イラン最高指導者「米国の画策」…22歳女性の死きっかけにデモ拡大 背景は?記者解説(2022年10月4日)
イランで、“ヒジャブ”と呼ばれるスカーフのかぶり方をめぐり、マフサ・アミニさん(22)が警察に拘束されたあと、亡くなりました。彼女の死をきっかけに、国が揺れています。
イランでは絶対とされる「イスラムの教え」が守られているかをパトロールする組織「風紀警察」がいます。先月13日、マフサ・アミニさんは、ヒジャブで、きちんと髪を隠していなかったとして、風紀警察に逮捕されました。
もともと、女性がヒジャブをめぐって逮捕されるのは、よくあることでした。1年前に発足したライシ政権で取り締まりは、さらに強化されました。今回、違ったのは、彼女が逮捕から3日後に急死したこと。人々は「警察による暴行」を疑いました。
一方、警察は、監視カメラの映像を公開。突然、倒れる女性の姿を見せ、死因は「心臓発作」と主張しました。しかし、経済制裁による生活苦への不満も重なり、特に若者の間でデモが拡大。矛先は、最高指導者・ハメネイ師に向かいます。
全土で大きくなっていくデモに、政権は、厳しい取り締まりへと乗り出しました。イランの国営テレビは「死者41人」と発表していますが、人権団体の調べでは、すでに100人を超える人が亡くなっています。
デモが始まって約2週間。最高指導者のハメネイ師は、一方的な主張を展開しました。
イラン最高指導者・ハメネイ師:「若い女性が亡くなった。悲しい事件でした。私たちも動揺した。これはアメリカやイスラエル政権の画策です。彼らが雇ってる人たちが、加担している計画です」
名指しされたアメリカは、すでに風紀警察への制裁を発表しています。
アメリカ・バイデン大統領:「イランの政権は、国民の基本的な自由を否定し、威嚇、強制、暴力により、何世代にもわたって人々の願望を抑圧してきた。平和的なデモ参加者を抑圧するために、暴力行為に関与したイランの政府当局、風紀警察などに対し、アメリカは今回、その責任を追及し、さらなる代償を科す」
◆朝日新聞の飯島健太テヘラン支局長に聞きます。
(Q.現在の状況を教えてください)
デモは全国各地で起きていて、緊迫した状況が続いています。おとといも各地の大学で抗議集会がありました。さらに、インターネットの接続制限が9月21日から始まり、いまも続いています。記者や外国人の拘束も相次いで報告されていて、現場に近づくことができません。支局のあるテヘラン北部では、多くの治安部隊が出動して、街頭で警戒にあたっている場所もあります。
(Q.なぜ、ここまでデモが広がっているのでしょうか)
イランの現体制、その正統性を問う声まで出てきていて、これまでとは違う“異例のデモ”といえるのではないでしょうか。デモのきっかけは、ヒジャブ着用を強制することへの反発でしたが、背景には、アメリカなどの制裁により、長く続く苦境があるとみられています。イランの企業にすれば、ヨーロッパや日本を相手に取引したくても、できない。また、政府は、中国やロシアに急に近づく姿勢をみせています。しかし、国民からは、それを強く望む声は聞かれません。取材していますと「仕事がない」「物価が高くなった」「卵や肉が買えない」といった怒りの声を聞くことが多くなっています。そういった苦境に対して、効果的な改善策を示さない政府や体制への不満が聞かれます。そういった不満が、批判の声として、今回、一気に噴き出しているのではないかと思います。
(Q.政府は、どう対処していく方針なのでしょうか)
体制側は、デモ隊の一部を暴動、暴徒と呼んで、徹底的に対抗していくと述べています。体制としては、デモの一部がヒジャブや聖典コーラン、モスクなどを燃やしたとして、非難の声を強めています。イスラムの教えを重んじる体制にとっては、これまでの価値観を揺るがしかねない。そんな危機的な状況が考えられるので、体制としては、これからも取り締まりを強化していくとみられます。 (C) CABLE NEWS NETWORK 2022
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