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【報ステ】「午前は葬儀、夕方は誕生祝い」葛藤抱え“普段通りに”大越が見たキーウ(2023年2月7日)
仕事を続ける人。父親の帰りを待つ家族。戦時下のウクライナでは、一人ひとりが様々な葛藤を抱えながら、それぞれの立場で戦争を戦っています。
ロシアによるウクライナ侵攻からまもなく1年。今の首都キーウの日常生活を、大越健介キャスターが現地で取材しました。
キーウでは現在、午後11時から午前5時まで、外出禁止令が出されています。
大越キャスター:「ちょうど通勤ラッシュが始まっている時で、今から地下鉄を使って、私も行きたいと思います」
地上からホームまでは約105メートル。1960年代に、旧ソ連が作ったものです。
大越キャスター:「(エスカレーターの)終点が見えないです。ここは、世界で最も深いところにある地下鉄の駅の一つだそうで、旧ソ連時代に核攻撃に対するシェルターとして使われたそうです。今回、ソ連の継承国であるロシアの攻撃から身を守るために、ウクライナの人がシェルターとして使っていたという、実に皮肉なことになっています」
向かったのは、シェアオフィス。
大越キャスター:「ここは元々、軍関連の施設があったそうですが、リノベーションをして、新しいオフィスに。『クリエイティブステイツ』と書いてあります。創造的な場所ということなのでしょう」
一日に、延べ約500人が利用するといいます。午前8時から12時間使え、日曜日は休みです。利用料は、一日30ドル、ないしは1カ月300ドル。利用者には、IT関係の技術者が多いといいます。
プログラマー、ブラスラフスキーさん(30):「(Q.仕事の依頼は国外から?)ほとんどがそうです。(Q.どの国から?)ポーランドやスイス、リヒテンシュタインからです。朝はゆっくりしてから、仕事に戻ることもあります。こうして紅茶を飲みながら」
一見、優雅に見えますが、戦争と常に隣り合わせの状況に変わりはありません。
大越キャスター:「ここにいらっしゃる方も戦地に派遣される可能性があります。ウクライナの人たちは常に戦争と隣り合わせで、日常を一生懸命生きているのだということがよく分かります」
この時期、午後5時を過ぎると、街は闇に包まれます。家路を急ぐ人もあれば、寄り道をする人も。
大越キャスター:「夜のスポットがここに。不思議な感じだなあ。にぎやかだ。僕らは、ウクライナというと戦争感じちゃうんだけど、全然違うカジュアルな雰囲気がして、若い人たちが思い思いに時間を過ごしています」
キーウの中心部にあるバー。カウンターは、ビールやカクテル、スピリッツなどを手にした、若い人たちで満席でした。そんな日常の中にも、棚には「勝利の日に」の文字が。
バーテンダー:「ウクライナ軍に寄付していて、チップも全額が軍のドローン費用にあてられます」
軍事産業勤務、コフジュンさん(47):「(Q.意外とにぎやかですね?)みんな“日常”を維持しているんです。悲しいことばかりなので、楽しんでバランスを取らないと体に毒です」
ボランティア団体勤務、セルークさん(33):「午前中は友人の葬儀に参列して、夕方にはバーで別の友人の誕生日を祝う。それが日常になっています。(Q.戦争と日常生活が両立していると)開戦の当時、世間で話題になったんです。『東部で毎日、犠牲者が出ている中、バーなどで楽しんで良いのか』と。ウクライナ軍の兵士たちは、こう言ってくれました。『当然です。我々が国民と普段の暮らしを守るから』」
もちろん、日々、家族での食事を大切にしている人もいます。
キーウ市内にある、5階建てアパート。1960年代に建てられたもので、エレベーターはなく、階段で最上階まで上がります。最近は、停電が頻繁に起きているといいます。
リュドミラ・イェフトゥシェンコさん(46)は、幼い2人の娘と、長男のオレクサンドルさん(21)と、ここに住んでいます。
普段の生活を取材させてほしいとお願いしました。伺ったのは、夕食の時間です。
リュドミラさん:「(Q.あなたの手料理ですね?)そうです。ボルシチを温めるところです。ウクライナの伝統的なパン、パンプシカもありますよ」
夫のマキシムさん(45)は、戦場にいます。戦地へ向かってから、まもなく1年。
リュドミラさん:「夫は去年2月24日に志願して入隊しました。最初の1カ月は、連絡が取れない日もありました。夫からの電話やSNSを待ちわびる日々でした」
そんななか、戦火がキーウにまで迫ったため、残った家族は、地下鉄の駅で避難生活を送りました。
リュドミラさん:「(Q.どのくらい地下鉄にいました?)5週間、1カ月以上です。襲撃があり、空襲警報が鳴っていました。怖くて、大変でした。子どもたちはとても怖がっていた。(怖い音を)聞かないでほしかったから、地下鉄へ連れて行きました」
寒くて、服を着たまま寝ていましたが、みんなといることで、長く過ごせたといいます。今、夫からは、毎日、連絡が来ています。
リュドミラさん:「毎朝、おはようと絵文字を送ってくれています。私はたくさん子供たちを撮って送っています。きょうは、娘たちとパンプシカを作っている写真をパパに送りました。(戦場の写真は)来ません。送ってはいけないし、私を大事にしているからです。子どもたちも見ることがあるから、怖いものを送らないです。これは世界がロシアと戦っている戦争です。『我々には武器が必要。ドローンが必要』この戦争のスローガンですが、こんな言葉を言うとは思ってもいなかった」
待ち望んでいるのは、夫もそろった家族の食卓です。
リュドミラさん:「(仕事は)終わり?じゃあ、食べていって?」
大越キャスター:「かき混ぜるんだ、こうやって。照れくさいけど、おいしい。すごく、ガーリックが効いてる。これ全部食べていい?」
【戦禍に生きる守りたい日常】
◆大越健介キャスター
私は、キーウ市内の巨大なマーケットに来ています。
ロシアによる侵攻は、このマーケットでの店頭価格にも大きな影響を及ぼしています。
例えば、ウクライナ中部産のトマトは今、1キロあたり約700円。これは戦争前の3倍以上に跳ね上がっているということです。
光熱費の高騰などが影響して、こうした値上がりになっています。
ウクライナの2022年の消費者物価指数は、26.6%の上昇となりました。一方、価格が下がっているものもあります。
価格が下がっている牛肉は、経済的に余裕のある人が多く国外に避難したことで、レストランが閉店に追い込まれ、結果として品物がダブついているためだということです。
とはいえ、キーウでは、物資が欠乏することはほとんど考えられません。激戦地の東部などでは流通が滞り、生鮮食品が欠乏する事態も続いているということです。
(Q.バーでの取材でどんな印象を受けましたか?)
彼らももちろん、戦地にいる兵士に気兼ねがないわけではありません。
ただ、誰しもこの戦争と無関係な人はいません。
バーにいた人の中には、かつては前線にいたが除隊した人や、支援活動に取り組んでいる人、自分の親しい人が今まさに戦地にいるという人など、様々です。
そうした人たちは、厳しい現状とバランスを取るようにして、バーでのひと時を過ごしていました。
私はバーで話を聞いた、若い女性の話が非常に印象に残っています。
彼女は、前線で戦っている友人から「生きろ。生活をあきらめるな」と言われたといいます。
戦争が終わって、兵士たちが戻ってきた時に、安らぎを感じられるような故郷を、自分たちは守るのだと、願っているようでした。
一人ひとりが、それぞれの立場で、戦争を戦っています。
(Q.リュドミラさんの家を取材していかがでしたか?)
インタビューが終わって、改めて言葉を噛みしめると、いかに壮絶であるかに気付かされました。
開戦直後に夫は戦場に行き、自分は幼い娘2人を連れて、地下鉄構内で5週間以上にわたって避難生活を送りました。
しかし、彼女は、その間の不便さや、つらさを、私たちの前では一切、口にしませんでした。
むしろ、「娘たちが怖がる戦闘機の音が聞こえなくて良かった」「子どもたちにとっては冒険だったかもしれませんね」と淡々と振り返っていました。
その様子には、強さという言葉では収まりきらないものを感じました。
娘たちにも分かるように、絵文字を使って戦地にいる夫とメッセージのやり取りをすること。そして、決して広くないキッチンで、外国から来た私たちに料理の腕を振るうこと。これもまた、彼女なりの戦いの在り様なんだと感じました。
(Q.今、電気が突然、消えましたが、皆さん動じていないようでした。そういったことも含めて日常になっているのでしょうか?)
ここ2日間ほど、空襲警報は鳴っていませんが、仮に空襲警報が鳴ったとしても「多くの人々は慣れてしまっている」という話も聞きます。
私たちもすぐに避難できる場所を確保しながら中継をしていますが、人々の生活は平穏そのものと言って良いと思います。
(Q.隣国であり、ロシアとウクライナの仲介役を積極的に買って出ていた、トルコで大きい地震がありました。ウクライナではどう伝えられていますか?)
伝えられています。トップニュースは、東部を中心として戦況のニュースですが、その次に、今回の大地震のニュースが流れています。
トルコは、ウクライナとロシアの仲介を試みてきた経緯から、関心は高いようです。
今回の地震で、ウクライナ人6人が行方不明になっていることも、盛んに報道されています。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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