中国共産党大会の裏で激化する台湾めぐる“情報戦”偽ニュースで分断狙う「網軍」とは(2022年10月16日)

中国共産党大会の裏で激化する台湾めぐる“情報戦”偽ニュースで分断狙う「網軍」とは(2022年10月16日)

中国共産党大会の裏で激化する台湾めぐる“情報戦”偽ニュースで分断狙う「網軍」とは(2022年10月16日)

最高指導部の人事を決める5年に一度の中国共産党大会が16日、開幕しました。
台湾有事の懸念が高まる中、習近平氏はどう動くのか。
台湾ですでに始まっている「情報戦」の実態を取材しました。

▽習総書記「台湾への武力行使 放棄せず」
(熱田大記者)「きょう共産党大会が開幕する天安門広場です。これだけの人だかりが集まるのは久しぶりのような気がします」
(冨坂範明 中国総局長)「世界中の記者たちが人民大会堂に集まりました。まもなく中国共産党大会が始まります」
手拍子で迎えられ、それに笑顔でこたえる党トップの習近平総書記。
16日、5年に一度開かれる、中国共産党の党大会が開幕しました。
(中国共産党 習近平総書記)
「同志たちよ、新時代の偉大な成果は党と人民がともに奮闘し生まれたものだ」
党大会は最高指導部の人事や今後の基本方針を決める、中国で最も重要とされる会議。
異例の3期目の続投が確実視される習氏は、注目された“台湾政策”について、こう発言しました。
(中国共産党 習近平総書記)
「党が台湾問題を解決するという戦略は堅持し、祖国統一の大業を揺るぎなく推進する。台湾問題を解決することは中国人自身のことであり、中国人が決めるべきである。我々は最大限の誠意と努力で、平和による統一を推進する。しかし、武力行使を放棄する約束は絶対にしない。必要なあらゆる措置を取るという選択肢は留保する」
習氏が、党大会で「武力行使」に触れるのは初めてのことです。
(中国共産党 習近平総書記)
「国家の統一、民族の復興という歴史的車輪は前進し、祖国統一は必ず実現しなければならず、必ず実現できるものである。」
中国が台湾に武力行使することはあるのでしょうか?習氏の演説について、台湾の人々は…
(女性)「不安はあるけど気にしていない」
(男性)「現状維持がベストだと思う」

▽ペロシ氏を「魔女婆」大型モニター“乗っ取り”か
実は台湾では、すでに激しい「情報戦」が始まっています。
(ハッカー組織「APT27」)
「世界の皆さん、こんにちは。私たちはAPT27です」
8月、“台湾へのサイバー攻撃”を予告したハッカー組織。
(ハッカー組織「APT27」)
「台湾は古来より中国の領土です。台湾に対する特別なサイバー作戦を開始する予定です。どうぞお楽しみに。幸運を祈ります」
この動画が投稿されたのはアメリカのペロシ下院議長が台湾に到着した翌日。すると台湾南部・高雄市の駅の大型モニターに…
「魔女婆(まじょばばあ)の台湾訪問は祖国の主権に対する重大な挑発だ」との表示が突如現れました。
さらに同じ日…コンビニの複数の店舗でもペロシ氏への悪意あるメッセージが…
「戦争屋ペロシは台湾を出ていけ」
被害は台湾中部の役場でも…
(役場職員)「初めての状況なので画面を黒くしました。しかしハッカーにまた外部から接続されて、モニターを乗っ取っとられてしまいました」
外交部や国防部などの行政機関も含め同時多発的に、“過去最大規模”のサイバー攻撃が起きたのです。
(デジタル政策を担当 オードリー・タン氏)
「乗っ取られたモニターはビジネス用で、広告会社が攻撃されたのが原因です。きのうは各公的機関がネット攻撃を受けて、データ量は約1.5万GB以上、1日当たりの過去最大量の約23倍に上るサイバー攻撃がありました」
今回、犯行声明を出した組織について台湾メディアは“中国のハッカー組織”だと報じています。
(ハッカー組織「APT27」)
「これはほんの序の口で、我々はまだ台湾の20万台以上のデバイスを掌握しています。もし今後も挑発をするのであれば我々は戻ってきます。幸運を祈ります」

▽中国「網軍」とは… 激化する台湾“情報戦”
ペロシ氏の台湾訪問に反発して弾道ミサイルを発射した中国。台湾を取り囲む形で大規模な実弾射撃演習を行いました。
NGO「台湾ファクトチェックセンター」によればこの時期、“大量のフェイクニュース”もネット上に出回ったといいます。
(台湾ファクトチェックセンター 陳慧敏 編集長)
「これは非常に多くの軍隊が集結して台湾を狙っている(という偽情報です)」
「待ちに待った1000年に一度のチャンス」。そんな文言と共に投稿された写真は、“台湾の対岸に集結した人民解放軍”だとして拡散しました。
しかし、NGOが画像を検索すると…出てきたのはCNNのサイト。
北朝鮮が2017年に行った軍事演習の写真だったことが分かりました。
(台湾ファクトチェックセンター 陳慧敏 編集長)
「中国軍がすでに福建省に集結したと見せかけ台湾に脅威を与えました。こちらが拡散したと考えるのは、ロジックに合いません。私たちは中国と関連のある人物だと見ています」
台湾国防部によると、ペロシ氏訪問の前後に確認したフェイクニュースは272件に及んだといいます。
中国には、フェイクニュースを使って台湾社会を分断する「網軍」と呼ばれるネット部隊が存在すると台湾の専門家はみています。
(中国の統一戦略を研究 台湾・淡江大学 林穎佑助教授)
「網軍は、宣伝や虚偽情報の拡散が主な活動です。台湾で“ローカル協力者”と呼ばれる人々を利用し、台湾内部から(フェイクニュースを)送信することもあります。『台湾人を使って台湾人を制する』という手法はとても有効なのです」

▽「交流ツアー」に参加 知らずに広告塔に?
さらに取材を進めると…
張珮シン(チョウ・ペイシン)さん。思いもよらず、中国による情報戦を体験したといいます。
(台湾在住 張珮シンさん)「共産党の浸透、情報戦、心理戦いずれも確かに存在しています」
それは今から4年前、張さんが参加した中国大陸への交流ツアーでのことでした。
受け入れ先の窓口になったのは中国の台湾政策を担当する部署。およそ40日間滞在し国有企業でインターンシップにも参加しました。
(張珮シンさん)「航空券だけが自費で、現地の飲食、遊びなど全部無料だったと覚えています。特別に大陸に行きたいわけではく、ただ海外で様々な経験をしたかった」
当時は政治への関心もあまりなく、費用の安さから参加を決めたという張さん。ツアーの目的は学生同志の交流と聞かされていましたが…
(張珮シンさん)「滞在中、ほとんどの時間は授業を受けていました。はっきりと言わないけれども、台湾と香港の比較や、中国と他の国を比較して、歴史・経済を解説して、台湾がいま(統一問題を)選択する段階に来ていると」
現地での授業をメモしたノートには…
『社会主義しか中国を救うことはできない』
ツアー中、『中台統一』という政治的メッセージを随所に感じたといいます。
(張珮シンさん)「『統一が素晴らしい』、『統一万歳』と言った台湾の学生がいて、その場でみな拍手していました」
ツアー終了後、台湾の主催団体のホームページには、参加した張さんのこんな言葉が紹介されています。
『(張さんは)将来は重慶で働きたいと決意を固めたという』
しかし「一切そんな話はしていない」と本人は否定します。張さんは中台統一のメッセージを広める“広告塔”にされたのでしょうか?
(張珮シンさん)「“利用された”と思いたくないが、怖いと思いました。政治的意図が至るところで感じられた」
実はその台湾の主催団体の創設者。中台統一を掲げる台湾の政党の幹部という立場でもあったのです。
中国大陸のツアーと中台統一の関係は…。
主催団体の事務所がある台北市内のビルの一室に向かうと…
その人物は不在。詳しいことは答えられないとの回答でした。

▽異例の3期目へ「情報戦」さらに激化か
(中国共産党 習近平総書記)
「中華民族の偉大な復興を全面的に推進するために、団結奮闘しようではないか」
台湾の専門家は、異例の3期目の続投で習氏が「情報戦」を本格化させる可能性があるとみています。
(中国の統一戦略を研究 台湾・淡江大学 林穎佑助教授)
「習近平氏は、自分の歴史的な位置づけを定めたいのでしょう。2期目は香港でした。ですから3期目になったら台湾統一に、より力を入れると思います。情報戦が将来の主流になることは確実です。情報の脅威・破壊力は今の時代、ミサイルよりもはるかに効果が高いと思います。」

10月16日『サンデーステーション』より (C) CABLE NEWS NETWORK 2022
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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