“影のロシア軍”が国防省批判 激戦地の「成果盗んでいる」 受刑者兵士“捨て駒”に(2023年1月16日)
ウクライナ侵攻での戦果を巡り、ロシアの民間軍事会社が国防省を批判する異例の事態となっています。
■東部で大規模ミサイル攻撃…29人死亡
ウクライナ東部の都市ドニプロに行われたロシア軍による大規模なミサイル攻撃。9階建ての集合住宅が倒壊しました。
この攻撃で、これまでに子どもを含む29人が死亡し、73人が負傷しました。
住民:「私の息子に何をした?このクズ野郎ども、七代先まで呪ってやる」
首都キーウやハルキウなどのインフラ施設にもミサイルが着弾し、停電の被害などが出ました。
■「ワグネル」ロシア軍内部と“亀裂”表面化
激しい戦闘が続く、東部ドネツク州ソレダル。ロシア側の激しい攻撃で、街は廃墟と化してします。
「ワグネル」の兵士:「皆、旗を掲げるんだ。建物は制圧した。勝利を祝おう!」
ドクロマークの旗を掲げたのは、“影のロシア軍”とも呼ばれるロシアの民間軍事会社「ワグネル」の兵士です。実は、このソレダル制圧を巡って、ロシア軍内部の亀裂が表面化しています。
ワグネル創設者 プリゴジン氏:「ワグネルの部隊が、ソレダル全域を支配下に置いた。もう一度強調したいのだが、ソレダル攻撃にはワグネルの兵士以外に、いかなる部隊も参加しなかったということだ」
ソレダルを制圧したのは、ワグネルの功績だと主張しましたが、ロシア国防省は「ロシア軍がソレダルを制圧した」と宣言。ワグネルには、一切触れませんでした。
ロシア国防省 コナシェンコフ報道官:「12日夜、ソレダルを解放した。ロシア軍の突撃部隊の成功で、ソレダルの街を解放した」
これに対し、ワグネルはロシア国防省を非難しました。
ワグネルの幹部(テレグラムから):「国防省が他人の成果を盗んでいる」
ロシア国防省は一転して、一部、ワグネルの主張を認める声明を発表しました。
ロシア国防省(テレグラムから):「ソレダルの占領は、ロシア軍の様々な部隊によって行われた。直接攻撃に関しては、ワグネルの志願兵の勇敢な行動によって、この戦闘任務は成功した」
■受刑者をリクルート…激戦地で“捨て駒”に
激戦地で存在感を見せるワグネルとは、どのような組織なのでしょうか。
プリゴジン氏:「私は、ソレダルを占領した者たちに勲章を贈るために、ここに来た。この男はソレダルの占領を指揮して、2週間で占領した」
民間軍事会社・ワグネルは、プーチン大統領の料理人と呼ばれる、実業家のプリゴジン氏が2014年に創設。高額の報酬で雇われた元軍人らの精鋭部隊に加え、刑務所にいる受刑者たちを兵士に仕立て、戦闘に参加させています。
プリゴジン氏が受刑者をリクルートしている様子です。
プリゴジン氏:「半年後には特赦となり、家に帰れる。考える時間は5分だ。私がここにいる間に決めろ」
アメリカ国防総省の高官は、ウクライナで戦うワグネル兵5万人の内、およそ4万人が受刑者だと指摘しています。激戦地で、これら多くの受刑者は捨て駒にされるといいます。
勝つためには、手段を選ばないワグネル。暴走するワグネルを牽制(けんせい)するかのような、ロシア軍の人事が発表されました。
ワグネルに近いとされるスロビキン総司令官が、わずか3カ月で副司令官に降格させられたのです。新たに総司令官に任命されたのは、制服組トップのゲラシモフ参謀総長です。プリゴジン氏とは、対立関係にあるとされています。
この人事について、専門家は次のように話します。
ロシア情勢に詳しい 慶応大学・廣瀬陽子教授:「ワグネルにこれ以上、のさばらせてはいけないというところが、まずあると思います。最高司令官に制服組トップのゲラシモフ氏を置くことによって、軍全体を引き締めて大きな戦いに備えていくということなんだと思う」
■部下“叱責”公開…政権内引き締め狙う
それでも、苦戦が続き、ワグネに頼らざるを得なかったロシア。
プーチン大統領:「遅すぎる!」
今年初めて開催されたロシア政府の会議で、プーチン大統領が軍用機などの調達を担当するマントゥロフ副首相を叱責しました。
プーチン大統領:「(民間機や軍用機の)契約は、いつ結ぶんだ?」
マントゥロフ副首相:「3カ月以内に完了させる予定です」
プーチン大統領:「1カ月で完了させろ、分かったか?」
マントゥロフ副首相:「分かりました」
プーチン大統領は、部下を叱責する様子を公開したことで、国民へのアピールと政権内の引き締めを狙ったとみられています。
■専門家「色んな国の統制きかない状態」
一方、ロシア語の独立系メディアの調査によりますと、ウクライナ侵攻後も、一部のロシア高官の子どもたちがドバイやアメリカなどで「ぜいたくなセレブ休暇」を過ごしていたことが分かりました。
ここに来て、不協和音が聞こえてきたロシア。何が起きているのでしょうか。
廣瀬教授:「色んな国の統制が、きかなくなってきているのだと思う。戦争に対する厭戦(えんせん)機運みたいなものは、かなり高くなってまして。いかなる次の一手を取るかというところで、プーチン大統領も悩ましい毎日なんだと思います」
(「グッド!モーニング」2023年1月16日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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