【報ステ】「成果示せず、従来の主張繰り返した」プーチン氏の年次教書演説 内容解説(2023年2月21日)

【報ステ】「成果示せず、従来の主張繰り返した」プーチン氏の年次教書演説 内容解説(2023年2月21日)

【報ステ】「成果示せず、従来の主張繰り返した」プーチン氏の年次教書演説 内容解説(2023年2月21日)

ロシアのプーチン大統領が21日、ウクライナへの大規模な侵攻後、初めてとなる『年次教書演説』を行いました。

プーチン大統領:「我々の歴史的土地に住む人々や、我が国の安全を守るため、2014年以降、ウクライナに台頭したネオナチの脅威を排除するために、1年前、特別軍事作戦実施の決定がなされた。我々は一歩ずつ慎重に順序立てて、目の前にある問題を解決していく」

そして、いつも通り侵攻の正当化を繰り返しました。

プーチン大統領:「彼らが戦争を始めたのだ。我々はそれを止めるために力を尽くしてきたし、尽くしている。ウクライナ紛争をあおり拡大させ、犠牲者を増やした責任は、すべて西側エリートにある。そしてもちろん、キエフ(キーウ)の現政権にもある。現政権にとって、ウクライナ国民は本質的に他人なのだ。西側諸国は私たちに対し、経済制裁を行った。しかし、西側諸国が何かを成し遂げたことはない。制裁をした国は、自国に打撃を与えている。エネルギー危機をもたらし、自国民にはロシア人が悪いと言う」

去年2月24日、ウクライナの非軍事化を掲げ、全面侵攻を始めたロシア。ゼレンスキー政権を早期に崩壊させるという目論見は崩れ、戦争は1年にわたって続いています。

ロシア側の死傷者はイギリス国防省の推計によると17万5000人~20万人。部分動員令を発動して以降、大幅に増えたとみられています。

そこで、プーチン大統領が打ち出したのは…。

プーチン大統領:「亡くなった軍人の家族が、どれだけ苦しいのか分かります。我々の義務は、遺族のために特別なサポートを与えることだ。親を亡くした子どもを経済的にサポートし、教育や職業等をきちんと与えるべきだ。動員された全ての軍人や、参加した志願兵に対し、半年に1回、少なくとも14日間休暇を与えようと考えています」

欧米は戦車など、これまで提供してこなかった兵器の供与を決め、すでにウクライナ兵への訓練が始まっています。

アメリカからは、ロシアが一方的に併合したクリミア半島にも届くロケット弾が提供される予定です。

プーチン大統領:「西側がウクライナに供与する武器が長距離になればなるほど、脅威を国境から遠ざけることを、私たちが余儀なくされるのは当然だ。戦場でロシアに勝つことは不可能だと、彼らも気付かないはずがない」

ウクライナ東部では、ロシア軍の大規模攻勢が始まっていますが、演説では具体的な戦況や戦果については触れませんでした。

東部の要衝バフムト。何カ月にもわたる攻撃で、ほとんどの住民はすでに故郷を離れています。

それぞれの理由で残っていた人たちも、街を去ることを選ばざるを得ない状況です。

バフムトからの避難者:「家はミサイル攻撃を受けました。生活していたマンションには全てそろっていましたが、静かに暮らすことはできません。ずっと攻撃を受けていて、昼も夜も怯えています」

バフムトからの避難者:「武器さえもらえれば、ウクライナ軍は敵を追い出せると思っていたのに」

バフムトを足掛かりにドネツク州の支配を狙うロシア軍。バフムトには東・北・南の3方向から迫っています。

民間軍事会社の戦闘員も含め、兵士を大量投入するロシアに、ウクライナ軍は何とか持ちこたえている状態です。

ウクライナ兵:「緊迫している。敵は前線に多方面から攻勢をかけ続けている。しかし、敵の努力は全て無に帰す。全ての戦線で、10人ほどの兵士が100人の敵と戦い、勝利している」

これまで、ことあるごとに核兵器の使用をちらつかせてきたロシア。プーチン大統領は、アメリカとの核軍縮条約『新START』を停止すると一方的に主張しました。

プーチン大統領:「ロシアは新STARTの履行停止を宣言しなければならない。繰り返すが、離脱ではなく、条約の履行を停止するのだ」

【プーチン大統領が同じ“主張”を繰り返す背景は】

◆防衛省防衛研究所・兵頭慎治さん

(Q.大規模攻勢を始めているにもかかわらず、プーチン大統領が戦況に触れなかったのは、それほど戦果が上がっていないということですか?)

そうだと思います。兵士を大量投入しましたが、21日の演説までにドネツク州の要衝バフムトを制圧することができませんでした。

演説で戦況や今後の見通しに触れることができなかったと思います。

(Q.プーチン大統領は、今の戦況についてプラスに見ていないとうことですか?)

戦果としてロシア国民にアピールするものはないため、演説では何も新しいことに触れていません。

これまでの戦争の正当化、西側への批判、長期戦をロシア国民が結束して乗り切ってほしい。この3点に尽きたと思います。

そもそも年次教書演説は、軍事作戦が短期で終了した後に、戦果をアピールするために行う予定でした。

しかし、戦果のアピールができないので、去年は実施できませんでした。

それを今年になってやった理由は、来年3月の大統領選挙が控えていることです。

そのため、戦果はなくとも、演説せざるを得なかったのだと思います。

(Q.終始、西側への批判ばかり強調していた気がしますが、どうみましたか?)

特に冒頭の部分で、西側批判を長い時間繰り返していました。

去年、開戦直後の演説では、欧米やNATOに言及はそれほど多くなく、ウクライナに対する特別軍事作戦だと説明していました。

しかし、去年秋くらいから西側が仕掛けてきている戦争であって、ロシアは対抗しなければいけないというレトリックを強めています。

この背景としては、戦争の長期化で犠牲が拡大するなか“反西側”という、冷戦時代のようなレトリックを前面に押し出して、国民の結束を呼び掛ける状況に、プーチン大統領もある意味、追い込まれているのではないかと思います。

(Q.プーチン大統領は「新STARTの履行を停止する」と発言しましたが、この意味はどう分析しますか?)

これはアメリカとロシアの間で唯一、残っている核軍縮合意です。

一時的とは言いながら、履行停止を表明した背景には、2つの要因があると思います。

1つは、この条約によって、アメリカとロシアは相互に核施設などの査察が義務付けられています。

今は戦争が行われているので、ロシア側が拒んでいて、問題になっています。

もう1つは、一時的にせよ履行停止するのは、ソ連時代を通じて初めてです。

プーチン大統領は、核軍縮合意がなくし、核戦力の強化・増強というニュアンスを出したと思います。

ただ、離脱はしないと言っています。

離脱をしてしまうと、アメリカなども条約に束縛されることなく、核兵器を増強する可能性もあります。

ロシアはそこまでは踏み切れず、核戦力を増強するニュアンスを出しながら、アメリカを揺さぶる発言だったと思います。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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