【コンビニトップに聞いてみた】ローソン・竹増貞信社長(2023年1月6日)

【コンビニトップに聞いてみた】ローソン・竹増貞信社長(2023年1月6日)

【コンビニトップに聞いてみた】ローソン・竹増貞信社長(2023年1月6日)

■単なる「商品」だけでないコミュニケーションを商品に付加価値を
 (Q.物価高、燃料費の高騰、為替変動など、先行き不透明なことがたくさん。コンビニ大手として、今年どう消費者に向き合っていく?)
 色んな変化がある方が、その変化をチャンスに捉えて、色んな商品、サービスを新たに提供しながらやっていける。ピンチもたくさんありますが、色んな変化を前向きに捉えて、しっかりと成長につなげていく、そういう1年にしたい。

 (Q.物価高にどう対抗していく?)
 今我々は、「ローソンベーシック」というブランドを、80品目制定しています。これは例えば、明日引っ越しをして、一人暮らしをする時に、その80品目をお買い求め頂くと、その日から暮らしが整えられるという、生活必需品です。ここは、一生懸命企業努力をして、極力値段を抑えていく。一方で、スイーツであったり、デリバリーなどの新しいサービスであったり、こういったところは、お客様としっかりコミュニケーションして、その付加価値を認めて頂ける価格を設定していく。メリハリのある価格設定、商品展開、サービス提供……こういったことを、この1年しっかりやっていきたい。

■弁当も総菜も店内で調理
 (Q.具体的にはどういう付加価値をつけていく?)
 実は今、お店でご飯をたいて、お弁当などもご提供しています。お惣菜もお店で作っています。こういう出来立てのものに対しては、お客様のご評価は非常に高い。これを、たとえばモバイルでオーダー頂いて、出来立ての状態でお待たせせずにお渡しする。こうした、商品とサービスが一体となったものをご提供できれば、お客様のご評価もどんどん上がってくるんじゃないか。単なる「商品」だけではなく、サービスも含めて、しっかりとお客様とコミュニケーションをしていく。そういったことが今後大事になる。

■ハンディキャップある人も働ける職場
 あともう一つは『グリーン』。昨年、『グリーンローソン』というものを、1店舗オープンしました。ここには、アバターのクルーがいて、リモートで働くことができる。今まで、『ローソンで働きたいけれど、ハンディキャップがあって、お店に行けない』という方もたくさんいらっしゃった。そういった方でも、アバターになって、店舗で働ける。全員参加型の店舗を作ろうじゃないかということで、大阪大学の石黒先生と一緒になって、今取り組んでいます。

■洋服のリサイクルにも取り組む
 そして、食品ロスを出さないために、お弁当は冷凍、あるいは出来立て、このどっちかにしていきましょう、と。リサイクルボックスを置いて、洋服も回収して、必要な方に届けていこう、と。そして、冷蔵ケースと冷凍ケース、これに扉をつけて、お客様に開けていただく。これだけで、CO2を減らせる。こういったことを、お客様と一緒になって進めていって、本当の意味でサスティナブルなお店を、お客様、町と一緒に作っていこうじゃないかと。こうした取り組みも、今年はぜひ加速したい。

■日常生活をサポートしていく責任どう果たすか?
 (Q.コンビニは「ちょっと高い」というイメージもありますが、そこの部分について、何か新しいイノベーションなど考えていることは?)
 ……店頭で提供しているコーヒーって、いまだに110円なんですよね。我々ローソンのコーヒーは、エスプレッソマシーンから抽出しています。それでこの値段、他の街なかのコーヒーと比べて、どう思われますか。

 (Q.比べたら安いですね)
 安いですよね。そして、先ほど申し上げた80品目の「ローソンベーシック」も、スーパーマーケットの商品と比べていただいても、まったく引けを取らない競争力がある価格でご提供しているんです。日常生活のなかで、便利なだけじゃなくて、しっかりと経済的にも暮らしに使って頂けるような価格設定、商品展開、そういったことを心がけていますので。決して高いものばかりじゃない。

 (Q.なるほど。これからも、暮らしに身近なお店を目指していく?)
 コロナ禍のなかで、実はお客様から、「日常生活で使いたい」というお声を頂いたんです。ステイホームの生活のなか、『一番近くのローソンで、毎日買い物が済ませられたら』と。よって、今は生鮮野菜も置いているし、冷凍食品もたくさんあります。ユッケや馬刺しまで置いています。お惣菜もあるし、お店でご飯も炊いている。そして、トイレットペーパーから身の回りの物、なんでもそろうんですね。こういった形で、日常生活の中で使っていただくお店に変わったんですね。そういう状態のなかで、コロナ前と同じぐらいの売り上げのご評価を頂くところまで、今きています。日常生活をしっかりとサポートしていく責任、これをどう果たしていくのか。これは、価格面でも、サービス面でも、商品展開面でも、しっかりとやっていかないといけないと思っていますので、価格というところも、この物価上昇のなかでも、強烈に企業努力をして、頑張っていきたい。

■単に高いだけ、単に安いだけ、は「絶対NO」
 (Q.物価高の影響、お客様の買い控えなどはあまり感じていない?)
 徐々には出てきています。高い商品が、ちょっと売れ行きが鈍ってきているというのはありますね。当然ですが、お客様は、「品質に対しての価格」、ここは非常に厳しくご覧になられています。例えばデザートですと、カヌレという商品、これを街で買うと、一つ数百円します。我々はこれを、160円でご提供して、大ヒットになりました。お客様の厳しい目に応える、そういった商品を展開していかないといけないので、単に高いだけ、単に安いだけ、これは絶対ノーですね。当然、値段が上がっていくものはあります。ただ、単に値段が上がるだけじゃなくて、どういう付加価値がついて上がっているのかというところを、お客様は非常によく見てらっしゃいますので。高いだけの価値がどれぐらいあるのか。「これがこの値段だったら安いね」と言われるものであるのか。そういったことが非常に重要だと思っています。

 (Q.今年、もっとも力を入れたいことは?)
 今年はやはり、グリーンへの取り組みに力を入れたい。2050年のカーボンニュートラルを、国、そしてほとんどの企業が、目標として掲げていますが、実行につぐ実行をしていかないと、あっという間に2050年が来てしまうと思うんです。本気でカーボンニュートラルを実現するための取り組みをローソンとしてはやっていきたい。それが先ほど申し上げた、「グリーンローソン」という形で、しっかりお客様と一緒に取り組んでいく。そして、物価高にも対応し、その基礎になる賃上げ、これにもしっかり、前向きに取り組んでいきたい。やはり我々、今、物価高のなかで、お客様に値上げをお願いしています。でも、その責任として、賃金が上がらなければ、消費につながらないですよね。物価だけが上がって、消費が減っていく。これは僕らにとっても、非常に大きなマイナスです。僕ら小売り業としては、値段の上昇をお願いしている。そういうなかでしっかりと賃金も上げていく。そのためには、生産性を上げていく。それによって、消費につながるようなマーケットを作っていかないといけない。それが小売業の責任だと思っていますので、そこはしっかり取り組んでいきたい。

■生産性をいかに上げて行けるか?
 (Q.全体的には賃上げがまだまだ進まないなか、先陣を切っていく勇気はどこから?)
 どうでしょう。ただもう、物価高は始まっていますよね。そのなかで、賃金が上がらなければ、将来的に何が起こるのかは、もう明白ですよね。しっかりとした消費、しっかりとした景気を回していくためにも、値上げをお願いしている以上、それに見合う賃金の上昇は企業努力によって生み出していかなければいけない。その元になるのが、DX(デジタルトランスフォーメーション=デジタル化)であり、DXに適した規制の再整備。アナログ時代にできた規制をデジタル時代に合わせた規制に再整備して頂いて、その上にDXを乗っけていく。これによって生産性が上がっていくと思っています。こうした取り組みによって、物価高と賃金上昇がリンクする形で、消費につながっていく。そういう世の中になっていけばと思います。

 (Q.ローソンが賃上げをするとなると、商品の価格も同時に上がってしまうのかな……と心配になる方もいると思う。そのあたりはどうバランスを?)
 そこはもう、生産性の向上ですね。ここで原資を作っていく。自分たちの生産性を上げることで、賃金を上昇させれば、それは物価高と関係ないところの賃金上昇なわけです。そうするとそれは消費に回っていく。そういう世の中を作っていかないと、単純に値段を上げて、それを追い掛けるように賃金がやや上がる……だと、経済は回っていかない。自分たちの競争力をいかに高められるのか、これが勝負だと思っています。

 (Q.この先の物価高、為替の見通しを、どう分析している?)
 今、春に日本の金融政策も転換点を迎えるんじゃないかと言われていますよね。アメリカについても、やはり年半ば、後半には、金融政策はやや変わってくるかもしれないと言われています。これによって、一方的に150円まで進んだ円安が、どこまで今度は、ゆり戻し、そして金融政策の転換によって、本質的な為替の動向が、どう影響が出るかということになってくるかと思います。円高、120円くらいはあるんじゃないかと思っています。ただ、金融政策がそう変わらないというようなことになれば、また140円に戻るということもあろうかと思いますので、為替に一喜一憂せず、自分たちの生産性をいかに上げて、そしてコストをどう吸収していくのか、ここが、やはり僕らに問われている成長戦略だと思っています。

 (Q.物価高については?)
 2月には、もう値上げが予定されているものがあります。これで一段落つけたいですよね。この春には一段落をつけて、そして本当の意味で、しっかり安定したなかで、賃金が上がっていく。そしてちゃんと消費が回っていく。そういったことを目指していきたい。賃金が上がって、そして物価がついてくるというのが、正しい順番じゃないかと思います。まずそのためには、自分たちの生産性をしっかり上げていかないといけない。そこに物価が安定してくれば、安定して物価が上昇していく…、デフレになるのはよくないですから。そういった循環ができれば、それが正常なマーケットになってくると思います。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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