前澤友作氏も出資「羽ナシ風車で台風をエネルギーに」ベンチャーの挑戦【SDGs】(2022年9月21日)
各地で大きな被害をもたらす台風。しかし、正確な進路や、いつ勢力を強めたり、弱めたりするのかを予測するのは困難を極めます。
それを解明しようとしているのが、沖合にポツンと漂う無人船『せいうちさん』です。甲板には、GPSや風速などを測るさまざまなセンサーを搭載。さらに、そのセンサーは海中にもあります。台風が海にどう影響を及ぼしているのかを調べています。
沖縄科学技術大学院大学・御手洗哲司准教授:「台風の中心付近で、台風の観測するだけでなく、海の観測もするとなると、どうしても有人ではできない。無人のプラットフォームを使うことが唯一の選択肢」
このデータをもとに、今後さらなる台風の進路予測の向上が期待されています。
一方で台風をエネルギーに変えようという動きもあります。
台風11号が石垣島に接近した今月3日、東京から駆けつけたのは、ベンチャー企業『チャレナジー』の清水敦史社長。チャレナジーは、垂直軸型マグナス風力発電機を開発しています。
従来のプロペラ式風車は強風に弱く、台風で折れる事故も相次いでいます。しかし、この風力発電機は羽根がないため、暴風時でも折れることなく、発電し続けることができるといいます。
チャレナジー・清水敦史CEO:「羽のない風力発電機。私たちの風車は、プロペラの代わりに棒がついている。よく見ると、棒が回っているのが見える。“マグナス効果”というのを使っている」
“マグナス効果”とは、例えば、カーブボールを投げると、回転をかけて曲がるわけではなく、ボールが向かい風とぶつかることで、左右に空気の流れの差が生まれ、引っ張られることでボールが曲がります。これが“マグナス力”と呼ばれるものです。
この原理を今回の風力発電に当てはめ、モーターにマグナス力を加え、電気に変えようというのです。このマグナス力をコントロールすることで、台風時でも、通常とほぼ同じように発電できます。また、従来のプロペラ式では、風向きによって、風車の向きを変える必要がありましたが、今回の風力発電機は、軸が地面に対して垂直であるため、風向きという概念がありません。
チャレナジー・清水敦史CEO:「島だと風の強さとか向きが変わりやすい環境なので、垂直軸型風車の方が適している」
清水社長は、大きな台風が接近するたび、東京から石垣島に来ています。風速が大きく変動する台風に対し、どうすれば効率良く発電量を得られるか、実際の台風で実験しデータを収集。台風が過ぎ去るまで、夜通しモニタリングを続けていました。
母子家庭だった清水社長。家計は苦しく、インフラに頼らず、自給自足の日々だったといいます。
チャレナジー・清水敦史CEO:「外食もしたことないし、旅行に行った記憶もほぼない」
必死に勉強し東京大学を卒業。その後、大手メーカーに就職し、順風満帆の日々を過ごしていましたが、転機が訪れます。2011年の東日本大震災です。
チャレナジー・清水敦史CEO:「当時32歳。次の世代を考える年でもあったので、原発がなくても電気を供給するような仕組みを我々が作らないといけないと思った」
福島原発の事故をきっかけに、再生エネルギーに着手。なかでも注目したのは風力発電でした。
チャレナジー・清水敦史CEO:「風力は作れると思った。実際に本屋さんに行くと、“手作り風車の作り方”とか売ってるくらいですから。日本の環境にあった風力発電があったらいいのになと思ったのが最初のきっかけ」
風力発電が発明されたのはライト兄弟が空を飛んだよりも10年ほど前といわれています。飛行機がプロペラ機からジェット機に変わった一方で、風力発電は、姿を変えてないことに疑問を持ったのです。
チャレナジー・清水敦史CEO:「当時、めちゃくちゃ流行っていた扇風機があって。羽のない扇風機、ダイソン。羽のない風力発電機は作れないのかなと」
清水さんは勤めていたメーカーを退社。風力発電ベンチャーを起業しました。当初は、ホームセンターで買った資材を使って、1人実験を繰り返すなど、試行錯誤の日々を経て、ようやく発電に成功。着想から7年経って、ようやく日本で初めてマグナス式風力発電の実証機の完成に漕ぎ着けました。
去年、フィリピンに2号機を設置。今や、名だたる企業が出資するベンチャー企業に成長しました。出資者の前澤友作さんは、こう話します。
前澤友作さん:「宇宙から地球をもっと大事にしないとと思った。その後、帰ってきてからも地球を大切にするためには何をしたらいいんだということで。台風というデメリット、日本の皆さまが悩まされていることだと思う。その悩みをプラスに変える発電機を、彼は開発しているところに着目して、出資させていただきました」
現在、日本の発電量のうち、風力が占める割合は1%にも届きません。この実証機が実用化されれば、強い風が吹く日本のような島国などでも、風力発電ができる可能性が広がるというのです。
さらに、先月、新たな取り組みを始めました。東京都内の公園に小型風力発電機を設置。発電機の下には、携帯電話などが充電できるUSBが付いています。今後、災害用の補助電源として期待されています。
再生エネルギーにチャレンジし続ける清水社長。思い描く未来とは。
チャレナジー・清水敦史CEO:「常にエネルギーというのは、人類にとって必要不可欠なものだし、誰かが挑戦して変えてきたという歴史がある。原発事故が起きて、仕方ないという理由で、原子力発電を続けるかというと、次の世代のために私たちが変えないといけないことだと思う。豊富にはあるけども、今、活用されてない風のエネルギーで、我々の風車で電気を作ると。世界中の島が、エネルギーの宝島になるというのを最終目標にしている」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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