【首都直下地震】新たなリスク“タワマン” 防災のカギは「長屋文化」(2022年9月1日)
9月1日は、防災の日です。首都直下地震の被害想定では年々増えている「タワーマンション」が新たなリスクになると指摘されています。陸の孤島にもなりえる高層マンション。防災のカギは「長屋文化」にありました。
1923年9月1日。関東地方を襲ったマグニチュード7.9の巨大地震。激しい揺れとその後、街を包んだ炎は10万5000人の命を奪い東京を焼け野原にしました。
それから99年。東京の街は様変わりしています。
今後30年以内に70%の確率で起こると予測されている首都直下地震。今年5月、東京都はその被害想定を10年ぶりに更新しました。今回の想定では、高層ビルやマンションが増えたことで停止するエレベーターの台数は前回から大幅に増加。さらに、エレベーターの停止が長期化することで高層階の孤立が懸念されています。
東京都立大学・中林一樹名誉教授:「タワーマンションが直下地震に遭った状況がまったく経験がないなかで、どのような立ち振る舞いをするかによって大問題を引き起こしてしまうのが実は東京の最大の新しいリスクなんです」
43階に居住:「やっぱりエレベーターがすぐに止まってしまうのでその時に避難経路…。というのは感じる」
27階に居住:「不安はありますよね。子どももいますので、エレベーターが使えなくなると担いで抱っこして動かなきゃいけない」
高層階ならではの数々の課題が浮かび上がっています。マンションで暮らす人は首都直下地震にどう備えればいいのでしょうか。そのヒントが人形町にそび立つタワーマンションにありました。
「リガーレ日本橋人形町」団地管理組合・鈴木健一理事長:「元々こちらは人形町、本当の下町。私は長屋みたいなところに住んでいましたから、それが本当に“縦の長屋”になったというだけのマンションです」
下町の長屋といえばひとつ屋根の下、壁1枚を隔てて隣近所が支え合い、暮らしていた共同住宅です。
目指したのはそんな長屋文化の防災。そのために必要なのはヘリポートなどの防災設備だけではありません。徹底したのは、住民同士が助け合える体制作りでした。
「リガーレ日本橋人形町」団地管理組合・鈴木健一理事長:「拠点階をベースにして安否確認をして連絡をもらう」
39階建てマンションを5階ごとに分けて何かあった時、住民が連携を取れるように独自のマニュアルを作成。
発災直後はブロックごとの安否確認、そして、2日目以降にブロックの中で、情報、救護、安全、物資と細かく役割分担をして班長を決めていくことなど時系列を追って具体的な行動が示されています。
さらにエレベーターの停止を想定し、負傷者を運ぶ訓練などを通じて住民と住民が顔を合わせる機会を増やしていったのです。
「リガーレ日本橋人形町」団地管理組合・鈴木健一理事長:「コミュニティーも長屋的なイメージで醸成してきていますし、防災に役立っている部分、多々あると思います」
こうした取り組みは、住民の防災意識を高めていました。
26階に居住・金子美恵子さん:「いざとなれば皆さん気持ちは同じですから、お互い助け合うことはできると思います」
縦へと伸びた長屋のようなつながりはマンション内にとどまっていません。
「リガーレ日本橋人形町」団地管理組合・鈴木健一理事長:「小さな町会なんですけど、そこから災害時で何かあって助けてほしい人が助けられないということだけは避けたい」
そう言って見せてくれたのは助け合い名簿です。マンションの居住者だけではありません。町内会全体でサポートが必要な人の名簿を1年半かけて作り上げたのです。そして、地図に分かりやすく表記することで何かあった時に助けに行ける体制を整えています。
この場所で90年以上続く豆腐店です。店主は、大きな地震が起きた時、古い建物が倒壊する不安を抱えているといいます。
高柳豆腐店・高柳豊さん:「(救助活動は)無理よ。小さな街で一軒二軒で何かやろうっていうのは。“つながり”っていうのは持っていた方がいい」「(Q.マンションに避難することも考えている?)可能であればね。鈴木理事長が協力的にやってくれているから助かる」
下町のタワーマンションはもはや地域の防災拠点です。
人形町出身の鈴木理事長が“縦の長屋”と地元をつなぐ架け橋となっています。
「リガーレ日本橋人形町」団地管理組合・鈴木健一理事長:「生まれ育ったところですから安全な街にしたいという気持ち。防災というのは基本的に与えられてやるものではなく、自分からやって『共助』の中で助け合えればいい」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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