【報ステ】「誤射ではない」狙いは“ウクライナ兵分散”集合住宅にミサイル…40人死亡(2023年1月16日)

【報ステ】「誤射ではない」狙いは“ウクライナ兵分散”集合住宅にミサイル…40人死亡(2023年1月16日)

【報ステ】「誤射ではない」狙いは“ウクライナ兵分散”集合住宅にミサイル…40人死亡(2023年1月16日)

ウクライナ東部の街ドニプロで14日、集合住宅にロシア軍のミサイルが直撃しました。少なくとも40人が死亡し、約50人の安否が分かっていません。

民間施設へのミサイル攻撃としては、侵攻開始以来、最悪の被害となる可能性も出ています。

女性:「私の息子に何をしたの。人でなし。あなたたちを7代先まで呪う。一生呪われ続ければいい。私の呪いと、すべての母親たちの涙で呪われればいい」

9階建ての集合住宅には、約1700人が暮らしていたと言われています。

夜が明け、建物が崩壊してから20時間が経過したころ、がれきの中から1人の女性が助け出されました。

現地メディアによりますと、女性は生まれつき耳が聞こえず、助けを呼ぶことができなかったといいます。

夫と1歳の子どもはまだ安否が分かっていません。

ミサイル攻撃を受けた東部ドニプロは、前線から100キロ以上離れた町です。

時間を追うごとに死者の数は増え、これまでに子ども3人を含む、40人の死亡が確認されました。今なお、46人の安否が分かっていません。

民間施設に対するものとしては、最悪の被害となる可能性も出ている今回の攻撃。ウクライナ軍によりますと、ミサイルはロシア軍の爆撃機『ツポレフ22M3』から発射されたものです。

使われたのは、ソ連時代に開発された対艦ミサイル『Kh22』。本来、地上を攻撃するためのものではありませんが、これまでもショッピングモールなど民間施設への攻撃で使われてきました。

命中精度が低い冷戦時代の“遺物”。そんなミサイルをロシア軍は繰り返し撃ち込んでいます。

市民:「ここに軍事施設は一つもない。住宅地があるだけです」

しかし、ロシア側の主張は…。

ロシア国防省、コナシェンコフ報道官:「1月14日、敵の制御システムとエネルギー施設へ、ミサイル攻撃を遂行。指定の施設はすべて破壊し、目的は達成された」

精度は低いものの、最大マッハ4を超える速度が、このミサイルの特徴です。

ウクライナ空軍司令官:「ウクライナ軍には、このタイプのミサイルを撃墜できる兵器がない」

アメリカが提供を決めた地対空ミサイルシステム『パトリオット』は迎撃可能ですが、これから数カ月にわたる訓練を待たなければなりません。

ゼレンスキー大統領はロシア語で、こう呼び掛けました。

ゼレンスキー大統領:「今回のテロ行為を把握しながら非難しない全ロシア人に言いたい。あなたたちの臆病な沈黙、何かが起きるのを待つだけでは“テロリストたち”はいつか、あなたたちに牙を向けるでしょう」

ロシアは先週、狙う東部の要衝バフムトの近郊ソレダルを制圧したと発表しました。

プーチン大統領:「すべては国防省と参謀本部の計画の範囲内で進んでいる。我が国の戦闘員は、これからも成果を見せてくれることを期待している」

ウクライナ側が今、警戒しているのは再びの大規模攻勢です。ロシアはベラルーシと空軍の合同演習を始めました。

ウクライナ軍参謀本部、グロモフ准将:「合同演習の名目で、敵はベラルーシで航空部隊を増強している。ミサイルや航空攻撃、神風ドローン使用などの脅威が高まる」

【広範囲攻撃…ロシアの狙いは】

◆防衛省防衛研究所の兵頭慎治さんに聞きます。

(Q.今回のミサイル攻撃は、ロシアは軍事施設を狙ったが外れたということですか?)

どうもそうではないようです。今回使われた対艦ミサイルは命中精度が低いため、軍事目標をピンポイントに攻撃するには不向きです。また、空母などの艦艇を攻撃するミサイルなので、破壊力が大きく、大規模な被害が出ることが想定されます。それから、スピードが速いため、防空システムで十分に迎撃することが難しいです。

去年10月以降、ロシアは民間のインフラ施設を攻撃しながら、ウクライナ全体の戦意喪失を図っていますが、国際社会からの非難をものともせず、民間を対象とした攻撃を続けているとみられます。

(Q.今回被害を受けたのは、最前線ではないドニプロでした。ここを攻撃した狙いは何だと思いますか?)

ロシアはこれまでも、ウクライナ全土あらゆる場所にミサイル攻撃を続けていますが、戦意を喪失させる狙いのほかに、ウクライナ軍が、東部バフムトなどの戦闘が激化している場所に集中できないようにする目的も加わったようにみえます。

ロシアは今回、対艦ミサイルを用いているのは、ミサイルの在庫が少なくなってきて、本来、地上攻撃では使用しないミサイルを持ち出さざるを得ない状況に追い込まれているということでもあります。ウクライナの予測では、こうしたミサイル攻撃を長期的に続けられるかどうか疑問視する見方も出ています。

(Q.バフムトから約14キロ北に位置する町ソレダルについて、ロシア国防省は「12日までに掌握した」と発表しました。ただ、ウクライナ側はそれを否定しています。バフムト周辺だけ見ると、ロシアが優勢になっていますか?)

バフムトは、ロシア軍が半年以上、攻撃を加えていますが、まだ制圧ができていません。すぐ側のソレダルは、民間軍事会社『ワグネル』の部隊などが攻勢をかけて、ある程度ロシア側が制圧できているようですが、国防省とワグネルの間で、戦果を争っている状況にあります。

プーチン大統領からすると、バフムトを抑えてドネツク州の完全制圧を目指したいところですが、ウクライナ軍の守りが厳しく、そう簡単ではないようです。プーチン大統領は次の一手として、9月に導入した30万人の部分動員の戦力化が完了するので、東部のバフムトに集中的に投入して、2月に大規模な攻勢をかけるのではないかという見方も出てきています。

(Q.2月の大規模攻勢とは、具体的にどんなことが考えられますか?)

プーチン大統領は、ドンバス地方の完全制圧を最優先にしているので、バフムトを抑えたうえで、ドネツク州の制圧を考えているとみられます。

他方で、ウクライナ軍が東部に集中できないようにするため、別の地域に進軍する素振りを見せて、ウクライナ軍の兵力を分散化させる“陽動作戦”の動きも警戒されます。ベラルーシにはすでに、ベラルーシ軍とロシア軍の合同部隊が創設されていて、約1万人の兵力が展開しています。

(Q.ロシアが追加動員する可能性はありますか?)

ロシアは、1月の早い時期に追加動員に踏み切るという見方もあります。ただ、最初の部分動員30万人の戦力化が完了していないので、プーチン大統領はもうしばらく戦況を見極め、ロシア国内の反発も計算しながら、慎重な構えで決断していくのではないでしょうか。それは、2月の大規模攻勢がうまくいくかにかかってくると思います。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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