「みんな意見が合わないけれど…」“分断の国”アメリカの若者に引退する最高裁判事が伝えたいコト

「みんな意見が合わないけれど…」“分断の国”アメリカの若者に引退する最高裁判事が伝えたいコト

「みんな意見が合わないけれど…」“分断の国”アメリカの若者に引退する最高裁判事が伝えたいコト

引退の意向を表明したアメリカ連邦最高裁のブライヤー判事が1月27日、バイデン大統領とともに挨拶に立ち、若者に向けたメッセージを披露しました。リベラル派の重鎮として、“分断の国”となったアメリカに伝えたいこととは…。その全文です。

ブライヤー最高裁判事:
何を話そうかと考えましたが、中高生や大学生、法科大学院生にする話をここで話すことにします。

若い彼らは「あなたの仕事のどこに意義を感じますか?何が面白いですか?」と聞きます。

それは難しい問題ではないんです。最初の日から今までずっと。通算何日かわかりませんけど。

若者たちに私はこう言うんです。裁判長の席に座っていろんな案件を裁きます。しばらくするとこんな印象を持つようになります。この国はなんて複雑なんだろうと。3億3000万人の人がいて、いろんな人種がいて、いろんな宗教があって、そして考え方も人によって全く違います。

そんな中で奇跡だと思うのは、考え方が全く違う人がいても、法の下でその違いをなんとか解決しようという決意がそこにはあるんです。

それを冷笑する学生たちにはこう言うんです。「その努力をしない国がどうなっているか、見てごらん」と。(合衆国憲法の冊子を取り出して)いつもこれを持ち歩いているんですけど、「アメリカ国民はこの合衆国憲法を受け入れ、法の支配の重要性を受け入れたんですよ」とね。

そしてこう言うんです。「もちろんみんな意見が合わないけれど、我々は人権と民主主義に基づいた国に生きているんだよ」と。

かつてリンカーン大統領が思い、ワシントン大統領が思い、そして今も人々が思っているのは、これは「実験」だということです。実際、彼らはそう言ってますからね。

妻は孫たちにお小遣いをあげてゲティスバーグ演説を暗記させているんですけどね(笑)。

わざわざそうする理由は、そこに子どもたちや学生たちにぜひ覚えてほしいことが書かれているからです。最初の2行はこうです。「87年前、父祖たちは、自由の精神に育まれ、人はみな平等だとの信条に捧げられた新しい国家を、この大陸に誕生させた」

そして今、私たちは重要な内戦を戦っています。これほどに決意し、献身してきた国が存続できるのかという戦いです。

そこで「実験」という言葉のことを思うんです。昔の人も「実験だ」と思ったんですよ。

ワシントン大統領は手紙に「これは実験だ」と書き残しています。

この「実験」について、昔のヨーロッパのリベラルな人たちも「原理としては良いアイデアだが、絶対うまくはいかないよ」と思っていたんですよ。

「でも、うまくいくことを証明していこう」とワシントンは思い、リンカーンも同じ思いを抱き、そして今も人々はそう思っているんです。

だから学生たちにはこう言うんです。「考えてみて。この実験は今も続いているんですよ」と。

そして「この実験が上手くいくか、見届けるのは誰だい?」と聞くんです。それはあなたですよ。高校生、大学生、法科大学院生、あなたたちなんですよと。

次の世代、そしてその次の世代が見届けるんです。孫たちやその子どもたちです。実験がうまくいったかは彼らが見届けるんです。

私は楽天家なので、必ずうまくいくと確信しています。

今日この日にそんなことを思ったのかと驚いたかもしれませんけど。ありがとうございました。

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