「卒業旅行」の声も…ペロシ議長訪台で“米中の本音”を中継解説(2022年8月3日)

「卒業旅行」の声も…ペロシ議長訪台で“米中の本音”を中継解説(2022年8月3日)

「卒業旅行」の声も…ペロシ議長訪台で“米中の本音”を中継解説(2022年8月3日)

3日に台湾を訪問したアメリカのナンシー・ペロシ下院議長(82)は、蔡英文総統と会談し、連携を強化していく姿勢を示しました。

ペロシ下院議長はアメリカ初の女性下院議長で、1991年に天安門広場を訪問し、この時も非常に中国を刺激しました。

香港やチベット、新疆ウイグル自治区など中国の人権問題を厳しく追及してきた対中強硬派として知られる、アメリカ政界の重鎮です。

ペロシ下院議長の台湾訪問は、アメリカ・中国の緊張関係にどのように影を落としていくのか。

ワシントンの布施哲支局長、北京から千々岩森生中国総局長と中継を結びます。

◆布施哲ワシントン支局長

(Q.ペロシ議長はなぜこのタイミングで台湾を訪問したのでしょうか?)

ペロシ議長を突き動かしているのは「個人的なレガシー作り」です。

11月の中間選挙で民主党の敗北は確実だと言われていて、下院議長の座を退く前に、自らの政治キャリアの総決算として“卒業旅行”に出た形です。

野党・共和党からも、今回の訪問を支持する声が上がっています。

中国が「台湾に行くな」と圧力をかければかけるほど、連邦議員たちの間では「連邦議員がいつどこに行くのか、中国に指示されるいわれはない」とヒートアップして結束している状況です。

ホワイトハウスとしては「いい迷惑だ」というのが本音です。

バイデン大統領は一時「決していい考えではないと思いますよ」と諭すようなことを言っていましたが、結局これを引っ込めました。

立法権を持っている議会に対する配慮も働いて、今回の訪問を食い止めることができなかったというのが実情です。

◆千々岩森生中国総局長

(Q.中国国内の反応はどうですか?)

2日のペロシ下院議長が台湾に到着する頃から、中国最大のSNS『ウェイボー』が閲覧できなくなりました。

私もスマートフォンを見ていたら、画面が真っ白になったのでよく覚えています。

「アクセスが集中したため」という報道もありますが、ネット民からは「世論への規制・統制ではないのか」という声が広がっています。

もしそうだとすると、中国政府が今、規制したい世論とは何なのか。

中国国内ではアメリカへの批判が渦巻いていますが、一方で「あれだけ威勢のいいことを言っていたのに、阻止できなかった」と失望・反発とも取れる声がじわっと広がっています。私の周りからも聞こえてきます。

これまで中国政府があおりにあおったナショナリズムや愛国心の反動というところもあります。

いずれにせよ、こうした世論が回り回って“弱腰批判”の形で政府に向くことは、習近平政権は是が非でも避けたいし、非常に神経を尖らせています。

習近平政権は、面子を潰されたとして強い態度を取っていますが、世論の方が先に行ってしまっているところもあります。

世論に引きずられつつ、さらにエスカレートさせる事情も生まれつつあるようです。

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今回のペロシ議長の訪問で、軍の緊張関係も高まっています。

中国側は、台湾を取り囲むように6カ所の海域と空域で、4日~7日にかけて、重要軍事演習を実施するとしています。

アメリカ側も、フィリピン海に原子力空母『ロナルド・レーガン』含む艦艇4隻を配備したと、ロイター通信が伝えています。

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◆千々岩森生中国総局長

(Q.中国の本気度、緊張感を現地でどう感じていますか?)

習近平主席も、アメリカとの軍事的な全面対決は、全く頭にないと思います。

中国のこれまでのセオリーを見ていくと「弱い関節を狙う」ことがポイントです。

今回の“弱い関節”は台湾です。

台湾を封じ込めるかのように、4日から始まる軍事演習。北は台北を、南は高雄を塞ぐように軍事的なプレッシャーをかけようとしています。

中国の本土で3日夜、台湾出身の男性(32)が、台湾の独立を図ったとして拘束されたという情報が入ってきました。

軍事・身柄の拘束に加え、経済的な報復措置とみられるような、食品を含めた4品目の輸出入禁止措置も始まっています。

一方で、台湾の蔡英文政権は世論も支持しているので、緊張関係がさらにエスカレートしていくことが必至だと思います。

◆布施哲ワシントン支局長

(Q.中国の軍事演習が続くとなれば、アメリカ軍の配備も続き、緊張関係は高まっていきますか?)

アメリカ軍はすでに緊張緩和を図る動きを見せています。

空母『ロナルド・レーガン』を台湾近海から離脱させ始めています。

沖縄・嘉手納から盛んに飛んでいる偵察機・情報収集機は、今後も中国の軍事演習の情報収集を続けることになりますが、全体としては、アメリカ軍としても偶発的な衝突のリスクは避けたいというのが本音です。

徐々に活動量を下げながら、通常モードに戻していくことになると思います。

ただ、台湾をめぐる米中の緊張は今後も続く可能性が非常に高いです。

例えば、11月の中間選挙で、台湾支持派が多い共和党が多数派を握ることになれば、秋以降に共和党議員が大挙して台湾を訪れるというシナリオも考えられます。

今後も台湾危機のリスクを痛感させる緊張した展開が続く可能性が非常に高いと言えると思います。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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