家電修理の達人 沖縄・離島へ…民宿女将から切実SOS 思い継ぐ“15年愛用マイク”【Jの追跡】(2022年12月19日)

家電修理の達人 沖縄・離島へ…民宿女将から切実SOS 思い継ぐ“15年愛用マイク”【Jの追跡】(2022年12月19日)

家電修理の達人 沖縄・離島へ…民宿女将から切実SOS 思い継ぐ“15年愛用マイク”【Jの追跡】(2022年12月19日)

修理成功率90%以上。全国から依頼が殺到する家電修理の達人に密着。この道一筋50年の達人に、かつてない難題が…!?

沖縄県の離島で、創業50年の民宿を営む女将からの切実な依頼とは…?思いに応えるために、達人は海を渡り離島へ。その行方を追跡しました。

■父の遺品…「レコードプレーヤー」「アンプ」

三重県津市の市街地から、車でおよそ1時間。山間の集落に、達人の作業場があります。

今井和美さん(63)の元にはメーカーや他の業者が「修理不可能」とサジを投げた、難題ばかりが舞い込みます。

この日、73歳の桧作貴史さんが持ち込んだのは、およそ40年前に発売されたレコードプレーヤーとアンプです。

桧作さん:「親父が残したもの。せっかくあるものだから、どんな音がするのか聴いてみたい」

聞けば、18年前に亡くなった父の遺品だといいます。長年放置したままでしたが、今修理を望むのには、あるワケがありました。

早速、点検してみると、ノイズがひどい…。

今井さん:「謎のノイズだ」「なんか変!調べる」

内部を分解し、ノイズの原因を探ると…原因は、サビでした。

今井さん:「あ!コレかー。ピッと付いたサビだ。にじんだようなあとが付いてる」

部品のあちらこちらに、サビが生じていました。

今井さん:「古いやつは、サビとの闘いだね。使わなくても、時々引っ張り出して、大切なモノは動かすのが大事」

サビ落としは、手作業で念入りに。今井さんは、丸2日かけ、徹底的にメンテナンスし、見事、クリアな音が蘇りました。

今井さん:「うん、ノイズも消えたし」

後日、依頼した桧作さんの元に…。

桧作さん:「私一人だから、誰もいないんだけど、申し訳ない」

18年前に他界した父親の実家に、今は、一人で暮らしているという桧作さん。

桧作さん:「直りましたね」

聞けば、桧作さんはけがや病気が重なり、自宅で一人過ごす時間が増えてきたといいます。

桧作さん:「ゆっくり音楽でも聴けば良いのかなと」

ふと、耳を傾けたくなったのが、父親が集めていたレコードだったとか。

桧作さん:「初めて聞く音ですのでね。非常に感動しております」

父が残した音楽は、これからの日常に、潤いをもたらしてくれそうです。

■1300キロ離れた島から…民宿営む女将のSOS

年間800件の修理を手掛ける今井さんは家電修理一筋で、およそ半世紀の大ベテラン。

今井さん:「同じ機能の物を作らなきゃいけない」「(Q.作るんですか?)うん」

部品がなければ、なんとゼロから手作り、こうした技術があるからこそ、保証期限をとっくに過ぎた家電でも、修理できるというわけです。

今井さん:「毎日それをやっていれば、うまくなるもんですよ」

そんな今井さんにこの日、かつてない依頼が飛び込みました。

今井さん:「沖縄県島尻郡渡嘉敷村…」

SOSは、那覇からおよそ30キロ。南海に浮かぶ離島からです。

渡嘉敷島は、世界でも有数の透明度を誇る美しい海に囲まれ、夏場には、多くの観光客でにぎわう自然豊かな島。依頼は、その島で、創業50年の民宿を営む、女将さんからのものでした。

女将からの手紙:「この旧型のマイクが宝物でした。直ることを祈って、お願いします」

切実なメッセージと共に届いたのは、テープで補修された跡が残る、使い込まれた有線マイク。

お客さんを送迎するマイクロバスに取り付け、観光ガイドをするのに、大事に大事に15年も愛用してきましたが、壊れて、使えなくなってしまったといいます。しかし…。

今井さん:「この先に、何が付いていたんだろう。コネクター不明だから修理できない…」

マイクもバスもメーカーでは、古すぎて対応できなかったといいます。さらに…。

今井さん:「(バス側の)本体が、壊れているかもしれない」

マイクだけでなく、バスに内蔵されているアンプ自体が壊れている可能性もあるといいます。すると…。

今井さん:「渡嘉敷島まで、行くか」

なんと、およそ1300キロ離れた離島まで出張修理に行くことになりました。

今井さん:「30年くらい前に、この島に来たことがある。離島って電器店がないところが多くて、潮風で電器製品がやられていて。そういうのを修理しようかなと。結構、修理もやりました」

■夫が愛した「渡嘉敷島」 魅力伝え続けたい

若い頃、離島に出張し、修理の腕を磨いていたという今井さん。懐かしい記憶が、職人魂に火をつけたのかもしれません。

三重からおよそ6時間かけ、渡嘉敷島に到着。出迎えてくれたのは、修理を依頼した民宿の女将・国吉佳奈子さん(70)です。

今井さん:「おぉ、すごい写真」
国吉さん:「築50年の」

50年前、渡嘉敷島に最初に誕生した民宿「国吉荘」。島出身の夫・栄さんが、渡嘉敷島の魅力を発信したいと始めたのですが、31年前、栄さんが急性白血病で他界してからは、国吉さんが女将として、宿を切り盛り。大型免許を取得し、客の送迎と観光ガイドを続けてきました。

国吉さん:「がむしゃらに。(夫が)生きていたら、こうするだろうなって。常に夫と一緒に、やっているつもりできました」

マイクの修理を望んだのは、夫に代わりハンドルを握り、夫が愛した渡嘉敷島の魅力を訪れる人に伝え続けたいからだといいます。

国吉さん:「彼の分も生きているんで。一人でも多くの人に(渡嘉敷島を)分かってほしい。今、自分はそれが務めだと」

島ににぎわいが戻りつつあるなかで、切なる願いに今井さんは応えることができるでしょうか?早速、点検を開始します。

今井さん:「スピーカー4つ付いているから、スピーカーが不良ってことは、まずないか…鳴ると思うけどね」

確認したところ、バス自体には異常がない様子。

今井さん:「これ、先っぽ。新しいの付けてきました」
国吉さん:「先っぽが問題なんです。新品のピタッと合うマイクが、今まで5つダメだった」
今井さん:「差しますよ」

やはり、マイク自体が故障していたのか…。

今井さん:「合うね。OK、いけましたね」

国吉さん:「すっごい」

今井さん:「はーい。はいはいはい、直りました!おめでとうございます。これから、ガイドに行って頂きます」

国吉さん:「ありがとうございます」

実は今井さん、島で部品が手に入らない事態に備え、バスの年式からあたりをつけ、マイク本体の修理はすでに終えていたのです。

今井さん:「差し込みがね、今のタイプだと、ステレオになっていて合わない。モノラル用をだいたいの年式を想定して」

結果的には、今井さんがわざわざ渡嘉敷島まで来るまでもなかった形ですが…。

今井さん:「さあ、海にいこう」

国吉さん:「左側に見えるのが、西海岸なんですね」

よみがえったマイクで、お客さん第一号は今井さんです。

国吉さん:「渡嘉敷の良さを伝えられることには全力で、元気なうちはやっていきたい。本当に、ありがたいです」

今井さん:「送っても、良かったんだろうけど。それは結果論だからね。より確実だったら、こうやって来られたら、なお良いですよね」

今井さんはきょうも、誰かのSOSに応えています。

(「スーパーJチャンネル」2022年12月16日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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