【報ステ】将棋・羽生善治九段に聞く“復活と進化”「AIの世界と融合してきている」(2022年12月9日)
8日、将棋で注目の対局がありました。
“令和の天才”藤井聡太五冠(20)の相手は“平成の天才”と言われた羽生善治九段(52)です。
8日の対局は惜しくも敗れた羽生九段ですが、タイトルを全て失い、棋士人生で初めて負け越した去年から一転して、今年は快進撃を続けています。
52歳にしての“復活と進化”。大一番から一夜明けた羽生九段に、その理由を聞きました。
プロ棋士になって37年。“平成の天才”と称される羽生善治九段が積み上げたタイトルは、史上最多の99期に上ります。
しかし、ここ数年、将棋界では大きな変化が起きていました。
AIを駆使した若手棋士が台頭。その一人が、AIの申し子として最も躍進した藤井五冠です。
羽生九段は、そんな若手棋士たちに次々とタイトルを奪われ、「羽生の時代は終わった」とも囁かれました。
(Q.前年度、なぜ負けが込んでしまったのか。どう受け止めていますか)
羽生九段:将棋の世界は日進月歩でどんどん変わっていくので、そこに合わせて、自分自身も色々と試行錯誤を繰り返していたが、残念ながら良い方向には向いていなかったという形。
その日進月歩をもたらしているAIは、将棋の根底を変えつつあります。
棋士が長い時間を費やし、ひねり出していた最善手を瞬時に計算し、導き出します。
若手棋士たちは、そのAIを積極的に将棋の研究に取り入れました。
しかし、そのAIが将棋界にどのような変化をもたらすのか。天才と呼ばれた羽生九段でさえも、確信があったわけではありません。
羽生九段(2017年):コンピューターは膨大な情報を生み出してくれます。それがずっと並行して、同じように進化するかどうかは、まだ未知数で、数年経ってみないと分からないんじゃないかな。
AI世代の棋士たち躍進する一方で、羽生九段は昨年度、14勝24敗とプロ入り後初めての負け越しを喫します。
羽生九段と数々の名勝負を繰り広げてきた、谷川十七世名人はこう話します。
谷川浩司十七世名人(60):通算勝率7割くらいだった人が突然、負け越し。初めて負け越したわけですから、これは大事件。AIの進化によって、将棋の常識が崩れていった。令和に入る少し前から、ベテランの棋士も若手の棋士も、一から将棋を見つめ直す時代になった。羽生さんにとって昨年というのは、自分の将棋を見つめ直す、試行錯誤をする期間だったのではないか。
しかし今年に入り、永瀬拓也王座(30)、渡辺明名人(38)、豊島将之九段(32)を撃破。突如、羽生九段の快進撃が始まります。
40年以上競ってきたライバルも、羽生九段の変化を感じ取っていました。
森内俊之九段(52):体感としては、以前より(羽生さんは)AIの研究を重視している印象。テクノロジーを活用した自分のパワーアップ。そういうことに取り組んで、アナログ時代の強さと、最近のデジタルを加えた強さもあるので、そのあたりは若手棋士以上に両方が兼ね備えられれば、強さを発揮すると。そういったこともあるのではないかと。
卓越した勝負勘とAIとの融合が生み出した天才棋士のさらなる進化。その背景にあったものとは。
(Q.将棋はAIによって目まぐるしくなったと思うが、実感はありますか)
羽生九段:ありますね。棋士って、どういうために存在している価値・意義があるのか。突き付けられている状況。
(Q.AIとの向き合い方を変えましたか)
羽生九段:どういうふうに取り入れるべきかということは、現在進行形で考え続けているところがあって。あまり、うのみにしてもいけないし、かといって全然それ(AI)を評価しないわけにもいかないので。その適度さというのはなかなか難しい。
(Q.一昔前、AI対人間の将棋を見て、AIが勝ったと転機がありました。今のAIとの向き合い方は、明らかに違ってきてると思いますが、いかがですか)
羽生九段:一昔前は、AI同士の対戦、人間同士の対戦って、同じルールだが別世界の出来事。完全に違う2つの世界だったが、今は混ざってきているというか、融合してきている感じ。影響を人間の世界がかなり受けるようになってきた。
(Q.人間であることの価値や意義は、AIがいくら幅を利かせても揺るぎませんか)
羽生九段:AIが評価を下すことが、人間の個性とか幅を広げるかどうかは、また分からないところで、逆に狭めてしまう可能性もある。「何のために将棋指している」とか「棋士はどういうために存在している価値や意義があるのか」とか、結構そういうことが問われている気がする。
来年1月には、王将位のタイトルをかけ、挑戦者として藤井五冠に挑みます。
羽生九段、52歳にして2年ぶりに戻る大舞台です。
(Q.50歳を超えて、自分の衰えや加齢を意識することはありますか)
羽生九段:考えたりすることはあまりないが、聞かれることは多くなりますよね。気にしている人は世の中結構多いとすごい実感しますけど。
(Q.不愉快じゃないですか)
羽生九段:そういうもんだなって受け止めています。
(Q.どこかで疲れたり、もういいかなと思うこともあるかと思いますが、長い道のりを走っていけますか)
羽生九段:一番長く現役を続けられた先生は、加藤(一二三)九段。現役生活63年だが、私はまだ半分をちょっと超えたぐらいなので。またこれから30年となると、相当やる気なくなるので、目の前の1年頑張ります。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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