【報ステ解説】民間軍事会社と“あえて”相性の悪い人選?ロシア軍総司令官また交代(2023年1月12日)

【報ステ解説】民間軍事会社と“あえて”相性の悪い人選?ロシア軍総司令官また交代(2023年1月12日)

【報ステ解説】民間軍事会社と“あえて”相性の悪い人選?ロシア軍総司令官また交代(2023年1月12日)

ウクライナ東部の要衝・ドネツク州バフムトへの足掛かりとなるソレダル。ウクライナ側は否定していますが、ロシアの民間軍事会社『ワグネル』は10日、ソレダルを制圧したと発表しました。

ロシアから見れば、“戦果”をあげた状況です。しかし、その後、決まったのは、侵攻を指揮するスロビキン総司令官の交代。新たに指揮官に就任したのは、制服組トップで、長年プーチン大統領に仕える側近のゲラシモフ参謀総長です。

ロシア国防省は、配置転換の意図について、こう説明します。
ロシア国防省:「任務の規模拡大に対応し、部隊間の緊密な協力、部隊管理の効率アップを目的とするものだ」

これまでの総司令官・スロビキン氏はわずか3カ月で副司令官に降格し、制服組トップ自ら現場の指揮をとる異例の事態です。

突然の交代劇。ロシア軍内部のパワーバランスが影響しているという指摘が出ています。

ロシアが“制圧”を主張するソレダル。先に、その宣言をしたのは、ロシアの民間軍事会社『ワグネル』です。
『ワグネル』創設者・プリゴジン氏:「ソレダルの攻撃には、ワグネル以外のいかなる部隊も参加しなかった」

一方、ロシア国防省は、こう主張します。
ロシア国防省・コナシェンコフ報道官:「空挺部隊がソレダルを南北から封鎖し、航空宇宙軍が敵の複数拠点を攻撃。突撃部隊が市街戦を行っている」

誰が制圧したのかをめぐり、食い違う主張。それだけ、いち民間軍事会社の力が強いことがわかります。そのワグネルと近い関係を築いてきたとされるのが、副司令官に降格したスロビキン氏です。

事実上の“解任劇”を専門家は、こう話します。
軍事アナリストのロブ・リー氏:「政治的理由が背景にあった可能性も十分にあるだろう。ウクライナ侵攻の総司令官として、スロビキンは影響力が強くなり、ショイグ国防相やゲラシモフ参謀総長を通さずにプーチン大統領と直接、話をしていた可能性が高い」

さらに、ワグネルは、新たに総司令官に就任したゲラシモフ氏と犬猿の仲です。ロシア軍内部の足並みが乱れているためとも指摘されている今回の人事は、この先の戦いに影響するのでしょうか。

◆防衛省・防衛研究所の兵頭慎治さんに聞きました。

兵頭さんは「軍の制服組トップが戦闘の指揮をとるのは異例」としたうえで、「軍の指揮統制の立て直しを図るプーチン大統領がとった背水の陣」とみています。

兵頭さんは、今のロシア軍が抱える構造的な問題のなかでも、これまで対応策がなかったのが指揮統制の混乱だといいます。この改善を狙った人事だとみています。

これまでの総司令官と何が違うのでしょうか。

兵頭さんは「ゲラシモフ氏は陸海空すべての軍の上に立つ参謀総長を長年務め、軍の実情を理解する人物。彼でダメなら打つ手がない」ともいえるとしています。「この人物を任命せざるを得ないのがロシアの現状で、プーチン大統領の苦肉の策」とみています。

兵頭さんは、今回の人事には“ワグネル対策”もあるといいます。「強硬派とのつながりが強いワグネルが、正規軍を批判するなど、政治的にも影響を強めている。ワグネルの政治的影響力を抑えるために、“あえて”相性の悪いゲラシモフ氏を据えた面もある」とみています。

兵頭さんは、制服組トップを据えても「戦況を大きく変える可能性は低い」としていますが、“最後の砦”ともいえるゲラシモフ氏が総司令官が就任したことで、今後、ロシアが陸海空軍を束ねた大攻勢を仕掛けるようと意図が明確になった」とみています。ただ、プーチン大統領は「仮にゲラシモフ氏が失敗しても、彼を更迭し、責任を軍に擦り付けることは想定済み」とみています。 (C) CABLE NEWS NETWORK 2023
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