「殺人と同じ」輸血拒否問題だけでなく…「エホバの証人」2世語る“ムチ打ち”の実態(2023年2月28日)
いわゆる「宗教2世」が親から受けた虐待の問題を巡り、28日に新たな動きがありました。午後、「エホバの証人」を追及している弁護団が会見を開き、子どもへの「輸血拒否」の実態などを訴えました。
■子どもへの輸血拒否は“虐待” 「エホバの証人」宗教2世の実態
またしても親の信仰によって被害を受けていたのは、多くの2世信者たちです。
「エホバの証人」問題支援弁護団・田畑淳弁護士:「2世だから、親が信者だからその宗教を信じなければならない、信仰しなければならない、そういったことがあってはなりません。エホバの証人には信仰をやめると親兄弟である信者の家族とも人間関係を絶たれてしまう『忌避』と呼ばれる深刻な問題があります。幼い時に仮に信仰の世界に入ったとしても大人になってからやめると家族と二度と口をきけない。そういったことがあるから、やめたいけどやめることができない。そのようなことがあってはならないと考えております」
宗教団体「エホバの証人」が子どもに輸血を受けさせないよう信者に指示しているなどとし、弁護団は厚生労働省に事例を通報しました。
厚労省では去年、宗教虐待に関するガイドラインを初めて示し、18歳未満の子どもについて「宗教の教えを理由に医師が必要と判断した輸血等の医療行為を拒否する事はネグレクトにあたる」と明記しています。
「エホバの証人」問題支援弁護団・田畑淳弁護士:「信者の親は教団から輸血拒否を神が求めている。そのように教えられていますので、子どもに対して緊急の事態であっても輸血を拒否させることになります」
「エホバの証人」問題支援弁護団・田中広太郎弁護士:「彼らの根幹は、別に救命されてもされなくても輸血は絶対拒否するんだという。そこはかみ合わない議論になってしまうかもしれませんけど、突然の大量出血の時に彼らがことさらに主張する代替治療が本当に役に立つかどうか、本当に理解していただいて、それでもいいのかという決断をする。これが重要じゃないかなと思います」
弁護団によりますと、現役や元2世信者らおよそ100人への聞き取りの結果、「輸血拒否」のほかにも、子どもの頃の体験として親から「ムチでたたかれた」といった証言などが複数、寄せられているといいます。
■日本国内に約21万人の信者 「輸血拒否」で子ども死亡の過去
エホバの証人は、100年あまり前にアメリカで設立されたキリスト教系の宗教団体。1958年にニューヨークで開かれた大集会では、当時のヤンキースタジアムが満員となっていました。ビーチでは集団洗礼式も行われ、信者らが水着で海へ入り、洗礼を受けています。
日本でその名が知れ渡ったのは、1985年に起きた事故がきっかけでした。神奈川県川崎市で小学生の男の子がダンプにはねられ重傷を負います。病院に搬送されたものの、親が信仰を理由に輸血を拒否。男の子は、その後、死亡してしまいました。
■「殺人と同じなんじゃないか」 現役信者語る“輸血拒否”実態
エホバの証人では「血を避ける」という聖書の記述に基づき、輸血を拒否する教義で知られ、子どもを持つ親にも教団から指示があると現役信者が語ります。
エホバの証人、現役信者:「エホバの証人の中では『会衆』と呼ばれる幹部の人と信者の面談のようなものがある。その場で色々、話をされるがその時に示されたのが『子どもの輸血に関する文書』です。色々、『エホバの証人』の教義の中でも罪の重さが変わるんですが、輸血というのは排斥処分というのに該当するかなり重い罪になるんですね。排斥処分というのは、簡単に言うと家族を含めた『エホバの証人』の信者とは関係を断つということ」
「親として、子どもを血の誤用から守る」と題された教団の内部資料。中身は、輸血を固く拒否することを求める通達です。
「エホバの証人」内部資料から:「輸血を強要されても親は決して確信を弱めてはなりません。親は協力的な医師を見つけるよう努めます。私たちの立場を尊重し『エホバの証人』の子どもに無輸血の代替医療を施してきた医師や病院を探すためです」
エホバの証人、現役信者:「そういった子どもに親の宗教信条を押し付けて、輸血というのは拒否すれば死に至ることもあるわけなので、そういった子どもに輸血を拒否させて、もし死なせてしまうならそれは殺人と同じなんじゃないかなと私は思う」「(Q.事実上の強制?)そこが巧みなやり方というか、いざ問題が起きても『私たちは強制していないので』というやり方をしている。でも信者側は、血の問題で妥協をすれば排斥処分になる可能性が高いので身動きが取れない」
自らも親になったこの信者は、子どもが生まれて教団のこうしたやり方に疑問を持ち始めたといいます。2世、3世の信者の中には「輸血拒否カード」の署名や携帯を強要されていた経験を持つ人もいて、出掛ける前に親からチェックもされていたそうです。
■宗教2世語る“ムチ打ち”実態 使われる道具が時代で「変化」
こうした「輸血拒否」とともに弁護団が問題視するのが子どもへの「ムチ打ち」虐待。
「エホバの証人」問題支援弁護団・田中広太郎弁護士:「10年もの間、子どもたちが定期的にこうした苛烈(かれつ)な暴力を受ける、それがムチです。一つ特徴的なのは、道具を使うということです。そして、道具に関してもさらに特徴があって、時を経るごとに使われる道具が変化していくことが非常に顕著にみられる特徴です。最初は手だったが次は靴ベラ、それからガスホース、あるいは親とか周りの信者自身が作った、より子どもに苦痛を与えやすい、より多くの苦痛を与える道具が、いわばどんどん開発されていって信者から渡されたり、受け継がれたりしてやられる」
虐待の理由は集会で居眠りしていた、真剣に活動する親に比べて熱量が足りないなど「信者に相応しくない」との理由から苛烈な暴力が繰り返されていたといいます。
「ムチ打ち」を巡っては去年、いわゆる“宗教2世”問題で行われた野党ヒアリングでも元信者が実態を語っていました。
「エホバの証人」元3世信者(30代):「下着をとられ、お尻を出した状態でたたかれるというもので、我が家の場合は小さいうちは平手、その後は父親の革ベルト。同じ組織の信者同士の間で何を使えば子どもに効率的にダメージを与えられるかの話し合いが日常的になされていた。決して一家庭の問題ではなく、組織的に体罰が推奨されていた。皮膚が裂けてミミズばれになるので、座ることやお風呂に入ることが地獄でした。性的な羞恥(しゅうち)心も覚えるようになり、毎日いつ自殺しようか本気で悩んでいた」
当時、虐待を受けていた子どもには被害を発信する手段も相手もいなかったと説明。弁護団によりますと、ムチ打ちは早ければ2~3歳から行われ、子どもが親に体力的に抵抗できるようになる12~13歳くらいまで続くことが多いそうです。
「エホバの証人」問題支援弁護団・田中広太郎弁護士:「ムチをされる前にどうして自分がムチをされるのかという理由を自分で言わされ、そして終わった後に『ありがとうございました』と言わなければならない。本当は親を愛したい、親に愛していると言ってもらいたいのに大人になって20年、30年、時が過ぎ去ったとしても、その親子の関係の破壊にずっと苦しんでいる人が多くいるように見受けられます。ですから、このムチというのは現在進行形の問題であるというふうに私たちとしては捉えている」
実は、被害者を支援する田中弁護士も母親が「エホバの証人」の熱心な信者で、自身も2世信者として育ったといいます。
「エホバの証人」問題支援弁護団・田中広太郎弁護士:「今から3年半ほど前に私の実の母が40年以上、熱心に誠実に続けているエホバの証人の信者ですけれども、母が突然の大量出血で倒れまして、(医師は)輸血をしないのであればこのまま死を待つだけで、しかもかなり早い段階で亡くなるだろうと。母は『死んでも輸血を拒否します』と言っていました」
何とか一命はとりとめましたが、苦悩した経験から「1人でも多くの命を救いたい」と活動の理由を明かしてくれました。
「エホバの証人」問題支援弁護団・依田文良医師:「まず、輸血を拒否するということ、緊急を要している状況で命に関わるという時に輸血を拒否するということ自体が、そもそも想定していない。それ自体が困ったことになってしまうということになります。もう命が絶たれるという状況になった時に一番とらないといけない治療が輸血になります。それをとられてしまっては、もう打つ手がない」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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