【報ステ解説】「“タイパ”重視の傾向も」就活テスト“替え玉受験”で28歳男逮捕(2022年11月22日)

【報ステ解説】「“タイパ”重視の傾向も」就活テスト“替え玉受験”で28歳男逮捕(2022年11月22日)

【報ステ解説】「“タイパ”重視の傾向も」就活テスト“替え玉受験”で28歳男逮捕(2022年11月22日)

就職試験のWEBテストをめぐり、関西電力の社員・田中信人容疑者(28)が“替え玉受検”をしていた疑いで逮捕されました。

こうした受験の代行業の存在は、就活生のなかでは割とよく知られた話だといいます。

大学3年生:「信号無視みたいなレベルで、みんなやっている」

大学4年生:「よく聞くっちゃ聞く話。それで実際に受かった人もいる」

田中容疑者は、SNSで代行を呼び掛け、成りすましを依頼した就活中の女子大学生から、報酬として4000円を受け取っていました。

女子大学生は、合計23社分の替え玉受験を依頼していて、書類送検されています。

企業は、WEB上で実施する適性検査のIDを、入社を希望する就活生に発行します。

就活生は、SNSなどで見つけた代行業者にIDとパスワードを伝え、代わりに回答を企業に送付してもらいます。

相場は1科目数千円程度と格安なうえ、通過率9割以上とうたう業者も存在します。

適性検査には、言語能力や計算能力を問う問題、さらには、その人の特徴を測る問題などがあります。

制限時間以内にテンポよく、多数の問題を解かなくてはなりません。

このような就職試験のWEBテストに対して、学生はこう話します。

適性検査の初受験を終えた学生:「面接にまず行かないといけないので、ここを通らないと。面接行けなかったら、結局自分を見てもらえずに終わるので、なんか納得いかない」

学生にとって関門であるWEBテスト。企業はなぜ行うのでしょうか。

企業に、WEBテストを提供する会社を取材しました。

リクルートマネジメントソリューションズ SPI開発責任者・園田友樹さん:「人物情報の客観性とか、実際に入社した後のパフォーマンスに関連するような適性だったり、持ち味をその方が持っているかを掘り下げるのが主な活用方法」

コロナ禍で、オンラインでテストを実施する企業が増えたなかで、対策も進められてきました。

リクルートマネジメントソリューションズ SPI開発責任者・園田友樹さん:「オンラインであっても、本人認証ですとか、テスト実施中でも監督をできるサービスをスタートして、受験者にとっても利便性が高く、かつ公正さを原則担保するという環境をつくってきた」

ところが、状況はすでにいたちごっこ。企業側は慎重に臨んでいるといいます。

企業採用担当者:「面接していて『あれ?おかしい』と思うことはある。面接で化けの皮は剥がれる」

それでも就職活動に悩む学生にとって、田中容疑者は頼りになる存在だったのでしょうか。

4年前、大学の友人から誘われて、受験の代行を始めたという田中容疑者。学生時代の知り合いはこう話します。

大学時代の同級生:「明るくて、接しやすいキャラクターだった。基本的には有機化学の勉強をしていたと思います」

京都大学大学院を卒業した田中容疑者は、関西電力で働きながら、替え玉受験を1科目2000円で請け負っていました。

報酬として、今年だけで約400万円を手に入れていたとみられます。

働きながら、精力的に替え玉受験をしていた田中容疑者。勤務先の関西電力は「当社社員が逮捕されたことは大変遺憾であり、重く受け止めている。今後、事実関係を確認の上、厳正に対処してまいりたい」とコメントしています。

逮捕のきっかけは、警視庁のサイバーパトロールでした。

警戒を強めていたところ、3月に犯行が発覚。「実績がしっかりとしており、アピールしていて、目立っていた」といいます。

替え玉受検の業者が摘発されるのは全国で初めてのことです。

容疑を認めている田中容疑者は…。

田中容疑者:「はじめは小遣い目的でやっているうちに、学生に感謝されたり、就活の相談を受け、お金ももらえて、非常にやりがいを感じていたが、違法性の指摘を受け、冷静に考えると、学生にも企業にも非常に悪いことをした」

コロナ禍だから利用してしまう事情があるのでしょうか。

短大生(20):「コロナで学校も通えていない人も一定数いると思うので、そういう人たちは頼ることができないので、人の手を。だから大変だと思います。DM(ダイレクトメッセージ)で簡単に情報を交換もでき、依頼もしやすい。ハッシュタグで『#レポート』『#代行』があったら検索に出てきやすいし、代行があるよと知っていたら(相談を)DMでやっちゃうのかな」

***

適性検査で企業は何をみるのでしょうか。

学生の就職活動支援をするキャリアコンサルタント・上田晶美さんに聞きました。

上田晶美さん:「適性検査は、学生の基礎力をみる指標。企業によって、重視の度合いは違う。大企業の場合、大人数の募集から効率的に面接に進む人を絞る、短時間で多くの業務をこなせる人材を選ぶ、入社後の配属・仕事の適正を見極めるための判断材料にすることもある」

なぜ不正が横行するのでしょうか。

学生に「就職活動で苦戦していること」を聞いたアンケートでは「面接対策」が69%と最も多いなか、37%の人が「WEBテストの勉強」を挙げています。

上田晶美さんによりますと、コロナ禍で、周りと対面の情報交換が減り、就職活動に必要な準備を知らない学生が増加したことが背景にあるのではないかといいます。

また、最近の学生が、限られた時間を効率的に使おうとする動き『タイムパフォーマンス』、いわゆる“タイパ”を重視する傾向あることも関係している可能性があると指摘します。

上田晶美さん:「準備すれば、適性検査はある程度の点数が取れるが、それ以外の準備(面接など)に時間を使い、オンライン化で短絡的に代行を頼んでしまう可能性も」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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