バイデン氏「トランプ派は民主主義破壊」融和から分断へ?中間選挙で民主党猛追の背景(2022年9月8日)

バイデン氏「トランプ派は民主主義破壊」融和から分断へ?中間選挙で民主党猛追の背景(2022年9月8日)

バイデン氏「トランプ派は民主主義破壊」融和から分断へ?中間選挙で民主党猛追の背景(2022年9月8日)

アメリカの行く末を決める中間選挙まで、あと2カ月です。トランプ前大統領が大きな影響力を持つ共和党を、民主党が猛追する動きが出ています。

バイデン大統領は、トランプ氏とその熱烈な支持者について「民主主義を破壊しようとしている」と批判。分断をあおるような発言を繰り返す背景には何が。

バイデン大統領:「トランプとトランプ派は“後退”を選んだ。怒りと暴力、憎悪と分断に満ちている。国民の意思ではなく、政治的暴力を受け入れ、民主主義を信じていない」

大統領選で勝利した時に訴えていたのは、分断の解消でした。

バイデン大統領(2020年):「分断ではなく、団結を目指す大統領になると誓う。“赤い州”“青い州”ではなく“合衆国”としてみる大統領になる」

就任後、直接的な批判は抑えていましたが、一気に解き放ちました。

バイデン大統領:「トランプと共和党のトランプ派は、我が国の根幹を脅かす過激思想を表している。民主主義を破壊しようとしている。トランプ派はアメリカに流血と闇と絶望を見いだし、恐怖と嘘をまき散らしている」

カメラのない所ではこんな発言も…。

バイデン大統領:「トランプだけではない。思想自体が半ばファシズムのようだ」

名指しされたトランプ氏。当然、黙ってはいません。

トランプ前大統領:「バイデンは歴代大統領の誰よりも悪意と憎しみに満ち、対立をあおる演説をした。11月、我々は狂気と非道、死の支配に立ち向かい、この国を取り戻す」

支持者も、自分たちへの攻撃と捉えています。

トランプ支持者:「バイデン演説は本当にひどく恐ろしかった。私たちを分断するもので、団結させるものではありません」

トランプ支持者:「バイデンが行った演説は、彼に投票しなかった全アメリカ人への宣戦布告です。私たちを救ってくれるのはトランプだけです」

ただ、バイデン大統領としては、トランプ支持者の反発は織り込み済み。狙うのは、無党派層や共和党穏健派の取り込みです。

アフガニスタンからの撤退や記録的なインフレで、下降の一途をたどっていた支持率は、ここに来て上昇。4割を回復しています。

議会選挙での投票先を聞くと、3月の調査から形勢が逆転し、民主党が共和党を上回っている状況です。

背景には、いくつか要因があります。1つは、連邦最高裁が中絶の権利を否定する判断を下したこと。トランプ氏が保守派の判事を送り込むことで成立したこの判断には、無党派層や女性、若者の間で批判が高まっています。

さらに、トランプ氏の邸宅『マー・ア・ラゴ』に対するFBIの家宅捜索。ホワイトハウスから最高機密を含む機密文書を持ち出したとされる前代未聞の事件です。

トランプの共和党が再び権力を握ったらいったいどうなってしまうのか。有権者にそんな恐怖を呼び起こすことで、民主党への支持を取り付けようというのが、バイデン大統領の狙いです。

トランプ派と共和党穏健派の分断を図ることも忘れていません。

バイデン大統領:「すべての共和党員が極端な思想を受け入れているトランプ派ではない。団結と希望と明るい未来、より良いアメリカを築いていこう」

***

◆ワシントン支局・梶川幸司支局長

(Q.バイデン大統領の激しい発言の背景は何ですか?)

NBCニュースが8月末に行った世論調査で、アメリカが直面している最も重要な問題を尋ねたところ「民主主義への脅威(21%)」と答えた人が、「生活コスト(16%)」や「雇用と経済(14%)」と答えた人を上回りました。

アメリカは今、記録的なインフレのなかにありますが、経済ではなく、民主主義への脅威がトップになるということは、中絶をめぐる判決、トランプ氏をめぐる捜査など、アメリカで春から夏にかけて起きた様々な出来事が、無党派層や女性、若い世代の意識に影響を与えたからだと考えられます。

国民の団結を訴えて当選したはずのバイデン大統領が、トランプ氏とその支持勢力を民主主義の危機の元凶だと名指しして批判する背景には、こうしたアメリカ社会の意識の変化を踏まえて、選挙の争点をインフレや物価高からそらして、民主主義の危機へと切り替えることで、無党派層や共和党の穏健派の支持を取り込みたいという考えがあります。

(Q.民主党はこのまま巻き返していくとみたほうがいいですか?)

そうとも言い切れません。今、アメリカは、記録的なインフレの只中にあります。私の周りでも外食を控えたり、食費を切り詰めようとするムードがあります。ガソリンは少し安くなりましたが、食料品の高騰は続いています。

先週末、トランプ氏が集会を開催したペンシルベニア州の街で住民の話を聞きましたが、「バイデンでもトランプでもない、上滑りのスローガンではなく、暮らしを何とかしてほしい。この街を何とかしてほしい」という切実な声を聞くことができました。

無党派層を中心に、社会の底流には政治不信感が根強く残っているのだと思います。インフレは今なお続いていて、民主主義の危機を訴えるバイデン大統領の戦略は、激戦州の無党派の人々の心を本当につかむことができるのか。私は簡単なことではないと思います。

(Q.対する共和党は、これからもトランプ氏が前面に立つ選挙になりますか?)

共和党としては、この夏にかけて起きた様々な出来事によって、支持率の流れが変わったことに困惑を感じていると思います。今もトランプ氏の捜査をめぐる報道は連日のように続いていて、否が応にもトランプ氏に注目が集まっています。共和党としては、トランプ氏に関わる出来事から、物価高やインフレに国民の関心が向いてほしいというのが本音だと思います。 (C) CABLE NEWS NETWORK 2022
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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