【解説】「生前贈与」ルール見直しへ 早くしないと損?

【解説】「生前贈与」ルール見直しへ 早くしないと損?

【解説】「生前贈与」ルール見直しへ 早くしないと損?

子どもや孫にお金や資産を残す「生前贈与」にも大きく関わる相続税・贈与税の見直しなど、まもなくまとめられる税制改正について、詳しくお伝えします。

●相続は「まだ先」?
●早めが得…狙いは?
●“富裕層”課税強化へ

以上の3つのポイントについて、詳しく解説します。

■生前贈与の相続税対象期間 7年に延長へ
「親から子へ、おじいちゃん・おばあちゃんから孫へ、どうやってお金や資産を渡していくか、残していくか」生前贈与や相続について、家族で話し合ったことがあるか、街の人に聞いてみました。

自由業(60代)
「それ(関心)はあります。ネットで調べたりはしていますけど、まだ自分がそんなにすぐに死なないだろうって。ちゃんとしなきゃいけないとは思っている」

主婦(70代)
「その話はすでに家族で話し合っていますので、我が家としては終わっています。防衛の増税にはすごく関心がありますけど、贈与税あんまりピンときてないですね」

主婦(70代)
「(対策は)特にしてませんね。やらねばなんでしょうけど。だいたいの方がそうなんでしょうけど、やっぱり面倒」

政府・与党は、「生前贈与」「相続」について見直す方針です。「生前贈与」は、子や孫へなど生きているうちにお金や資産を渡す制度です。現在は、毎年110万円までは贈与税なしで、お金や資産を渡すことができます。

ただし、贈る側が80歳で亡くなった場合、その時点からさかのぼって、3年間に子や孫が受け取った資産は「相続財産」に加えられ、場合によっては「相続税」がかかるケースがあります。

今回、政府・与党は、相続税の対象となる期間を、今の「3年」から「7年」に広げる方針です。逆に言えば、7年より前に生前贈与すれば、相続税の対象にはならないことになります。早めに生前贈与した方が得になるケースがあります。

例えば、80歳で亡くなった人が60歳から毎年「110万円」ずつ贈与していた場合、7年より前の13年分、子や孫がもらった「1430万円(110万円×13年)」については非課税となります。政府としては、より早く若い世代に資産を受け渡すことによって、社会にお金を回して、経済の活性化を促すのが狙いの1つです。もし70歳で亡くなった場合は、さかのぼって63歳以降の7年分は相続税の対象になります。

この見直しは、5年後の2027年から段階的に延長し、「亡くなる前の7年」となるのは2031年以降とされています。いずれにしても、「生前贈与するなら早めにどうぞ」というきっかけにはなるかもしれません。

■「教育資金の贈与」非課税3年延長へ
他にも「生前贈与」を巡っては、特例が実は今もあります。その1つが、「教育資金」です。30歳未満の子や孫へ教育にかかる費用、具体的には「学校の入学金・授業料」「塾・習い事の月謝」を一括で援助する場合、「1500万円まで贈与税が非課税」という特例もあります。教育資金の特例措置は2023年3月が期限でしたが、3年延長する方針です。

ただ、この特例を使わなくても、みなさんもやっていると思いますが、例えば、おじいちゃん・おばあちゃんが孫の学費を「私が払うよ」と払った場合、特例を使わなくても、そもそも贈与税はかかりません。

この制度は、一気にたくさん贈与したいような「資産をたくさん持っている富裕層に有利ではないか」ということで、「ある種の格差拡大につながるのでは」という懸念もあります。「お金持ち優遇ではないか」という指摘が当初からありました。そこで政府・与党は、富裕層の場合、非課税となる条件を今よりも厳しくする方針ということです。

■「1億円の壁」超富裕層の課税強化へ
今、富裕層への課税強化の動きが強まっています。「1億円の壁」という言葉をご存じでしょうか。

みなさんの給与などにかかる「所得税」は、当然、累進課税が適用されています。所得税と社会保険料を合わせた負担率は、所得が上がるにつれて、上がっていきます。

ところが、所得が1億円を超えると、逆に負担率が下がります。所得50億円~100億円の層の負担率は「17.2%」となります。所得300万円~400万円の層の負担率「17.9%」よりも低く、全体を通じて最も低い負担率となっています。

所得が1億円を超えると所得税の負担率が下がる、これがいわゆる「1億円の壁」と言われるものです。「お金持ち優遇だ」「富裕層優遇だ」と指摘されてきました。

そのため政府・与党は、年間所得が30億円を超える「超富裕層」に対して、追加で課税して、税負担を重くする方針を固めました。公平な社会を実現するためですが、実際の対象人数は日本で200人~300人程度ということです。

     ◇

「自分には関係ないかも」と思うかもしれませんが、ぜひ制度を知ることで、家族で我が家の将来を考える1つのきっかけにはなるかと思います。
(2022年12月14日放送 「news every.」より)

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