「娘の命が危険に」全米一厳しい“中絶禁止法”に反対する母親たち『新MAGA』中間選挙(2022年10月27日)
アメリカの今後を占う中間選挙まで2週間を切りました。
争点となっているのが「人工妊娠中絶の是非」です。
連邦最高裁が「中絶は憲法で認められた女性の権利」とする49年前の判決を6月に覆してから、初めて迎える大きな選挙。激しい論戦が続く、テキサス州知事選を取材しました。
トランプ前大統領を支持する共和党・保守派は“人工妊娠中絶”に強く反対しています。
共和党支持者:「中絶には反対です。息子の産みの母親は、中絶せず養子縁組を選びました」
共和党支持者:「大人として、子どもをつくる行為をしたのなら、その結果も受け入れるべきではないでしょうか」
テキサス州では去年、「妊娠6週目以降の中絶禁止」「レイプの場合も例外としない」という“全米一厳しい”法律が施行されました。
成立させたのは共和党の現職、アボット知事です。
アボット知事:「この法律で、心拍のあるすべての胎児の命が、中絶の悲劇から救われる」
中絶禁止を支持する、日系の松下薫さん一家を訪ねました。
生活の中心にあるのはキリスト教への信仰心だといいます。
松下薫さん:「これは『ルカの福音書』。今便利で、これ(スマホ)の中に全部入っているので。日々、聖書を読んでいると、聖書の中からヒントを感じて」
息子・誠さん:「毎週日曜日に教会に行きます。今は授業もあるので、週を通して教会に通っています。私にとって生活の一部です」
「神が人を創造した」と説く聖書の教えもその一部。
息子・誠さん:「命は祝福するものです。赤ん坊を殺すなんて。聖書の教えに、より近い候補を支持します」
妻・パトリシアさん:「小さな胎児も生きています。中絶は殺人です。今回はアボット氏に投票します」
毎週通うという教会を取材することができました。
毎週日曜日、約5000人の信者が集まります。
牧師:「神の声を聞き、それに従えば、人生のすべてが変わります」
近年、アメリカで増えているこうしたメガチャーチ。人が集まる理由は礼拝だけではありません。
大人たちはコーヒーで一息つき、子どもたちは友達に会いに行く、こうした教会が新たなコミュニティーになっています。
教会スタッフ:「私たち夫妻も最初、知り合いは1組だけでしたが、やがて知り合いが増え、みんな家族同然です」
ここに通う大半の人は中絶禁止を支持しています。
キリスト教の保守的な価値観が根強いテキサス州。これまでの調査でも中絶反対派が54%と、中絶容認派の39%を上回っています。
しかし、そんな州にも変化が。立ち上がったのは母たちでした。
民主党オルーク候補の支持者、ハイディー・ホブダさんは、3人の子どもをもつ母親です。選挙活動に今回初めて参加しました。
きっかけは、連邦最高裁の「憲法は中絶の権利を与えていない」とする判断以降、各州が次々と規制を強める現状に危機感を覚えたことです。
気温30度のなか、50軒以上のドアをたたき、支持を訴えました。
民主党ボランティア、ハイディー・ホブダさん:「私にとって、中絶の問題は重大です。50年間守られてきた権利が女性から奪われました。非道であるだけでなく、言葉が見つかりませんが、恐ろしく感じます。こういったシンプルな行動で、世の中が変わることがあると思います」
アボット知事に対抗する民主党候補、ベト・オルーク氏の集会には女性たちの姿が目立ちます。
民主党・オルーク候補:「(Q.中絶はどれくらい今回の選挙に影響するのでしょうか)テキサスの中絶禁止法が全米で最も厳しいのは、アボットのせいです。選挙での勝利は、女性の自己決定権を取り戻すことなので重要です」
彼女たちが掲げるのは「母親はグレッグアボットに反対する(Mothers Against Greg Abbott)」。“新MAGA”と呼ばれています。
活動するアンジーさんは共和党員です。
アンジー・フェニモアさん:「私には娘たちがいます。これは娘たちの問題なのです。選ぶ権利が奪われ、娘たちの命が危険にさらされたことに怒っています。今は民主党と一緒に闘うつもりです。私たちの権利を守るためには、それが正しいと思うからです」
オルーク氏も懸命にまきかえしていますが、最新の世論調査では、アボット氏が51.3%、オルーク氏が43.0%と、アボット氏が8.3ポイントリードしています。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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