【独自検証】静岡 観光バス横転事故の原因は?現場ルートを“観光バス”で走ると…(2022年10月15日)
全国旅行支援と水際対策の緩和が始まってから、初めての週末。秋の行楽シーズンに、各地は多くの観光客で賑わいました。
旅行会社では、2年前のGOTOトラベルを超える問い合わせ数になっているといいます。
旅行会社ゆこゆこ 徳田和嘉子社長)「10万コールを超えて取り切れない形で通常の20倍、1時間で1日分お電話が鳴るような状況」
▼「全国旅行支援」対象ツアーバス横転 1人死亡
ようやく旅行機運が高まった矢先、痛ましい事故も起きています。静岡県の県道「ふじあざみライン」でツアーバスが横転。友人と乗車していた枝川恵美子さん(74)が死亡、20人が重軽傷を負っています。ツアーは全国旅行支援の対象で、富士山5合目の散策を終えて下山する途中に横転。このあと沼津市でランチをする予定でした。
ツアーバスで富士山に訪れた人)「シートベルトは常にしておくようにと言われました。シートベルトの見回りもしていました」
警察は逮捕した運転手の野口祐太容疑者をけさ送検。野口容疑者は今回のルートを運転するのが、初めてだったことがわかっています。
▼運航会社の元運転手が証言
サタデーステーションは、このバスの運航会社で5年前まで運転手をしていた男性に話を聞くことができました。
美杉観光バスの元運転手)「ついにやってしまったかと。僕らのころはあまり教育とかそういうことよりも『とりあえず免許があるなら出しちゃえ』という感じでしたね」
「美杉観光バス」は運航の安全性を評価する制度で最高ランクの三ツ星に認定されていたといいますが…
元運転手)「星3つあるから、運転うまいのかと言ったらそうじゃない」
事故が起きた「ふじあざみライン」を走行した経験もあるという男性。当時、走行時の“注意点”をメモに残していました。
元運転手)「ここにチェックが入ってますけどここはちょっと急カーブだよっていう意味。狭くてのぼりがきついから、2番3番というのは、2速3速でそこまで落として、2速3速のエンジンブレーキを利かす必要があるということ」
▼独自検証 大型バスで同ルートを下ると?
現場はいったいどんな道なのでしょうか。事故を起こしたバスとほぼ同じ大きさのバスを使って、地元のベテラン運転手2人と検証しました。
地元ベテラン運転手 土橋高明さん)「道幅がところどころ狭くて、きついヘアピンカーブで勾配があるので、スピードがちょっと出やすい」
事故現場付近になると少し見通しが良くなりますが…
ベテラン運転手)「ここで今カーブが終わってちょっと直線になって、視界がひらけるのでブレーキの抑制を緩める可能性もなくはないんですけど、そうすると一気にまたスピードが上がってしまいます」
走行中のバスが使用するブレーキは、止まるためのフットブレーキに加え、減速するためのエンジンブレーキと排気ブレーキのあわせて3つです。
ベテラン運転手)「左側、普通の国産車のワイパースイッチにあたる所が排気ブレーキのレバーになっています。できるだけ低いギア段を利用しつつ、エンジンブレーキを利かせて、排気ブレーキでスピードの抑制をはかって、フットブレーキで調整。極力フットブレーキは多用せず下っていくような走り方しています」
きつい勾配による加速を防ぐために、エンジンブレーキと排気ブレーキを十分きかせることが重要だといいます。
ベテラン運転手)「この重量のバスですと、フットブレーキを多用するとすぐブレーキの過熱が始まってしまいますので、ブレーキのききが甘くなってしまう」
捜査関係者によると、「ブレーキが利かなかった」と供述しているという野口容疑者。警察はフットブレーキの使い過ぎで、ブレーキの利きが悪くなる「フェード現象」が起こった可能性もあるとみて調べています。
▼「フェード現象」体験したドライバーに聞く
フェード現象とは一体、どのようなことが起きるのでしょうか。
フェード現象の体験者)「本当に氷の上を滑ってるかのような、ちょっと滑って遅れて止まるというような。本当に結構力いっぱい足で踏んで、やっと止まったっていうような感覚。傾斜が勾配が結構急だったのでどうしてもやっぱりフットブレーキを使わざるを得ない状況だったんです」
後続車を通過させるため駐車帯へ入ります。駐車帯の真ん中あたりで止まるようなつもりでブレーキを踏んだといいますが、全く止まらず、駐車帯のギリギリまで前に進んでしまったといいます。そして直後にはタイヤのゴムのような“異臭”がしたといいます。ブレーキをかけ続けると、タイヤを止めるブレーキパッドが熱されガスの膜が発生。摩擦力が低下し、制御しにくくなるといいます。
▼原因は「速度超過」か 専門家指摘
一方、事故現場にはタイヤ痕が残っていて、警察はブレーキがかかって付いた可能性もあるとみて、来週にもバスの検証を行う方針です。
事故解析技術研究所 相見忍代表)「フェード現象が起きるとタイヤがロックもしないわけですからタイヤのスリップ痕が出ないんです」
長年、交通事故鑑定を行ってきた専門家は「速度超過」が原因ではないかと指摘します。事故現場の法定速度は時速30キロですが…
相見忍代表)「のり面に乗り上げただけじゃなくて乗りあがってまた横転している。速度がないと横転までしないんです。私は事故原因はオーバースピード一本だと思う。はっきりは言えないが、時速50~60キロのスピードがあった可能性は捨てきれないと思う。シートベルトをしてればいわゆる車外放出がまずなくなります。それから左の方が右へ落ちるということもないわけです。バスのシートベルトって締めにくいですよね。もう少しバスも簡単にシートベルトを締められるような対策を取っていただければ、だいぶ事故は減るだろうと思います」
サタデーステーション 10月15日OA
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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