとルガンスク人民共和国の独立を承認し、そのさらに数日後、ウクライナに対する軍事進攻を決断しました。
フランス大統領はドイツの首相とともに戦争へとエスカレートさせないよう、ミンスク合意を復活させようと奮闘しました。これが去年2月のマクロン大統領のモスクワ訪問の目的でした。しかし、これらの努力は実りませんでした。

侵攻当初から、そして今もフランスは、当然ロシアによるウクライナ侵攻を非難し、独立と主権のために抵抗するウクライナを支援しています。

※ミンスク合意 
2014年に勃発したウクライナ東部紛争をめぐり、ロシアとウクライナ、ドイツ、フランスの首脳が2015年2月にベラルーシの首都ミンスクでまとめた和平合意。双方の停戦や親ロシア派勢力が占領する2地域に事実上の自治権にあたる「特別な地位」を与えることなどで合意されたが、ロシアがウクライナは合意を履行せず、武力解決を試みていると主張し圧力を強めていた。

■「ロシアの崩壊は願わない」マクロン大統領の発言の真意は?

Q.フランスのマクロン大統領は2月18日の地元紙インタビューで、ロシアの敗北を願うが崩壊は望まず、そんな立場をとらないと述べた。フランスはロシアとウクライナ双方にいつも距離をとっているように見える。大使はマクロン大統領のこの発言についてどのようにお考えか?

私たちはロシアと戦争しているわけではなく、ロシアがウクライナと戦争しているのです。明確なのは攻撃国がロシアで、被害国がウクライナだということです。
私たちはウクライナの防衛を支援していますが、我々がロシアと戦争しているわけではありません。

■「軽戦車AMX-10RCはまもなく届く予定」

Q. そういうこともあってドイツが戦車レオパルトを供与する一方で、フランスは戦車の供与をためらっているのか?

その言い方は違うと思います。フランスはためらっていたわけではありません。ためらいがあったのはフランス側ではありません。その反対です。
フランスの戦車ではありませんが、レオパルト供与といった戦車支援の議論があった際、マクロン大統領は最初にフランスからウクライナへ装甲車の供与を発表しました。数日後に軽戦車「AMX-10RC」を供与し、最初の発送が来週にも行われる予定です。
この決断は戦車レオパルト供与の決断を後押ししたと思っています。

■「ウクライナ軍が抵抗できるよう 戦場のバランスを取る」

Q.ウクライナへの武器供与を続けると、プーチン大統領が和平交渉のテーブルに来なくなるのでは?

いま、私たちはウクライナを助け、支援しなければなりません。軽装備、大砲 対空システムなどたくさんの装備の供与です。私たちは軽戦車「AMX-10RC」や弾薬の供与、メンテナンスの提供も決定しました。
去年11月にはウクライナが必要な装備品を購入できるよう2億ユーロ規模の基金を創設しました。私たちが今、行わなければならないことは戦場のバランスを整えることです。より激しくなる攻撃からウクライナが自衛できるようにするためです。ロシア軍と補助機関の「ワグネル」の攻勢で現場は重要な局面を迎えていてウクライナ軍が抵抗できるように支援する必要があります。

■ウクライナの「EU加盟への条件を整えている」

Q.大使は外交官として長いキャリアをヨーロッパで過ごしたと聞く。セトン大使から見た、ウクライナ危機におけるEUとNATOの役割はどういうもか?

EUは去年の2月24日からすぐに侵攻を非難し、その時からたくさんの決定をしました。
人道支援や経済・財政支援、軍事支援など多岐にわたります。欧米平和ファシリティーという枠組みです。これまでに360億ユーロ近くをこの枠組みのために捻出しています。

そのほか、ロシアやベラルーシに対する制裁も科しています。第10弾のパッケージを組んでいて、EUは去年2月24日から団結しています。そして、ロシアの侵攻は不正だと一貫して非難し、ウクライナを支援しています。

また、政治的にもウクライナを支援していて、去年6月にEU加盟候補国と認めました。現在もウクライナと段階的に歩み寄れるようEU委員会の下で議論が続いています。EUは最終的な加盟のための条件を整えています。

Q.NATOやEUの東方拡大がプーチン大統領を刺激したという批判について、どう考えるか?

ウクライナは主権的な選択をしています。NATOやEUに入るという選択は主権がある独立国としてのものです。その選択は尊重されなければなりません。

■ロシアメディアの規制について「あれは報道機関ではない」

Q.去年からフランスとEUはスプートニクといったロシアメディアの放送などを全面禁止した。偽情報を使ったプロパガンダに対抗する措置だと理解しているが、このような措置は言論の自由を侵害する危険な措置ではないか?

報道の自由や言論の自由は国際的な文書などにも記されている原則です。ヨーロッパの国々はこの原則を尊重していますが、ロシアはそうではありません。

ロシアの独立系メディアは脅かされ閉鎖に追い込まれています。外国人記者への法律もあります。ロシアではメディアが独立しているということは難しいです。情報を集め、真偽を検証し編集する報道機関ではありません。プロパガンダや偽情報を垂れ流す機関です。
だから EUはロシア・トゥデイなどのメディアを禁止したのです。

また、民主主義の視点からいうと、ロシアメディアは報道機関ということはできないのです。
ロシアによるウクライナ侵攻がおきている状況では、私たちの国々の安全保障のためにも去年3月から禁止措置が実行されました。

Q.フランスには少数派かもしれないが、ロシアメディアを支持する人もいる。彼らの声を無視することにならないか?

ロシア・トゥデイで働いていたフランス人のジャーナリストが侵攻開始後に退職したと聞きました。ですので、フランスでこのことが大きな議論になっていると思いません。

■サミットと広島への期待「G7首脳は責任を痛感するだろう」

Q.ウクライナ危機などの国際的な課題に向けてG7議長国の日本に期待することは?

議長国の日本にとっての課題はG7の結束を維持し、さらに強化することだと思います。
ロシアの侵攻を非難し、ウクライナを支援することが第一です。また、現在からサミットが開催されるまでの戦闘の状況に左右されます。必要であれば和平交渉のための努力を推進しなければなりません。ウクライナが提案する10項目の和平案はG7から支持されています。この和平案はほかの国際機関でも支持されるでしょう。

そして、ウクライナの復興に向けた準備も大切です。G7だけで対処できるわけではありませんが、ほかの国際機関と協力し、方針を固めることができるテーマの一つです。

Q大使は広島に行ったことはありますか?

私は広島と長崎で8月の追悼式典に参加しました。生存者を前にして心を揺さぶられました。このような気持ちをG7首脳が広島で抱くことになると思います。こうした意味で、おそらく核不拡散の目的や核兵器不拡散条約の原則を守るための責任を痛感するでしょう。

■北朝鮮ミサイルと中国の偵察気球について「世界は追加の危機求めていない」

Q.北朝鮮のミサイル発射

北朝鮮について、私たちは極めて日本と近く、一致した見解を持っています。私たちは一貫して北朝鮮による軍拡や実験について非難してきました。
また、国連による制裁やその強化を支持し北朝鮮の“瀬取り”を定期的に監視しています。コロナ外相は最近北朝鮮ミサイルが日本のEEZ(排他的経済水域)に落下したとき林外務大臣と話す機会がありました。その際に日本への団結を表明しました。

私たちは北朝鮮が国連安保理決議を遵守することや、検証可能かつ不可逆的な方法での完全な形での兵器の放棄を求めています。

Q.中国の偵察気球問題について

最近ニュースを独占しているテーマの一つですが、ある国が自国領土の一体性を守るのは当然です。その上で、アメリカと中国があらゆるテーマについて建設的な対話を続けることが大切だと思います。なぜなら世界はさらなる危機を必要としていないからです。

■フランスは“インド太平洋国家”「安保分野で関係強化したい」

Q.フランスはインド太平洋国家でもあるということですが、自国民を守るためにも日本は重要な国なのか? 今後、日本とRAA=円滑化協定を結ぶのか?

日本はフランスにとって、この地域においても戦略的なパートナーです。私たちの望みはいろいろな分野がありますが、安全保障でも日本との協力を強化することです。
すでに共同演習もしていますし、自衛隊とフランス軍がそれぞれオブサーバー国として演習に参加しています。私たちの願いはこの協力関係を運用面でも発展させていくことです。もう一度強調しますが、フランス軍は定期的に日本を訪問しています。だからこそ私たちは日本と円滑化協定を締結することが必要だと考えています。

Q.オーストラリアとイギリスが日本とRAA=円滑化協定を締結。2021年の会見で大使はフランスも交渉を始めたいと話していたが。

オーストラリアは日本と長い交渉を経て締結に至りました。イギリスとはもう少し短い期間での交渉で締結しました。
私たちは日仏2国間の協定についての交渉を始めたいと考えています。この問題を日本の政府関係者と定期的に話し合っているわけではありません。フランス大統領が1月9日にパリで岸田総理と会談したときに言及しました。条件が満たされれば交渉する段階に移りたいと思います。
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