ペットも長生き 「認知症」増加 高齢化で…“診療費”負担増 “飼育放棄”要因にも(2023年2月18日)

ペットも長生き 「認知症」増加 高齢化で…“診療費”負担増 “飼育放棄”要因にも(2023年2月18日)

ペットも長生き 「認知症」増加 高齢化で…“診療費”負担増 “飼育放棄”要因にも(2023年2月18日)

 近年、医療技術の進歩によって人間だけでなく、ペットも長生きしている。その一方で、高齢化により「認知症」を発症するペットも増えてきているという。

■犬の平均寿命 調査開始以来最長の“14.1歳”

 東京・杉並区にある森田さんのお宅を訪ねた。森田さん家族は、16歳のメスの柴犬・ちいちゃんと暮らしている。

 愛くるしい顔でおやつを食べるちいちゃん。しかし、しばらくすると、グルグル旋回し始めた。

 ちいちゃんの飼い主・森田達也さん(46):「(Q.同じ所を歩き回っているように見えるが?)ずっと右回りするねと言っていたら。お医者さんに聞いたら、認知症の症状の1つだよと」

 ちいちゃんは去年5月、認知症と診断された。

 近年、医療の進歩に伴い、犬の平均寿命も伸び、去年発表されたアニコム「家庭どうぶつ白書」によると、14.1歳。調査開始以来、最長に達しているという。その結果、犬の高齢化が進み、老齢による認知症が増加している。

 ちいちゃんの飼い主・森田玲さん(42):「(Q.こちらは?)これはね、端っこに挟まる。下がれないので、このまま前に突き進みます」

 部屋の角に頭を押し付けるちいちゃん。これも「ヘッドプレス」と呼ばれる認知症の症状で、中枢神経の損傷などが原因で起きるという。

 森田達也さん:「ワンワンワンワン鳴いちゃったり、助けを求めることも多くて」

 突然訪れるかもしれない、犬の認知症。その治療の現場を取材した。

■突然の“夜鳴き”&“歩行困難”も…

 東京・世田谷区にある「駒沢どうぶつ病院」。現在6匹の犬や猫が認知症治療で通っている。

 駒沢どうぶつ病院・田部久雄院長(66):「アランちゃん、こんにちは」

 この日やってきたのは16歳のオスのトイプードル・アラン。去年10月に認知症と診断された。

 田部院長:「ちょっと心臓だけ聞いていくね。落ち着いているね。表情が穏やかになっていますよね。(リンパ節が)ちょっと腫れていますね。ただ、このぐらいならいいと思います」

 犬の認知症は、老化などによって認知機能が徐々に低下し、行動障害がみられるようになるという。

 アランの飼い主は、認知症の症状が突然現れたと話す。

 山中綾乃さん(26):「昼間暴れ始めて、どうしようってなって先生にお電話して」
 山中和代さん(56):「ちょうど『ウォー』ってほえているのも先生に聴いていただけたので、すぐ連れていって。びっくりしたよね。前の日は歩いていたりとかしてたからね」

 その時の映像には、深夜2時に突然始まった夜鳴き。その5分後、立ち上がることができなくなった。

 山中和代さん:「年とらないと思っちゃっていたのでね」
 山中綾乃さん:「なかなか歩けなくなると、思っていなかったというか」
 山中和代さん:「寂しくなっちゃった」

 田部院長:「夜中鳴くのも、ある程度欲求が通らないとか、そういうこともあると思うんですよ。シニアケアとして、色々声を掛けたり、工夫をしてあげることもすごく大事だと思っています」

 アランは現在、認知症の原因とされているアミロイドベータの蓄積を抑えるサプリを飲んでいて、夜鳴きはある程度、治まっている。

 しかし、自力で歩くことは難しく、飼い主が手作りした歩行器で生活している。

■飼い主「ペットというよりも家族として」

 去年5月に認知症と診断された16歳のメスの柴犬・ちいちゃん。飼い主の森田さん夫婦には、大学生の長男と高校生の次男がいる。

 森田玲さん:「子どもたちと一緒に大きくなって。男の子2人なんですけど、ちいちゃんだけ女の子なので、うちの長女です」

 次男が生まれた翌年にこの家に来たちいちゃんは、子どもたちとともに成長し、いつも一緒だった。

 森田玲さん:「長男は分かりやすい反抗期があったんですけど。私とけんかしても、ちいちゃんが来ると、『ちいちゃん、いってきます』って緩衝材になっていた。ちいちゃんに救われていました」

 森田さん一家に寄り添い続け、家族関係がぎくしゃくした時には間を取り持っていた、ちいちゃん。ただ、成長速度は子どもたちより早く、ちいちゃんはすっかり、おばあちゃんになった。

 今後、認知症の悪化も懸念されるが、森田さん家族は「今度は自分たちがちいちゃんに寄り添う番」だと話す。

 森田達也さん:「認知症の症状も理解しつつ、どういうことができるかなとか、してあげられるかなというのを『ちいちゃん』の年齢とともに変化を感じながら、対応してあげられたらいいなと思います。ペットというよりも家族として」

■“認知症サイン”セルフチェックを

 ペットの認知症だが、飼い主である私たちは何に気を付けたらいいのだろうか。

 駒沢どうぶつ病院の田部院長は、「認知症は脳の老化であり、止めることは難しい。犬が出すサインに気付き、早めの対応をすることで進行を遅らせることが大事」と話した。

 では、犬が出す認知症のサインには、どのようなものがあるのだろうか。その目安となるものとして、「認知機能不全症候群セルフチェック」というものがある。

 色んな項目があるが、ネスレピュリナペットケアがインターネット上で無料提供しているサービス。8歳以上の犬で、質問に対して「該当しない」「まれにある」「ときどきある」「最低でも一日1回ある」の4段階で答えていくものだ。

 内容を見ると、例えば「壁、床、空中などの何もないところをぼんやり見つめる」や「視覚刺激(光景)や聴覚刺激(音)に対する反応が鈍い」「夜中に、鳴いたりほえたりする」「飼い主が離れた際の不安が増えた」など、全18問があって、すべての質問に答えて完了ボタンを押すと、認知症の兆候の度合いが分かるということだ。

 ただし、このセルフチェックはあくまでも目安なので、最終的には獣医師の診断を受けて、適切な治療を受けるなどして下さいということだ。

■診療費の負担増 “飼育放棄”要因にも

 そして、犬の高齢化による問題は認知症だけではない。人間と同じで年を取ると、診療費がかさむという。

 アニコム「家庭どうぶつ白書」によると、犬の入院や治療を含む診療費は年を取るごとに増えていき、12歳では年間の平均が14万9757円になるという。

 こうした高額な診療費は、“飼育放棄”の要因にもなるなど問題になっている。

 高齢ペットと過ごすことについて田部院長は、「今まで癒やしてきてくれた大切な家族の一員だからこそ、最後まで責任を持ってともに過ごしていくことが大事」と話した。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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