”強権化”する世界 民主主義は退潮しているか【サンデーモーニング】|TBS NEWS DIG

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”強権化”する世界 民主主義は退潮しているか【サンデーモーニング】|TBS NEWS DIG

自由や人権、民主主義など、国際社会が大切にしてきた価値観をないがしろにするような動きがあちこちで見られます。一体何が起きているのでしょう。

■トランプ氏を求める風潮

7月26日、首都ワシントンで保守派のイベントに登場したトランプ前大統領。

トランプ前大統領
「私は最初の大統領選で勝利し、2回目は膨大な票を得て、より良い結果が出た。もう一度やらなきゃいけない!国を正さないといけない!」

2024年の大統領選に向け、出馬に意欲をにじませたトランプ氏を、多くの聴衆が歓声をもって迎えたのです。

最新の世論調査でも、バイデン大統領とトランプ氏が再び対決した場合、トランプ氏優勢といった結果も出ています。

トランプ支持派男性
「我々は今、様々な問題に直面している。間違っていることが沢山ある。トランプ氏はアメリカが自由になること、強くなることを望んでいるんだ」

こうしたトランプ氏のような強権的な政治家を国民が支持する国は、アメリカだけではありません。

■世界で広がる強権

ウクライナ侵攻が長期化する中、ロシアでは、強権的なプーチン大統領への国民の支持は依然として高いように見えます。

そして今、「強権的」な政治が横行する状況は、世界的な広がりを見せているのです。

■民主派の死刑執行

2021年、クーデターによって軍が実権を握ったミャンマー。

2022年7月25日、国営メディアは、民主化指導者アウン・サン・スー・チー氏の側近だった民主派の元議員ら4人の死刑を執行したと報じました。

4人はいずれも、2021年3月に起きたテロ事件の首謀者とされ、死刑判決を受けていましたが、国連や欧米などが刑の執行を思いとどまるよう要請していました。

国際社会の意向を無視し、死刑執行に踏み切った軍事政権。民主派が軍に対抗して設立した「国民統一政府」の幹部は・・・

国民統一政府 アウン・ミョー・ミン人権担当相
「これを法に基づいた『死刑』とは呼びたくない。これは『刑務所での違法な殺人』であると強く非難する」

一度は民主化しながら、国民が望まない形で強権政治に戻ってしまったミャンマー。

片や、国民が強権的なリーダーを支持したとみられるケースも・・・。

■強いリーダーを国民が求める

2010年末からアラブ諸国に広がった民主化運動「アラブの春」で独裁政権が崩壊し、民主化の成功例と讃えられたチュニジア。

しかし、その後の経済の停滞から、反政府デモが激化。すると2021年、大統領は行政府の解体を発表。さらに7月25日、大統領の権限を大幅に強化する改憲案の国民投票を行い、賛成が9割を超えたのです。
  
世界各地に広がる、こうした「強権化」の流れを専門家は・・・

五野井郁夫・高千穂大学教授(民主主義論)
「昨今のコロナ禍、パンデミックというものの中で経済停滞が著しい状況になっている。何か議論をして長期的な展望を示そうという民主主義よりは、すぐにでも明日の食べ物であったりとか、そういったものを確保してくれるような、強いリーダーや強権的な政府を求める姿勢がある」

そうした状況は、長期化するウクライナでの戦争にも影響を及ぼしているのです。

■ロシアとアフリカ諸国

7月24日からアフリカ4か国を歴訪したロシアのラブロフ外相。ウクライナ問題で西側が求める制裁に抵抗している、とアフリカ諸国を称賛します。

ロシア ラブロフ外相
「ウクライナの状況は、食糧市場に悪影響を与えたが、ロシアのせいではなく、西側の明らかに不適切な対応のせいだ」(7月27日・エチオピア)

実際、アフリカ諸国の中には、国連でのロシアへの非難決議を棄権するなど、立場を明確にするのを避ける国が多くあります。背景には多くの国が、食糧などでロシアに依存していることがあります。

こうした一部のアフリカ諸国とロシアのような、強権国家同士が結びつきを強める状況が今、国際社会で起きているのです。

■強権 独裁が広がる世界

実は、現在の世界では、むしろ「民主主義」は“退潮”しているとさえ見られるデータがあります。

スウェーデンの研究機関が発表したデータによると、2011年には、世界で独裁国家に住む人口の割合が49%だったのに対し、2021年には70%にまで増えているというのです。

世界に広がりを見せる強権国家。片や、少数派になりつつある民主主義陣営。こうした状況は、今後ますます加速する可能性があると、専門家は警鐘を鳴らします。

五野井郁夫・高千穂大学教授(民主主義論)
「欧米の民主主義諸国が経済支援をする時は、民主主義を一つの指標にして援助の対象にする。しかしながら、中国やロシアという国々は、別に気にしない。そもそも中国やロシア自体が、人権というものが非常に弱い訳ですから。援助条件に非常に苦しめられたアジアやアフリカの国々からすれば、渡りに船。民主主義というのは、全く慣れていない人たちにとってただただ煩雑な過程だとしか思わない。それを定着させることがすごく難しい」

世界を覆いつつある“強権化”の流れ。私たちはそれをどう捉えたらいいのでしょうか。

(「サンデーモーニング」2022年7月31日放送より)

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